激安居酒屋 VS コンビニ
お店を運営していく上で、どのくらいの価格帯で勝負するかはとても大事なところだ。
これからの時代、安さと手軽さが飲食店に求められることはとても少なくなっていくように思う。
外食はもっと頻度が減り、特別なものとなっていくだろう。
コロナ禍で勢いをそがれてしまったが、都心の家賃が高いところを除いては、コンビニのイートインスペースは、今じゃ常識的に設置されている。
地方の大型ショッピングセンターでは、食料品売り場に広いイートインスペースを設けており、そこで買ったものは何でも飲んで食べて帰ることができる。
とくに17時台は、高齢者を中心にかなりの人で賑わっている。
中食と外食の中間という形
外食はしない、でも家でも食事しない。
こんなスタイルが確立されつつある。
惣菜や弁当を小売店で買って、その場で消費する形がどんどん増えているのだ。
核家族化がさらに進んでることがそれを助長している。
特に高齢者は、スーパーで購入したご飯をその場で食べて帰っていくようになった。
当然のことながら、調理はせずにイートインスペースに置いてある電子レンジで料理を温める。
ゴミもその場で処分できて、テーブルを拭いたりすることもほとんどない。
単身者は自炊してもかえって割高になってしまうことや手間を考えれば買った方が得と考える。
そして、極限までコストを抑えた弁当を買って食べることを選ぶ。
ちょっといっぱい飲みたというニーズにも低価格で応えてくれる。
特にセールで売られているサワー系の飲み物は、缶ジュースより安い。
スケールメリット
何よりもコンビニ、スーパーの輸送、流通網は、どこにも負けないインフラでもある。
これらの業態の会社が、大量に同じ材料を入荷し、同じ商品を生産することで、コストを可能な限り下げている。
コンビニの流通網の戦略で有名な話だが、自社便トラックで各店舗に商品を輸送する時、ある程度大きめの幹線道路で動線をあらかじめ決めて、そのルート上に極力店舗を出店することで、商品を納品するときの効率を最大限に引き上げている。
この方法で、他とは比べ物にならないぐらいの輸送コストを削減をしている。
これは個人事業や小企業には決して真似することができない。
取引量や店舗数、顧客数のスケールメリットを最大限に活かしている。
調理加工技術の躍進
誰しもがアレ?と思ったことがあると思うが、コンビニの惣菜、弁当、スイーツはとても美味しくなっている。
もちろん、「値段の割には」ではあるが、この数年の進化はすごい。
料理一つ一つの調理工程でそれぞれ研究され尽くしているのだ。
電子レンジで温めて食べても、パラパラなチャーハンやいい塩梅のあんかけ焼きそば、半熟卵の親子丼まで食べることができる。
調理技術のレベルが上がり、昔ほどひどい保存料使わずに半日なら美味しく食べられるよう徹底的に研究された。
スイーツも同様だ。
もともと原価の高いものではないが、やはり店舗数が多い分、さらに原価を抑えることができる。
味に関しても、有名なパティシエが作るものには到底およばないが、価格はその半分でも美味しさは半分ではない。
満足度が高いものが並べられている。
この10年での進化はとくにすごい。
イートインスペースで、もしくは家で電子レンジで温めた時に最大のパフォーマンスが出る料理というジャンルでベストがつくされている。
コンビニ、スーパーでこれだけ美味しくて、この値段なら感謝しかない。
という価格で売られているのだ。
ニーズの減っていく格安居酒屋
スーパーやコンビニがここまで強みを活かしてビジネスを推し進めてくると生ビール290円、おつまみ全品300円の格安居酒屋との差はどこにあるのだろうか?
もう器がお皿なのか持ち帰り容器なのかという差と、持ってきてくれるか自分で運ぶかの差しかなくなってきてしまう。
格安居酒屋は接客があるというかもしれないが、気持ちよく飲み食いできるような接客はそこにはないことがほとんどだろう。
格安居酒屋ももちろんこの努力をしている。
料理に関して言えば、セントラルキッチンで作られた真空パック、レトルト、冷凍食品を簡単に加工して提供することで、安い価格を実現している。
この仕組み自体は、コンビやスーパーと変わらない。
しかし、家賃や人件費の負担でどうしても勝つことはできず、商品の価格は上回ってしまう。
「安いからしょうがないでしょ。接客とかは期待しないでね。」というお店を使う理由がなくなってきてしまっている。
安さを売りにして勝負するには、もう飲食店はまったく勝てない時代になってきている。
安さを求める人は、他にいくらでも選択肢があるし、家の近所で済ますことができる。
さらに僕は信じられないが、食べ物はなんでもいいという人も一定数は必ずいる。
対局に、倍のお金を払ってもいいからちゃんとしたものが食べたいという人やオーガニック食材でなければ食べないという人もいる。
これからは、さらにこの両極分化は進んでいき、安いものを求める人はコンビニ、スーパーのイートインを利用し、いいものを高くてもいいから食べたいと考える人は、割高でも本物を提供する飲食店へと向かう。
これは、それ以外の飲食店が苦戦を強いられることを意味する。
もう格安居酒屋に残されたニーズは、若い子たちの溜まり場が必要という点ぐらいだろうか。
ここ数年で、格安居酒屋は確実に減っていくだろう。
夜の営業の客単価が2000〜4000円という今まで最も多かった価格帯の飲食店がこれからどんどん少なくなっていくのではないかと思う。
ある程度高くなってしまっても、クセが強くても、他では真似のできない、本物の料理を店主の思いのせて提供できていることが重要になっていくる。
これがお店を存続させるために必要な第一の条件になっていくだろう。
これからの時代の飲食店の参考書