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パラダイスキラー - ゲームレビュー

あらすじ

死んだエイリアンの神々を崇めるシンジケートは、神々を復活させんとパラダイス島を作った。しかし復活の儀式の過程で引き寄せられた悪魔、それにより腐敗した島を捨て、シンジケートは新たに生み出した島へ移行する。そしてそのサイクルは幾度と繰り返された。
一方、過去の事件により永久追放を受けていたレディ・ラブ・ダイ。300万の日が過ぎ、突如として彼女は永久追放から呼び戻される。パラダイス犯罪心理捜査班の元捜査官であった彼女は、パーフェクト25──24号島の次の島──への移行中に起こった、シンジケートの議員殺害事件の調査を命じられる。
島で見つかる数々の謎と手がかり、各人の思惑、彼女はそこにどんな真実を見出すのか。

作品紹介

『パラダイスキラー』はイギリスのインディー系ゲームスタジオ『Kaizen Game Works』が制作した、ミステリー要素のあるテキストアドベンチャー。パラダイス島と呼ばれるオープンワールドを舞台に、そこで行われた殺人事件の調査のため一人称視点(いわゆるFPS視点)で探索を行うことで証拠や証言を集め、裁判により事件の決着をつけることを目的とする。

独特のテキストとキャラクター

一人称視点のテキストアドベンチャーと聞いてどんなゲームなのかと思うかもしれないがそこは安心してほしい、オープンワールドには会話可能なキャラクターが存在するのだが、会話パートは従来のテキストアドベンチャーと対して変わらないような形となっている。
その会話パートも、赤いガイコツのバーテンダー、山羊の頭をした島のアイドル、両腕が義手のピンクモヒカン医師、などビジュアルも含め個性豊かなキャラクターにより魅力的になっているのだが、独特の言い回しや固有名詞の多いテキストは好みが分かれるだろう。
そして会話パートにおいて特徴的なのが選択肢の前に発言の意図を示す簡単な表現があることだが、前述のテキストの問題に加えて操作キャラクターであるレディ・ラブ・ダイの皮肉的な物言いによってプレイヤーの思い描いた通りの会話にならないことが多々あることはプレイヤーによっては難点かもしれない。

魅力あふれるロケーション

そして本作の特徴であるオープンワールド、それのロケーションの独特さが本作の魅力の一つとしてあげられる。
本作では日本風の風景が中心のエリアが存在するのだが、その風景は時代劇に出てくるような和風な風景でもなければサイバーパンク作品で見られるような繁華街の風景でもない。住宅街や団地、コンビニそして鯉のぼりなど、日本の作品でもあまり取り上げられることのない、生活感が感じられるような風景が本作では見られる。

一方で金や黒曜石、大理石のようなもので作られた装飾や建築物、紫の翡翠で出来ているような神像など、エイリアンの神々への信仰があることを嫌でも感じさせられるような異質なオブジェクトが島中に、日本風の風景の中にも配置されていることが作品の雰囲気を独特なものとしている。

素晴らしい音楽

雰囲気という点では音楽も無視できないがそこは心配ない。
本作はVaporwave(ヴェイパーウェイブ)と呼ばれる音楽ジャンルに影響を受けていて、楽曲のほか前述の日本風の風景やUIなど随所にその影響が見て取れ、それらと楽曲の組み合わせは作品の魅力をより高めている。本作の楽曲の数々はとてもクオリティが高く、プレイをしたことはなくとも一聴の価値はある。話は逸れるが、本作の楽曲は主要なサブスクリプション型音楽配信サービスでの配信の他、CDやレコードの販売、BandcampやSteamでのデジタル版のサウンドトラックの販売も行われているので、気になる方はぜひ聴いてみてほしい。各サイトにて『Paradise killer』で検索すればアルバムが出てくるはずだ。

難のある探索

これまで本作の評価点を挙げてきたが、一方で探索に関しては上手くいっているとは言い難い。
本作のフィールドは立体的で、住宅街エリアは遮蔽物が多く見通しはあまり良くない。しかもこの作品中には詳細なマップはなく迷いやすくなっている。

マップはあるにはあるのだが、大まかな位置を表したようなものしかない。

もちろん本作もオープンワールドのゲームの例に漏れずファストトラベル機能が存在するが問題がある。本作のファストトラベルは各所にあるセーブポイントから別のセーブポイントへ移動する形式なのだが、それを利用するためにはまず各セーブポイントのファストトラベル機能をゲーム内通貨を使って解除する必要があり、実際にファストトラベルを利用する際にもゲーム内通貨を消費しなければならないのだが、ゲーム内通貨は作中で限られた数しか入手できない。
ネタバレにはなるが最終的には結構な数のゲーム内通貨が余る。しかしファストトラベルの解除と利用で2重にゲーム内通貨を消費させる仕様は本作の明確な欠点と言える。

賛否分かれるミステリー要素

そしてミステリー要素、ここは賛否分かれるであろう部分になっている。
本作は事件の謎解きを専用のシーケンスにて行うのではなく、プレイヤー自身が手に入れた証拠や証言から事件の顛末を推理するゲームデザインになっている。

それゆえに本作の事件の謎はプレイヤーが十分推理できる程度の、ミステリー作品が好きな方からすれば大したことがないと感じられるような謎になっている。そして裁判パートはあっさりとした内容になっていて、『逆転裁判』シリーズや『ダンガンロンパ』シリーズのようなプレイ体験を期待する方にとっては物足りなく感じるだろう。

総評

『パラダイスキラー』は探偵のように数々の手がかりから事件の真実を自分で導き出すことを重視している作品になっている。フィールドの構造やファストトラベルの仕様など探索に関する部分に問題はあるが、素晴らしい音楽、独特のロケーション、魅力あるキャラクターなど雰囲気を味わうという点においては一級品だ。


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