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『ザ・ゴール』②ビジネスをカネの流れで考える思考

『ザ・ゴール コミック版』エリヤフ・ゴールドラット 著

前回の記事:『ザ・ゴール』①生産性の正体

業務改善についてシンプルかつ実用的な手法を教えてくれる本書。経営者目線ではなく、現場からの解決策が示されていることが本書の良いところ。

前回の記事では「企業の目的は利益を得ること」であり、「生産性を高めるとはより多くの利益を上げること」であると確認した。今回は業務改善に必要な思考法について。

ビジネスをシンプルにとらえなおす

業務改善を行う時、どこから手をつけるべきかという問題に直面する。目的が「利益を増やすこと」であるならば、自社のビジネスをカネの流れとして把握することが有効な手段だ。同時に、どの部分に優先的にテコ入れすべきかについても理解しておくとよい。

製造業であれ、サービス業であれ、実は基本的なビジネスの構造は変わらない。材料を仕入れ、加工して、顧客に提供する。インプットとアウトプットがあり、付加価値への対価として顧客からお金が支払われる。

ゴールドラット博士の教えに従うと、理想の生産性向上の方向性は、インプット費用を削減し、プロセス費用を維持しながら、アウトプットである売上増加を同時に行うことだという。

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ゴールドラット博士が提唱したスループット会計では、
インプット費用=在庫、プロセス費用=業務費用、アウトプットである売上はスループットと呼ばれる。本記事でははわかりやすくするためにインプット・プロセス・アウトプットという言葉に置き換えている。

この3つの指標を「同時に調整する」のがこの考え方の肝。売上増加だけ、在庫や業務費用を減少だけを目指すことは比較的簡単だ。しかし、それだけでは劇的で長期的な変化は望めない。ビジネス構造を俯瞰したうえで有効打を探すことによって全体最適への道が見えてくる。

つまり、その逆を行うと「利益を増やす」という目的からは遠ざかってしまうことになる。設備投資、人員増加、安易な値引きはいずれも悪手になりうるということ。どれも状況に応じて必要ではあるが、それによって売上の増加やコストダウンが可能かという視点が必ず必要になってくる。

何より、「今あるリソースの中だけで改善が図れないか」ということを考えることは問題の本質を突き止めるためにも有効だろう。また、既存のリソース活用をベースにした改善施策は、上意層も受け入れやすいという利点もある。

次回はこの原則を踏まえたうえで、具体的な業務改善の手法について考えていく。

注釈

プロセスの費用にあたる「業務費用」については、「維持」ではなく「減少」させるのがよいとされていることもある。しかし、僕自身は「維持」のほうが望ましいと思っている。

プロセス費用に含まれるものは人件費や光熱費など。これらの削減はモチベーションの低下を招きやすい。特に人件費減については敏感な問題。減給やリストラは長期的には衰退の原因となりうる。

ゴールドラット博士は「働くことが楽しい会社を作ろう!」という趣旨の発言もしている。強引なコストカットによる改善活動ではワクワクは生まれない。時に人件費へのテコ入れがやむを得ない場合もあるだろうが、あくまで最後の手段として認識しておいたほうがよいだろう。

ゴールドラット博士の教えを聞き流しで学べる「ゴールドラットチャンネル」。通勤中に聞くものオススメ。


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