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星の名前は誰が決めた?

こと座のα星は【ベガ】です。
これ、誰が決めたのでしょうか?

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星座の名前は『星座は88』のnoteでも書きましたが、国際天文学連合(IAU)によって名称(アルファベット表記)が決められています。
なので、こと座は"Lyra"、ペガスス座は"Pegasus"となります。
日本での呼び名(和名)も学術研究会議等で学術用語として決められているので、「ペガス座」ではなく「ペガス座」です。

では、星の名前はどうでしょうか?

実は2015年(星座名に遅れることおよそ100年!)になってようやく星の固有名は決められました。
このときは19の星系において主星や惑星の名称が公募され決められました。
日本が提案してついた恒星と系外惑星は以下になります。
 ・Intercrus(インテルクルース、おおぐま座のやまねこ座41番星)
 ・Arkas(アルカス、やまねこ座41番星の系外惑星)
 ・Libertas(リベルタス 、わし座ξ星)
 ・Fortitudo(フォルティチュード、わし座ξ星の系外惑星)
 ・Musica(ムジカ、いるか座18番星)
 ・Arion(アリオン、いるか座18番星の系外惑星)
 ・Amateru(アマテル、おうし座ε星の系外惑星)

恒星と系外惑星

どうして星の名前を「正式に」決めてこなかったのでしょうか?

理由は「特に困らなかった」からだと思います。
と言うのも星座名は既に決まっていますので、ある星について話をしようとすると「こと座α星(ベガ)」とか「ペガスス座51番星」といえば誰も間違いません。
それより暗い星も「HIP20889」や「HD28305」と言えば、どの星を指しているのかわかるので特に困りませんでした(いずれも、おうし座ε星になります)

ですが、困ったことがおきました。
「星の命名権」を売るビジネスが横行してしまったのです。
IAUとしては「そんな名前は公式では認めていません!」と言わねばなりません。
何せ、彗星や小惑星、惑星や衛星の地名(クレータや平原、山など)は名前をつけて管理しているのですから、星の名前について勝手に名前をつけるのを放置できません。

2016年には恒星の固有名に関するワーキンググループ (WGSN) が組織され、2020年12月31日現在449個の恒星の固有名が決められています。
http://www.pas.rochester.edu/~emamajek/WGSN/

命名募集については2019年に118の国と地域に命名権が与えられる第二弾が行われました。
日本には「HD145457」とその系外惑星の命名権が与えられ、
 ・Kamuy(カムイ)
 ・Chura(チュラ、HD145457の系外惑星)
と名前がつけられました。

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ここで決められているのは"Vega"と言うアルファベット表記のみで、「ベガ」と呼ぶのか「ヴェガ」と呼ぶのかは決められていません。
(この辺、日本学術会議や国立天文台なりで決めるべきと思うのですが…)

ちなみに調べる限り「M45」は「プレアデス星団(すばる)」のようにいわゆる星雲星団の名前は決められていないようです。
(と言うことは何と呼ぼうが自由ということですが、「みんなが呼んでいる名前で呼べば話が通じやすい」ということで、「プレアデス星団」や「すばる」と呼んでいるというところでしょうか)

これも「M31」や「NGC224」(いずれもアンドロメダ銀河)と言えば通じるからなのですが、こっちは命名ビジネスがないからですかね。

私自身としては基本的にこういったビジネスについてはIAUのサイト(Buying Star Names | IAU)にある

An expensive piece of paper and a temporary feeling of happiness, like if you take a cup of tea instead of the Doctor's recommended medicine. But at least you do not risk getting sick by paying for a star name, only losing money.

の回答に賛成で、「あなたが何にお金を払うのは自由です。あなたのお金ですから。ただ、それが認められるかは別問題です。」と言う立場です。

※日本の国立天文台にもほぼ同様の質問に対する回答があります。

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※やまねこ座41番星は「おおぐま座」にあります。これは星の符号が付けられた後に星座の境界が決められたためになります。
※HIP:ヒッパルコス星表。ヒッパルコス全天星図とも呼ばれる。位置天文衛星ヒッパルコス(Hipparcos)による観測結果を元に編集され118,218の星が収録されている。
※HD:ヘンリー・ドレイパーカタログ。補完された分を含めると35万9千あまりの星が収録されたカタログ。1918年から24年にかけてハーバード大学天文台から刊行された。
※M:メシエカタログ。『Mってなんだ』のnote参照
※NGC:ニュージェネラルカタログ。7,840個の星雲、星団や銀河などの天体が載っている天体カタログ。

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