みどりの窓口の減少問題について考える


「減るみどりの窓口に困惑の声」
「ネット予約普及でみどりの窓口激減に賛否」

これらはいずれも今月のテレビ番組イット!、そして今日のとれたてっ!にて扱われた、みどりの窓口減少問題についての表題だ。

現在、JR各社のみどりの窓口が減少していることは事実であり、みどりの窓口でしか買えないきっぷが多くある以上は必要な施設である。
JR各社は予約サービスを展開しているが、なぜインターネット予約サービスがあまり浸透しないのか?そして混雑しているのか?について、持論を述べたい。

なお、太字のところだけ読んでもおおまかな内容は伝わるようにした。この話が長いな、暇つぶし程度に見ようかな、と感じたら、太字の部分だけ読んでいただければと思う。

JRのインターネット予約サービスの不便さの大元の原因は簡単で、1987年に「分割」民営化をしてからJR各社の予約サービスが乱立したからである。
そして、みどりの窓口を減らすのであれば、JRシステム(鉄道情報システム株式会社)が先頭に立って、「全JR統一」の予約サービスアプリの展開、自動きっぷ券売機の機能改修をしなければならない。が私の持論だ。

※なお、分割民営化そのものを批判するわけではない。ストライキなどによって国民への礼を欠いた労働組合を解体するには「分割」民営化はやむなしだと考える意見については同意しているのであしからず。

1.分割民営化の弊害がネット予約の不便さに

JRは日本国有鉄道という日本の鉄道公社から設備、車両、線路等を引きついだ株式会社である。そして、北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州の旅客鉄道という独立した株式会社が、それぞれ引きついだエリアで鉄道を運営している。各社同じロゴを使用しているが、NTTとは違いJR各社独立した資本の鉄道会社のため、JR各社はグループ会社でもない。
そして、多くの国民はそれを認知していない。JRという大きな組織があり、その下に各エリアの社員がいるような認識ではないだろうか。

分割民営化したJR各社は、独自の予約サービスを展開する。東日本は「えきねっと」、東海は「スマートEX」、西日本は「e5489」、九州は「JR九州インターネット予約」を展開している。国から支援を受けるほど財力がない北海道は「えきねっと」、四国は「e5489」と提携している。

そして、これらJR各社の予約サービスは互換性がない

下に例をあげてみよう。長いので-----で区切るところは飛ばしていただいても構わない。

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例えば、お盆に、千葉の松戸駅→東京駅→(東海道新幹線利用)→新大阪駅→(特急くろしお利用)→和歌山駅まで、安く使いたいと思ったとき。

①東海道新幹線と特急くろしおの予約がまとめてできる、JR東日本の「えきねっと」で予約しようかと思うが…。
・JR東日本の新幹線、特急ではないため予約の割引が一切ない。
→えきねっとは使わずに安いサービスを使ったほうがいい。

②JR東海のスマートEXは東海道新幹線の割引が適用されるのか、これにしようと思うが…。
・新大阪から先の特急くろしおは予約できない。
→お盆のときの座席確保を考えると、新幹線を予約した後にもう一度別の予約サービスで特急くろしおを一から入力しなおすのはリスクがある。(座席を確保できなかった場合は自由席がないので乗ることができない。)

③じゃあ、特急くろしおが安くなって、まとめて予約できるe5489がベストかな?
・JR東日本が運営する松戸駅ではきっぷの受け取りができない。(金町からの23区内エリアでは受取のみできるが、松戸からの運賃は無駄になる。)また、東海道新幹線は割引にならない。

この中でのベストアンサーは③のe5489に見えるが、じゃあ高山に行くには?金沢にいくには?どのJRの予約サービスを使えばいいの?となってしまう。しかも、目的地駅の運営会社≠予約に最適解な会社でないためより難しい。
どのJR予約サービスが最適解かがケースによって変わってしまう現状はとてつもなく不便である。

また、割引だけで損をするならまだいい。

仮にも、①のえきねっとで申し込んだとする。そして、帰る当日に和歌山駅でいざ受け取ろうとすると大きな落とし穴がある。
JR西日本が運営する和歌山駅ではえきねっとでは受け取りができず、帰りに発券しようとしてた全部のきっぷが無駄になる。(特急発車前であればえきねっとにログインして払戻できるが、特急券の30%が手数料としてひかれてしまう)

申込内容があっているのに、分割民営化後の運営元の違いという余波で30%も手数料がかかってしまうのはとても痛い。

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JR各社の予約サービスに互換性がなく、JR東日本の「えきねっと」はこれができる、できない・JR西日本の「e5489」はこれができる、できないというのを、鉄道に詳しくない国民に強いるのは不便である。

しかし、JRとしては、分割民営化して受け継いだエリア以外のJRのことなんて知らない。という姿勢でいるように思えてならない。
チケットレスサービスの名称も各社で違うし、スマートEXのことをJR東日本社員に聞いても当社の予約サービスではないため答えられないという回答をもらったことがある。
(なお、どのJRかは言えないが、現職の友人に聞いたところ、自社が関係しない予約サービスについてはどのJRでもそもそも教育されていないとのことで、決して職員個人が悪いというわけではないことをお伝えしたい。現職の方も見ているでしょうから。)

便利に使うための予約サービスのはずなのに、分割民営化後のJR各社が独自に予約サービスを開発したせいで互換性がなく、きっぷの受け取りができないなどの問題がある不便性があるから、インターネット予約に便利さを感じることができない→みどりの窓口の混雑が減らないのではないだろうか。


2.自動きっぷ券売機の使いづらさ

インターネット予約が面倒でも、自動券売機があればみどりの窓口はいかずにすぐできるじゃんと思うであろう。

ただ、自動きっぷ券売機も万能なわけではない。

まず、1つ目が購入時の表示方法である。
自動きっぷ券売機の画面に立つと、初期画面の1段目に【指定席券】【自由席券】、2段目に【検索して購入※】【指定席券の変更】、3段目に【お得なきっぷの購入】…と表示がある。
※の箇所を、JR東では乗換案内から購入、JR東海ではのりかえ案内からきっぷを購入、JR西では時刻検索からきっぷ購入という名称を用いているが、ここでは“検索して購入”とまとめる。

電車を使う客が一番必要としているのは「目的地へ着くこと」であり、それに付随して途中の特急券などが必要になっているのである。となると、鉄道を使いなれてない人は最初に日にちと出発駅、最終到着駅を入力したくなる。
しかし、このときに一番重要なはずの【検索して購入】のボタンがどこのJR各社も目立たない位置にある。

初期画面から、最初の出発駅と日時、最終目的地駅と日時を入力できるよう誘導する=一番上の段に【検索して購入】を一番大きく表示させるor一番目立つ色や文字フォントで目立つようにしなければ、不慣れな客はどのボタンを押せばよいかわからないのではないだろうか。

今見ている読者が上司や部下へ報告するときも、結論(何がしたい、何をしてほしい)から述べて、詳細を伝えないだろうか。延々と詳細ばかり伝えてきて結論がわからないような話をする人にはイライラしてしまうのではないであろうか?

また、【検索して購入】を使わないと購入できない指定席券=初期画面で指定席券から入ると購入できない指定席券も存在する。

上記の点からしても、メインボタンとして【検索して購入】を一番目立つ場所にすべきかと思うが、そうなっていないのが万能でないと思うことの1つ目である。

料金券(指定席券や自由席券)をすでに購入しているような、少しは操作に慣れている客には2段目のボタンとして【指定席券のみ追加で購入する】【自由席券のみ追加で購入する】と配置したほうが良いかと思うがどうだろうか。

また、2つ目は各種割引証での購入に対応していないという点である。
職員の回収が必要なジパング倶楽部(65歳以上が加入できる会員制サービス)割引証、学生割引証、通学証明書、特定者(生活保護や片親世帯の受給世帯)割引証、また職員による確認が必要な障害者割引証など、各種割引証を用いたきっぷはみどりの窓口でしか発売ができず、自動きっぷ券売機で割引を適用した発売はできない。よく、最寄りのみどりの窓口で並ぶと、青緑色のジパング倶楽部の割引証をもった客がいるが、こういった客は窓口で並ぶor通話機能付き券売機で順番を待つしかない。

3つ目は、詳細なオーダーに対応できないという点である

1つ目の例は、変更・払戻である。

券売機ではきっぷの利用日を変更、区間の変更することが基本的にできない。

これは、特急券の値段が利用日や区間によって異なるためであるのはわかるが、みどりの窓口でできることが券売機でできないというのは、ユーザーの視点に立ってないと思う。

また、最寄りのJR東日本の自動きっぷ券売機では、ようやく払戻対応機能が導入されたが、この自動きっぷ券売機の払戻機能も制約があり万能ではない。
前に述べた、割引証によって割引されたきっぷや、JR東海の駅でクレジットカード購入→JR東日本の駅で1度乗車変更したきっぷは払戻できないようである。
(ちなみに、JR東海発行のきっぷをJR東日本の駅で乗車変更をすると、JR東日本で払戻できないのは、自動きっぷ券売機の問題よりも、クレジットカード購入情報をJR東日本側では持っていないからである。JR東日本側が、資本の違うJR東海の購入情報を探すことはできずクレジットカード会社経由して返金ができない。かといって現金で返すのはクレジットカードの現金化を防ぐためにはできない。これは最初に触れた分割民営化による弊害の問題の1つであることを述べておく。)

2つ目の例は、2人利用で異なる区間の申込である。

松戸から和歌山まで夫婦で行くとき、配偶者が東京駅までの定期券を持っていたとする。
すると、松戸→和歌山の乗車券と東京都区内→和歌山の乗車券が必要になるが、1人ずつの別区間申込に対応していないため、特急券のみ(新幹線、特急くろしおの座席券)の決済で1回目、乗車券松戸→和歌山の決済で2回目、東京都区内→和歌山の決済で3回目と、違う区間を使う同行者と特急等をと使おうとすると、券売機で3度も購入申し込みをしなければならない。その間、ずっと券売機を占領することになるが、後ろで待つ客からのプレッシャーもある。操作が遅いわけでもなく自動きっぷの機能でそうなっているわけだが、もし後ろで並ぶ客がQRコードを使ったえきねっと予約の受け取りだった場合、イライラしてしまうであろう。

だいぶ端的な例ではあったが、上記以外にもできないことはあり、みどりの窓口の代替として自動きっぷ券売機が補完しきれていない現実がある。また、何ができるか、できないかは客側としてはわかるはずもなく、自動きっぷ券売機で自力でできるかわからない→だったら窓口に並んでJR職員にきっぷを扱ってもらうという考えになってしまうのが自然である。

これまで述べた、
国鉄分割民営化によって誕生したJR各社が独自の予約サービスを展開してしまった結果、不便になっていること』
『自動きっぷ券売機がみどりの窓口を補完しきれていないこと』

の点を解決しない限り、みどりの窓口混雑は、永遠に解消しないように思えてならない。

3.予約サービスの統一・自動きっぷ券売機の機能改修が、JR各社のみどりの窓口問題解決へ?


これまでは問題点ばかり羅列したが、ここでは私が考える解決策を述べたい。

みどりの窓口減少・混雑問題の解決方法は、
『JRインターネット予約サービスアプリをJR旅客会社共通で作ること』
と、
『自動きっぷ券売機の機能改修をJR各社が統一して行うこと』
である。

先ほど述べた通り、JR各社が分割民営化後にインターネット予約サービスを導入したが問題点がある。そこで、共通のインターネット予約サービスアプリを導入することが、予約サービスの利便性向上&みどりの窓口減少・混雑といった問題点解決へと導くのではないか。

松戸駅→東京駅→(東海道新幹線利用)→新大阪駅→(特急くろしお利用)→和歌山駅と利用するとき、共通のJR予約サービスアプリがあればJR東海の東海道新幹線の座席も、JR西日本の特急くろしおの座席もひとまとめに予約でき、JR東日本の松戸駅で受け取りができる。そうすればみどりの窓口に並ぶ必要はない。そして、車両側の機能も徐々に改修し、予約情報をアプリからサーバーを通して車両側に飛ばすことができるように整備し、チケットレスサービスを拡充すれば完璧である。

これこそ、JR線をより便利に使うことができる理想であり、日本のインフラを担っているJR各社は、「分割民営化して会社が違うからよその状況は知らない」と放置せずに、協力して行うべきことではないだろうか。
共通の予約アプリを入れることで、関東であろうが、関西であろうが、JR職員に発券や受け取りにあたってわからないことを聞いても答えてくれるだろうし、JR職員にとっても「チケットレスなのできっぷは必要ありませんor予約したメール内にあるQRコードかざせば出てきます。」の回答で済む。変更についても、忙しくない時間なら答えてくれるのではないか。
遠い駅(予約元のサービスを運営していないJRの駅)では案内してもらえなかったり、受取ができない、なんて問題もなくなっていってほしい。

そして、自動きっぷ券売機についても、前項で話した
①初期画面表示方法の変更≒【検索して購入する】を一番目立たせる。
②ジパング倶楽部割引証を廃止してQRコードを印刷したジパング倶楽部会員証をJR各社で発行し、慣れてる人は自分で/慣れない人は窓口か通話機能付き券売機へ出向くか選べるようにする。
③学生割引証もQRコードを印刷したものを持たせて券売機で買えるようにする。
④通学定期券購入に必要な通学証明書にQRコードを印刷させて割引定期券をすぐ買うことができるようにする。
⑤異なる区間のきっぷが必要な同行者の分もまとめて入力できるようにする

などの改修をすれば、自動券売機で入力できるけどJR職員の確認が必要だからみどりの窓口で並び続ける、なんてことも減るだろう。

なお、最初の方で一度名前を出したが、JRシステム(鉄道情報システム株式会社)というJR各社の券売機や職員が使う端末を管理している会社がある。そのJRシステムが、JR各社と協力して予約サービスアプリを新たに作ってはくれないだろうかというのが、一JR利用者としての願いである。
そして、JR各社には、分割して民営化したからと言って、国民の鉄道を担っている責任は国鉄と変わらないことを認識してもらい、鉄道の利便性向上を図ってもらいたい。そして、利便性が上がった後にでみどりの窓口を減らすのであれば、利用者からの理解も大いに得ることができると私は考える。もしJRの要職にいる職員が見ているのであれば、上記のことをお願いしたい。

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