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マニュアルを作り始める前に気にかけたいこと

どの組織でも知識の共有は課題の一つだと思います。知識を共有化して管理していくことを形式知化とよび、そのためにたくさんの便利なツールが存在しています。

中でも有名なツールがマニュアル(作業手順書)でしょう。先人の知見を書類でまとめたマニュアルはとても便利。うまく活用すれば作業効率化につながります。

わからないことがあったとき、マニュアルがなければ詳しい人を探して聞くしか解決方法がありません。しかし、マニュアルがあれば自分で調べて解決に至ることができるからです。

製造業をはじめとした「技術は教わるのではなく、盗む」といった考えが主流の業界では、かつてはマニュアル不要論が多数派だったのかもしれませんね。

しかし、近年は人手不足や後継者不足の問題も大きくなり、形式知化を進めていこうという意見が増えてきているように思います。そして、その一環として「マニュアルを作ろう!」という声もよく耳にするようになりました。

その意見自体は、大賛成です。ただし、マニュアルは作ることが目的になってはいけません。マニュアルは作成することよりも運用することのほうが難しいというのが僕の経験上の考えです。

マニュアル運用を意識して、どのようにマニュアルを作り始めるのがよいのかを考えてみました。

マニュアルを作り始める前に気にかけたいこと

①なんでも作業手順書で管理しようとしていないか?
組織で共通の承認・管理方法がとられているか?
③更新がしやすい仕様か?

なんでも作業手順書で管理しようとしていないか?

何でもかんでもマニュアル(作業手順書)に残す。これはかなり危険です。

マニュアルだけを妄信すると、
・業務が作業化していく(ボタンを押すなど)
・業務の全体像が見えなくなる
・なぜ業務を行っているのかがわからなくなっていく

というリスクがあります。

それを防ぐためには、整理したいのがプロセスなのか作業手順なのかを明確にすることです。

作業手順をまとめるのがマニュアルですが、マニュアルを作り始めるよりも前に、プロセスの整理を行っておいたほうが良いでしょう。

そのために役に立つツールがプロセスマップです。プロセスマップとは、たとえば以下のようなものです。

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これはBPMNという手法をもって描かれたプロセスマップです。プロセス全体像を分かりやすく図示し、各プロセスのつながりと分岐を明示します。

プロセスマップについては別記事で詳しく説明していますので参考にしてみてください。

組織で共通の承認・管理方法がとられているか?

プロセスマップ、マニュアルを作ったのはよいが、ずさんな管理が行われてしまうという残念な結果に終わることがあります。

具体例としては、
・何年も更新がされず、古いやり方が書かれたマニュアルが放置される
・似たようなマニュアルが複数ある
・そもそもマニュアルがあるのかないのかわからない

などです。

それをさけるためには、オペレーション管理者の存在が不可欠です。

オペレーション管理者とは、部署横断で継続的な監査を行う役割を持つ者のことです。具体的な仕事は以下の主な3つです。

①業務を可視化し、ドキュメント管理を行う
②効率的・効果的な全体最適を促す
③決められた通りに業務が実行できているかをモニタリングする

マニュアルの定期監査が行われることによって、継続的な更新を行うことになります。

マニュアルの管理方法を決めるのもオペレーション管理者の役割です。野良マニュアルや類似マニュアルの出現は、オペレーション管理者に公認されているかどうかで防ぐことができます。

③更新がしやすい仕様か?

マニュアルが更新時に更新しやすい仕様であるか?これによって長くつかわれるマニュアルになるか否かが分かれます。

もしマニュアル管理のための便利なソフトなどがあれば、それを活用するのが良いでしょう。

Excelを使ってマニュアルを作成する場合、後任者への配慮がされた書式設定でマニュアルを作成するように意識することが大切です。

例えば以下のようなものです。

更新しやすい文章管理の書式
文章中のフォントやサイズが統一されている
セル結合、罫線の連発はない
行や列の追加ができる構成
他資料から転記、もしくは他資料へ転記がある場合、コピペで処理できる

マニュアルは作って終わりではありません。更新されて維持されてこそ本来の目的を達成できるのです。

まとめ

マニュアル作成は形式知化の手段であって目的ではありません。それを念頭に置いたうえで、どのようなマニュアルがあればよいのか、どのように管理していけばよいのかを組織全体で議論できると良いと思います。

個々人が好き勝手なマニュアルを作り出すと、全体最適がとれた組織からは遠のいていき、個人最適な組織となってしまう恐れがあります。

むやみにマニュアルを増やさないこと、組織で共通管理すること、更新されることも意識してマニュアルをつくること。これらを意識するだけでも全体最適へ一歩前進できると思います。

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