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『チェンジ・ザ・ルール!』ザ・ゴールのその先へ

『ザ・ゴール』という有名な小説をご存じだろうか?

イスラエルの物理学者、ゴールドラット氏による理論を物語でわかりやすくまとめたビジネス書で、「TOC(制約条件の理論)」を一躍有名にさせた。

『ザ・ゴール』は、マンガ版も出版されているのでぜひ読んでみてほしい。

『ザ・ゴール コミック版』エリヤフ・ゴールドラット 著

なお、今回取り上げたいのは『ザ・ゴール』ではない。その続編シリーズのうちの一冊である『チェンジ・ザ・ルール!』(原作名:Necessary But Not Sufficient)だ。

『チェンジ・ザ・ルール!』エリヤフ・ゴールドラット 著

『ザ・ゴール』を読んでから本書を読んだほうが理解が深まるので、『ザ・ゴール』未読の方はぜひそちらから。

気になるあらすじ

本作の主人公たちはIT企業のメンバー。ERPシステムの開発と企業への導入を行っている。飽和状態のERP市場を乗り越えるための戦略を練るうちに、ゴールドラットの提唱したTOC理論にたどり着く。

読者は主人公たちと一緒に、効果のあるシステム導入を成功させるためにすべきことは何かを考えていくことになる。

本書が面白いのは、ERPシステムを導入するために関わる人々の、異なる視点から多くの問題を提起していることだ。

例えば、システムを開発するITベンダーの視点と、導入を行うユーザーの視点。

あるいは、利益を上げることが使命の経営者の視点と、日々の業務の効率や成績を気にする実務者の視点。

そして、加工スピードを早めたい製造部署の視点と、在庫増を避けたい物流部署の視点。

それぞれの思惑を乗り越え、全体最適を行うためには何をしなければならないかを考えさせられる。

そして最も大切なことは、日本語タイトルの通りルールを変えること。システム導入の恩恵を享受するためには、システムの力を最大限に生かせるようなルールが必要なのだ。

現在でも多くの企業ができなくて悩んでいるこの問題を、約20年前に書かれた本書がリアルに描いている。まさに未来を先取りした一冊だろう。

感想

『ザ・ゴール』には感銘を受けた僕であったが、実はその続編シリーズである本書にはなかなか手を付けられないでいた。

もちろん、続編があることは知っていたし興味もあった。だけれど、『ザ・ゴール』より話題になっていなかったのと『ザ・ゴール』の内容が素晴らしかっただけに、それを上回る期待値を持つことができないでいた。

が、たまたま図書館で発見して読んでみたところ、これがすこぶる面白い。なんでもっと早く読まなかったんだと後悔したほどだ。

『ザ・ゴール』は、TOC理論を広めることが目的だった。結果として本書によって多くの企業がTOCを知ることとなり、またトヨタ式生産管理方式との共通点も多く一気にその知名度は高まった。

だが、言うまでもないことだが、知っていることと使えることは違う。本書ではTOC理論を知った後の段階、システム化して実践的に使うための教訓が得られると思った。

システム化を行う場合、様々な関係者との間での調整が必要になってくる。社内有力者の説得、社外の協力会社との合意、そしてシステム会社への要求の整理だ。

自社の業務を最適化することも難しいが、社外も含めて全体最適化をめざすのであればより難易度は高い。その時、どのような問題が生まれるのか?どうやって乗り越えればよいのか?そうしたことを考えさせられた。

僕自身は製造業に関わる身ではあるが、以前は情報サービス業に従事していたこともある。システム会社側の視点もユーザー側の視点も近いものを持っている。この視点の切り替えを活かさない手はない。

TOC理論をはじめとした様々なフレームワークを、ただ「知っている」状態にしておくのではなく活用するためのヒントを本書からもらったように思う。

一つの記事に内容をまとめてしまうのはもったいないので、いくつかの記事に分割して考えをまとめていく予定。ここでは簡単に大まかな感想を述べるに留める。

余談

本書はITコーディネータ協会の推薦図書になっているようです。非常に納得。ITベンダ側の人も、ユーザー側の人も、ぜひ手に取ってみてほしい。

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