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プロ経営者への批判に対して思うこと

俺が監督だったら・・・が溢れる理由

昔、「プロ野球監督はなぜ批判されるか?」という記事を読んだ。それによると、観客は選手になることは難しいがなんとなく監督にならなれそうな気がするらしい。なるほど。確かに監督は実際にプレーすることはない(たまに選手兼の方もいるが)。采配だけなら素人でもできそうな気がしてくるのだとか。甘く見られたものである。

さて、プロ経営者についても同じことが言えると思っている。最近、プロ経営者に対する批判のニュースを耳にすることは多い(僕が思っているだけかもしれない、カルロスゴーンの件があったからかもしれない)。プロ経営者たちの内部評価や進退については企業に任せるとして、外野が「あの人は役に立たない」「そもそも日本にプロ経営者はいらない」などと騒ぐのは少々野暮ではないだろうか。

でも、ジム・コリンズも言ってるし・・・

とはいえ・・・社内に変革をもたらすのは社外から来たリーダーではなく、生え抜きが多いという主張も確かに存在する。経営学者のジム・コリンズは「ビジョナリー・カンパニー」シリーズでそのことを繰り返し述べている。

コリンズは、『How the Mighty Fall』(邦題:ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階)にて企業衰退のルールを述べている。衰退が明らかになった企業が行う過ちとして、リーダーやコンサルを招聘して大規模な変革を行おうとすることが挙げられている。

外部から来たリーダーは、過激な言葉を使って変革の必要性を訴える。しかし、結果的にうまくいかずにさらなる衰退を招いてしまうのだとか。

コリンズの過去の研究では、GoodからGreatになった企業のCEOは、90%以上が生え抜き社員だったという。(Good, Greatな企業の定義や生え抜きの定義はここでは語らない。)コリンズの研究は海外企業も多く含んでいるので、別に日本独自の事情でプロ経営者が上手くいかないとかそういうことではなさそう。

ギャップこそが犯人では?

なんだやっぱりプロ経営者よりも生え抜きがいいじゃないか!と、結論づけたくなるかもしれないが少し待ってほしい。

本当にプロ経営者たちが「無能」だとしたら、どうして彼・彼女らは以前の企業で高い地位にいられたのだろうか?コネ?派閥?裏金?いやいや、そんなものだけで昇りつめられるほど企業は優しい世界ではない。彼・彼女にも毅然とした実績があり、企業内で認められた成果として高い地位を手に入れたのだろう。

だから僕は思う。プロ経営者が「無能」なのではなく、ただただ新しい環境との噛み合わせが良くないだけなのではないかと。

過去に確かな実績を残した人ほど自信に満ち溢れるもの。そして、過去と同じ方法を使えば再び成功できると信じる。しかし、その前に大きなギャップが立ちはだかる。

たとえばリソースギャップ。経営者がやりたいことがあるにもかかわらず、ヒト・モノ・カネが足りず断念する。あるいは、強行した結果十分な成果を得られず更なる危機を招く。

そして何より大きいのが企業文化のギャップ。大切にしたい価値観や行動は企業によって異なる。外から見ていたら意味不明なルールも、過去の成功体験から得た理にかなったものであったりする。それらは意思決定における不文律を生み出すことになる。

正しく現状や価値観を理解するためには相当の時間がかかる。しかし、ステークホルダーはプロ経営者に短期間での成果を望んでしまう。そもそも短期間での成果が必要でなければ、プロ経営者が招かれることはないからだ。皮肉にもそれは、外部から来た人間が適応するためには最も不都合なタイミングなのではないだろうか。

まとめ

つまり僕の意見としては、

・プロ経営者は優秀(少なくとも何らかの分野において)
・そして過去の実績から自信があり、過去の手法を試したい
・どんな人間でも新しい環境に適応するには時間がかかる
・リソースや企業文化の違いは簡単に理解できない
・しかし、ステークホルダーはプロ経営者に短期間の成果を望む
・そもそもプロ経営者が呼ばれるのは危機的状況が多い
・現状把握が不十分なまま誤った判断を下してしまう

というもの。優秀なプロ経営者ほど話題性が大きいからプレッシャーと過信もあるのかもしれないね。僕自身、経営者になったことがないから詳しくは知らんけど。

先に紹介したコリンズの研究では、実績を残すことができたプロ経営者の例も紹介されている。何もすべてのプロ経営者が成果を挙げられないわけではない。そして繰り返しになるが、おそらくプロ経営者が無能な訳でもない。

余談

ということを書いていたら、考えていた内容にかなり近い書籍を発見。

『The First 90 Days』/ Michael Watkins

新しい役割を得たリーダーが成功するためには何をしなければならないのかが紹介されている。非常に興味が沸いたので、次はこの本を読んで紹介したいと思います。


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