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【ドイツ、ときどき隣国】英国人が「イギリスはおいしい」を読んだら

[初出:2009年3月]

「イギリスはおいしい」というエッセイ集がある。林望のデビュー作で、ベストセラーにもなった。本国の人に読ませたらどう思うのだろうと、イギリス人の友人にその翻訳本をプレゼントした。

個人的には、この本を読んで「イギリスはやはりまずい」という思いを深めた。軽妙な語り口で皮肉りながらも、著者がイギリス文化に抱く大きな愛情ゆえに、おいしくなるのだ。

果たしてイギリス人はこのラブコールをどう受け止めるのか。興味津々で友人に読後感を聞いた。すると、日本の食文化がよく分かったという意外な答え。日本人にとって新鮮な素材がいかに大切であるか、和食には手間がかかることが伝わってくるという。人は他者を語りつつ、はからずも己を語ってしまう。その意味で「日本はおいしい」とも読み替えられるこの本のタイトルは、二重に逆説的だ。

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