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友達ではないけど

10月の僕を最大限に肯定してくれた曲が何かと問われれば、チャットモンチー砂鉄であると迷いなく答えるだろう。

この曲と2019年10月は、僕の<友達>という概念への解像度を一つ上げてくれた。単純な友情でもない、でもただの仲間でもない、そんな曖昧な関係をお茶を濁すように僕は全て<友達>と呼んでいた。だけど、その<友達>という関係ひとつひとつは全く違うもので、それを一括りにするのは無謀だった。そんな中、僕の中の特に曖昧な部分の感情をズバリと言ってくれたのが、砂鉄、このタイトルと曲である。今、僕らの友情に名前を付けるなら、こんな歌を引用してそう呼びたい。

そもそも、この歌は、チャットモンチーというバンドへのラブレターだ。送り主は元メンバー。彼女が元仲間のことを考えて振り絞った言葉には、本当に深い愛や追憶と、絶妙に遠い現在の距離感がベストバランスで配合されている。そのバランス感が、まさしく僕が抱いている友情の書き下しのように働いてくれたのかもしれない。ラブレターは、関係性→想い→エールという順に書き連ねられている。ひとつずつ見てみよう。


砂鉄 という関係性

同じクラスだったら 友達にはなってないだろうな
ジャンル違いのオタクだもん プリント回すだけの関係さ

歌い出しのこの二言が、全てを物語っている。あの日、あの時、あの場所 が噛み合わなければ、キミらに興味を持つことはなかった。キミの知識は僕の今までの人生となんら掠っていないものだし、僕の知識もキミには元来必要のないものでただ興味を持つはずがないものだった。<同じクラスだったら…>、そんな絶妙な距離感でさえ交わるはずのない程に、僕とキミとキミらは違う世界に生きていて、それでも、あの日、あの時、あの場所 は巡り合う。それはまるで、引き寄せられるように。

砂場に磁石入れたら 砂鉄だけ持ちあがるように
別の星に生まれていても 僕らは出会ったのだろうね

ただひとつ、ただひとつのことに少し心が動いたことが、僕らを巡り合わせた。そのひとつに興味を持っていたことが、たくさんの興味を引き連れて、僕らを取り囲んだ。誰かを知るって素晴らしいことで、僕らはひとつの磁石で方向を揃えられて、お互いの興味に、知識に、好きなものに、さほどのチガイがないことを知った。結局、やりたいことは同じようなもので、誰かの知識と誰かの知識を組み合わせて僕じゃ想像もつかないものを僕らなら創造できた。そんなステキな記憶を重ねていく。

そんな偶然的に、しかし、必然的に出会ってしまった人たち。そして、その背景を踏まえて面白さを認めてひとつの時間を細々と共有することを決めた人々、それが僕の解釈の砂鉄という人間関係だ。そして、そんな砂鉄という関係の人々のことを知るほどに、それは僕の大切なものへと変わっていくのである。

砂鉄 への想い

好きでも嫌いでも 好きさ 会っても会わなくても 忘れない
だめでもだめだめでも 許すよ 友達でもないのに

好きな時だってあるし、嫌いな時だってある、長い時間を一緒に過ごせば、そんな両面がビッチリと目に入ってしまう。だけど、それをひっくるめて、この人といると楽しい、好きだってなるのだ。そう、嫌いで嫌いで<消えてしまえよ、ちくしょー。>って思ってるときでさえ、僕はキミらのことが大好きなんです。だから、羨ましいとは思っても、恨めしいとは思えない。だって、好きなものは好きなんだもの、そう簡単には嫌いになんてなれないよ…。頻繁に会っていて毎日お話をしていたって、年に数回しか会わないであんまりお話しできてなくたって、そんな人たちのことがいつだって、一度好きになったものは好きなんだ!

この歌詞が唄っていることが、僕の言う大切なんだと思う。大切っていうのは、幸せになって欲しいってことである。僕が知らないところでだって笑っていて欲しいってことである。それは、強い願いだ。きっと折れない願いなんだ。自分のことよりも、まず目の前の人が幸せであって欲しいんだ、出来る限り。

エール

この曲は、ラブレターの相手と自分に最大限のエールを送って締められる。

君は君の真似なんてしなくても 最初で最後の君だ
僕は僕の真似なんてしなくても 最初で最後の僕だ

この言葉の強さよ。僕らはすぐに過去に囚われ、周りに囚われてしまう。過去の栄光にすがりたくなるし、新しいものを作るのは怖いし、誰かと被るのが怖かったり。そんな何かを作る人への最大限の敬意がこもったこの2行は、救いの言葉だ。君は君らしくなくても君だし、僕は僕らしくなくても僕なのだ。それを誰かに胸を張っていってもらえることが、どれだけ精神を安定させるか…。自分は自分、今の自分がオリジナル。そんな言葉もこの曲が僕を最大限肯定してくれたと感じた理由なのかもしれない。


まとめ

この曲は、最高の友情賛歌なのである。

そして、最高の自分賛歌だ。

チャットモンチーはいつも僕のことを歌ってくれる。えっちゃんの優しい声とともに。

そんなチャットモンチーが大好きだ。だから、今夜もチャットモンチーを聞いていこう。




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