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あ、特になんもせんでいいのね

「やっぱりやって良かったな…」素直にそう思うことができた。

今日は久しぶりに「もうひとつの学校KOCCHI」の活動を再開した。

この日は利府町で民宿と観光漁業を営む櫻井さんご家族の協力を得て、松島湾でワカメ狩り体験をさせてもらった。

KOCCHIの活動は県内の小・中学生にとって、ひとつでも多くワクワクする選択肢を、という想いではじめた活動で、昨年の春から行っている。

活動開始当初は県民の森の協力を得て居場所づくりからやってみた。
あまり手応えがなかった。

多くの方の協力を得ながら様々な企画を出してみた。
とにかく試行錯誤している。今も。

毎回参加者の方からは良い感想を頂ける一方で、自分の中ではその価値や方法に対して懐疑的になり、活動をやめようと思うこともあった。

それでも自分の中に湧いてくるアイデアや想いが絶えることはなく、一度着想を得ると実行したくなってしまう自分を抑えることもできなかった。

そんなこんなで葛藤を経ての久々KOCCHI。
人数は10名くらい。

(もう少し来てくれたら嬉しかったな…)、という気持ちも正直あったが、実際に動いてみると身軽でちょうどいい規模感だった。

今日の会はいつもと違うスタートだった。

まず、冒頭のあいさつや自己紹介は誰もしなかった。
スタッフも特に挨拶はしなかった。

お互いが誰かなんてことは、子どもにとって、その時点ではどうでもいいことだったんだなと後で気付いた。

名前は知りたくなったら勝手に聞けばいいんだと思ったし、実際に名前は知らなくても良い関係は生まれるんだということが一日を通して分かった。

今日はみんなで淡々と船に乗り、黙々とワカメを刈り、なぜかバスケをし、ワカメをしゃぶしゃぶし、食後にそれぞれの時間を過ごした。

特に仕切り役や進行役もいなかったし、全体が淡々と動いた感じだった。

でもその中に小さな物語がたくさんあった。
そのことに気付いてはいたが、気付かないふりをしてずっと観察を楽しんでいた。

そう、私たち大人が余計な仕掛けやお膳立てをしなくても、子どもたちは物語の中で小さな挑戦をたくさんしていた。

KOCCHIは不定期開催で会場もほぼ毎回異なる。

その結果として、毎回参加者は違うメンバーになり、毎回「この人は誰?」という思考と不安が頭の中にある。

子どもたちにとっては、それだけで十分大きな挑戦だ。

知らない人と知らない船に乗り、普段は握らない包丁を握ってモンスター級にデカいワカメを切り、美味いか分からないメシを食ってみる。

この非日常は子どもたちにとって十分な冒険だ。

放っておくと、あるタイミングで勝手に子どもたちのやりとりがはじまる。
時には自然に、時にはぎこちなく。

「何年生?」
「学校行ってる?」
「なんか習ってる?」
「名前なんていうの?」

少しだけ緊張しながら会話しているのが感じ取れる。
これも立派な挑戦だ。

何も話さずニコニコしながらひとり座っている子もいれば、地面に寝っ転がりはじめる子、なぜかずっと走っている子もいる。

それに対して「あれをしたら?これをしたら?」と何か言う大人もいない。

子どもたちは日常の何かから解放され、ささやかな自由を謳歌しているようだった。

「なんでずっと走ってるの?」

ずっと走っている子に私は訊いてみた。

「鳥のように~!」

その子はそれだけ答えてまた走り続けた。

KOCCHIでは「体験」「挑戦」「対話」「ゆとり」が人の成長には大切だと考え、いかにしてその機会を生み出すかということに挑戦してきた。

でも、今日のKOCCHIには意図せずそれがすべて生まれていたような気がする。

(あ、特になんもせんで良かったのねw)という気付きを体感的に得ることができた。

帰り際にひとりの子が私に声をかけてきた。

「次のKOCCHIはいつなの?」

とても嬉しい言葉だった。

その子の「楽しみ」を創る「楽しみ」が私の中に生まれた。

ありがとね。

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