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座間市の工務店が児童養護施設の子どもの支援事業を始めた話(前編)

多くの家庭の子どもは、高校を卒業すると大学に進学し、4年間で社会に出る準備をします。
しかし、児童養護施設の子どもたちは、そんな準備期間を与えられることもなく、高校を卒業するとすぐに社会に放り出されてしまう。
あらかじめ貯金をしていないと住む家もなく、賃貸の審査も難しい。住み込みで働くとなると選択肢は限られるし、そもそも働くためのスキルも全くない。
それは、例えるなら裸でジャングルに放り出されるようなものです。事実、施設を出た子どもの中で、音信不通になる子どもも少なくありません。
生きてさえいれば、少しづつでも人生の軌道を変えていくこともできますが、人生に希望を見いだせず、孤独の中で自ら命を断つ子どももいるでしょう。
親の虐待をうけて施設に入った上、このような状況を強いられているのが、子どもたちの現状です。


はじめまして、豊崎と申します。

皆さんは、児童養護施設と聞いてどんなイメージがありますか?

「全くイメージがわかない」「やんちゃな子どもが多そう」

恐らく、こんなイメージじゃないかと思います。

私は神奈川県座間市で工務店を営みながら、施設の子どもたちの支援活動を行っていますが、私もこの事業を始めるまで、施設に住む子どもについて全く知りませんでした。

私が施設の存在を知ったのは2021年の12月ですが、子どもたちや職員さんから色んな話を聞いて、子どもたちの置かれる状況がとても厳しいものだと知りました。
しかし、そんな事情を知っている人はごくわずかです。

このnoteでは、施設の子どもたちを取り巻く環境や、私達の支援事業についてご紹介させて頂きたいと思います。


児童養護施設とは

児童養護施設は、ちょっと昔だと孤児院と呼ばれたりもしていましたので、そちらの名称のほうが馴染みのある方もいるかもしれません。

児童養護施設(以下、ホーム)とは、保護者のない児童や虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させて養護し、その自立を支援する施設です。ホームには1歳から18歳までの子どもたちが生活しています。

ホームの規模はまちまちですが、私が支援しているホームでは80人の子どもが集団生活を送っています。

日本の児童虐待

政府の統計によると、日本の児童虐待件数は年々増えており、令和3年度には207,660件にもおよびます。

数字が増えているのは、児童相談所への通報制度が整備されてきたと考えることもできるかもしれませんが、少なくとも年間で20万件以上の虐待が起きているのは確かです。

そして、そんな子どもたちが、児童相談所から紹介されてホームにやってきます。こちらも政府統計の数字ですが、全国のホームに入所している子どもの65.6%が虐待を受けています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11923000/001077520.pdf

統計上は65.6%となっていますが、私が支援しているホームではほぼ全員が虐待を受けて入所しています。

虐待の内容はさまざまで、身体的虐待もあれば、性的虐待を受けた子どももいます。

全国にはそんなホームが600箇所以上あり、27,000人以上の子どもたちが暮らしています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11923000/001077520.pdf

さまざまなハンデを抱え、退所までの期限も決まっている

ホームの子どもというと、やんちゃな子を連想する方もいるかもしれませんが、私が会ってきたホームの子どもたちは、むしろ逆です。

自分に自信のない子どもや、対人恐怖症になっている子どもも多く、将来について希望を持てないでいる子どもも多くいます。

子どもは本来、幼少期に親からの愛情を受け、成功体験を積んでいくことで、自分への自信や将来への希望を見出していきます。

ですが、虐待を受けた子どもたちは、そういった機会を得られずホームに入所します。成功体験がなければ新しいことに取り組む意欲も出てこない。無気力になってしまったり、部屋に引きこもって他の子との会話を避ける子どももいます。

これが実家であれば、少なくとも家に引きこもっている間は一定の生活が保証されるでしょう。

しかし、ホームで過ごせる時間は限られています。ホームの子どもたちは、高校を卒業するタイミングで、ホームを出なければいけません。

自立に必要なお金を自分で稼がなければならない

ホームを退所すると、子どもたちは住む家を自分で探さなければなりません。当然、家を借りるにはまとまったお金が必要になります。

ホームの職員さんに聞いた話によると、その金額は100万円にも及ぶそうです。
もちろん、ホームにいる間に卒業後の仕事が決まり、住む家も決まるケースもありますので、必ずしも必要ではないですが、ホームを出て生活をスタートさせる際に必要な金額の目安となります。

また、就職先も自分で探す必要があります。

子どもたちは世間的には何のスキルもない高卒生ですので、給与条件の良い仕事に就くのは難しく、ここでも彼らの選択の幅は狭まってしまいます。

虐待を受けて自分に自信を持てず、ホームを出た後の選択肢も限られている。

ホームの子どもたちをめぐる環境は、私達が想像する以上に過酷なものです。

アルバイトの受け入れを通じて、子どもたちの支援を

今回は前編ということで、ホームの子どもたちの状況についてお話させていただきました。

次回は、子どもたちの支援のために、私達が取り組んでいる事業や、将来的な展望についてお話させて頂きます。

具体的には、子どもたちをアルバイトとして受け入れ、彼らに大工としての技術を身につけてもらいながら、退所後に必要なお金を稼いでもらう活動を2年前から開始しました。

この話を読んで、ホームの子どもたちや、私達の活動に少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ記事のシェアをお願いいたします。

それではまた。

文/代筆広報S

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