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【ドイツあれこれ】「夏のメルヒェン」として語り継がれる大会

[初出:2006年7月]

W杯の熱い闘いの日々が終わった。ドイツが準決勝で敗れ、意気消沈する人々を横目に、内心ほっとしていた。

街には国旗を飾った自動車が溢れ、ドイツが勝った夜は若者たちがクラクションを鳴らして凱旋パレードに繰り出す。この愛国ムードも、メディアでは好意的な取り上げ方が一般的だ。いわく、ドイツ人はナチ時代の呪縛をのがれ、明るく国旗を掲げるだけの健全な自負を取り戻したのだと。

果たして本当にそうだろうか。私が懐疑的なのは1990年W杯の思い出があるからだ。ドイツが優勝したとたんに幼稚園で子供がいじめられると、中国人の友人が嘆いていた。大人の優越感を映し出すようで、恐ろしかった。

あれから16年。W杯3位決定戦はポルトガル選手と肩を叩き合う和やかなシーンが印象的だった。私にとって優勝よりずっと素敵な勝ち方だった。

#エッセイ #ドイツ #翻訳者 #異文化体験 #サッカー #30秒で読める  

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