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自由律かるたのさしすせそ


毎度お馴染み、かるたまとめの時間がやってまいりました。

今回はさ行。
白・黒・食べ物・ワインをテーマに、「さ」から「そ」で始まる句をご用意しました。どうぞお付き合いください。

▼これまでの自由律かるたはこちらからご覧いただけます


ホッと白い句

▶︎さ
鎖骨のくぼみが今日のお湯を掬った

▶︎し
洒落た家の出す瓶ゴミまで洒落ている

▶︎す
砂時計の静かなガラスにそっと触れる

▶︎せ
聖堂の祈りキャンドルに灯る

▶︎そ
そこで立ち止まった人だけが知る空に虹


一番反応が多かったのは「そ」の句です。
「空の虹」にするか「空に虹」にするか最後まで悩みましたが、「空に虹」を選びました。「す」の句は、砂時計の上下を何度もひっくり返して砂がさらさらと落ちるのをずっと眺めていた子供時代を思い出してつくりました。


ぴりり黒い句


▶︎さ
支える為だけに生まれてゆくエッグスタンド

▶︎し
シナリオ通りにゆかず癇癪起こす他人の子だ

▶︎す
スパゲティをフォークに巻きつけたまま話し始めてきた

▶︎せ
セール品の方ばかり見ている

▶︎そ 
粗悪品をかき集めたようなガチャガチャ


「さ」の句に一番反応が集まりました。私は卵をあまり食べないので、エッグスタンドも家にはありませんが、小さい頃は無性に憧れていました。煌びやかな装飾が施されたエッグスタンドを使って、優雅に朝食をとるのが夢でした。今ではヨーグルトだけで済ませてしまう朝が多いです。


食べ物句


▶︎さ
サフランライスに混ざる真白い米の数粒

▶︎し
シナモンロールから湯気だ冬のフィンランドを憶う

▶︎す
スポンジケーキに挟まれた苺の赤

▶︎せ
セロリがやけに苦い今日だ

▶︎そ
そぼろ弁当に花型のにんじん添える


「せ」と「そ」に一番反応が集まりました。「す」の句はもう少し工夫が必要だったかなと思います。句意は変わってしまいますが、
「スポンジケーキに挟まれた苺は赤を知る」という句でも良いかも知れません。


ワイン句


▶︎さ
酸化していること知られぬまま開け放しの瓶



▶︎し
シャンパンではなくスパークリングワインだと訂正された



▶︎す
スーティラージュしたとて私は濁ったままだ



▶︎せ
セラードアが開く人々が陽気になる


▶︎そ
ソーヴィニョン・ブランの香りをピーマンに例えられたが褒め言葉だと信じる


「さ」の句に一番反応が集まりました。
もし何かの宴会やパーティーに出されたワインの瓶口が、ラップを巻きつけたコルクで塞がれているのを見かけたら、その会場には鍋奉行ならぬワイン奉行がいると思ってください。
「そ」の週では、他の方の句に「ソムリエ」の単語が入る句をちらほら見かけて個人的に気分が上がりました。


かるた自選句さしすせそ


▶︎さ
鎖骨のくぼみが今日のお湯を掬った

▶︎し
シナモンロールから湯気だ冬のフィンランドを憶う

▶︎す
砂時計の静かなガラスにそっと触れる

▶︎せ
セロリがやけに苦い今日だ

▶︎そ
そこで立ち止まった人だけが知る空に虹



今回もワイン句からは選出なし。やはり専門用語をあえて使う句は、解説とセットで初めて伝わるということもあり、自選句の候補になかなか入りません。

最後に

こちらの緊急企画にも参加しました。


作った句はこちら。


▶︎送辞
蒲公英の綿毛は君が進む道に沿って飛ぶ

▶︎送辞
君だけがうつる今日の写真は10年後それぞれ持ち寄って完成させるパズルのピース

送辞というテーマは意外と難しく、自由律の器から溢れがちになってしまいました。
しかしそういうところにもまた味があるように思います。

長々としたパズルピースの句ではありますが、左端に載せていただきました。ありがとうございます。


さて、送辞というテーマはなぜ難しく、自由律の器から溢れてしまうのだろう。


なるほど、非常にすっきり。他者に向ける言葉を、自己に向ける器に入れようとするから言葉が溢れてしまったのですね。気づきをありがとうございました。


先行きが見えないと、だんだんと暗くなりがちです。
そんなとき、悲しみの心を明るく灯してくれる言葉たちが多くの方に届き、その言葉たちが、前に進むための力となることを願いながら、これからも言葉と向き合っていこうと思うのです。


ここまでご覧くださりありがとうございました。
次回は、た行が完成した頃に。


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