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想像以上にハードな、児童養護施設の子どもの進学事情

こんにちは、豊崎です。

先日、私達が立ち上げる予定のNPOの総会を行いました。(NPO
の活動内容については過去のnoteをご参照ください)

当日はこの活動に共感し、応援してくれるかたが7名集まってくれました。

NPOは立ち上げにあたって10名以上の「正会員」が必要になります。正会員とは、会社でいうところの株主にあたる存在です。
例えば、一定以上の正会員が私の運営方針に不満を持った場合、私を代表理事から解任することも可能です。

実は、そんなNPOの正会員に、ホームで暮らす子どもに入ってもらおうと思い、総会に来てもらいました。

今回は、その時に聞いた、ホームで暮らす子どもの大学進学についてお話したいと思います。

結論からいうと、ホームの子どもの大学進学はとんでもなくハードルが高く、さまざまな支援がないと実現しないということが分かりました。

ぜひ、最後までお読み頂ければ幸いです。

警察官を夢見るM君の場合

今回の話の主人公は、児童ホームで暮らすM君です。彼は小さい頃から警察官になることを夢見ていました。

中学校1年生の頃、父親が自殺したころから母親からの虐待が始まったそうです。

高校進学の際、警察官を目指すM君は普通科への進学を希望していたところ、母親が工業系に行かせようとし、三者面談の場で殴られたこともあります

結局、M君は普通科への進学を諦めず、児童相談所に連絡して児童ホームにたどり着きました。

M君は17歳と思えないほどしっかりしています。小さい頃に空手を習っていたこともあって、礼儀正しく、芯のしっかりした子どもです。
私の会社で大工のアルバイトをしてくれていますが、仕事の覚えも早く、とても助かっています。

M君は大学進学を希望しており、警察学が学べる学校を志望しています。
試験対策もある程度できていて、警察官を目指す枠のAO入試(面接と小論文で受験できる入試方式)を狙っています。

ホームには教員免許を持っている職員さんもいるので、手伝ってもらいながら小論文の対策を進めています。

学費の壁

そんなM君ですが、実は大学入学できるかとても微妙な状況にいます。

そう、学費の問題です。

大学の入学費用に対して、今の貯金だけだと50万円ほど足りないそうです。

一般的に、高校生が大学進学する際、総額で100万円〜200万円以上の費用がかかります。

大多数の高校生は、親御さんが工面してくれることが多いですが、彼は自分でそれを用立てなければなりません。

この金額を高校生が稼ぐのは非常に難しいでしょう。

しかも、彼が貯金をしていた時期は新型コロナウィルスが蔓延していた時期で、コロナ禍でホームがクラスタになった事があり、半年ほどアルバイトができなかったそうです。

そういった事情もあり、彼の大学進学に黄色信号が灯っている状態です。

祖父の遺産を車の購入にあてる母親

ここまで読んで、「祖父母など親戚に頼ることはできないのか?」と思うかたもいらっしゃるかもしれません。

私もそう思いました。

ところが、ここで母親の存在が出てきます。

以前、M君の祖父が亡くなって、遺産相続の話が出ました。その時、M君の父親は既に亡くなっており、受取人はM君になっていました。金額は50万円ほどで、ちょうどいま足りない金額とほぼ同額です。

あろうことか、この遺産を、母親が「私に渡せ」といってきました。使っている車が古くなったので、買い替えをしたいらしいです。

遺産の受取人はM君ですが、親権は母親にあります。法定代理人も母親になるため、それを拒否する事は困難です。(うちの顧問弁護士にも相談しましたが難しいということでした。。)

結局、M君は20万円くらいもらう形で決着がつきそうですが、この件で祖母と母親が絶縁状態になってしまい、祖母を頼ることもできなくなってしまいました。

余談ですが、母親は生活保護を受給しているため、M君は扶養に入ることができません。そのため、大学入学後の住民税や健康保険料も自分で支払う必要があります。

本来は子どもの進学を応援するはずの親が、まさかこんな形で子どもの妨げになるとは、驚くとともに胸が痛くなります。

夏休みを使ってアルバイト

M君はいま、夏休みを活かしてうちのアルバイトを増やしています。このままいけば、ギリギリ学費が足りるかどうかというところです。

こんなにしっかりした子どもの夢が、お金によって閉ざされてしまうのは本当に許せないことです。

許されるなら、私が工面してあげてもいいとさえ思っています。

特定の子どもだけ特別に扱うことを、ホームがよしとしない可能性は高いですが、そうならないように何かしらの配慮ができないかとも考えています。

17歳といえば、勉強や部活の傍ら、友達や彼女と思い出を作りたいという年頃でしょう。ですが、ホームに住んでいる子どもが大学進学を目指そうと思ったらそうはいきません。

高校生が月5万円をアルバイトで稼ごうと思ったら、50時間近くの時間が必要になります。放課後や週末の大半をアルバイトにあてる必要があります。残りの時間に試験対策をしたとして、本当に自由に使える時間はごくわずかです。

そんな中で頑張っているのです。私は、M君がなんとか進学できるように、できる限りサポートしていきたいと思っています。

これを読む皆さんへのお願い

M君はホームの子どもの中でもとてもしっかりしています。
彼が中学まで家を出なかったのも、彼には弟と妹がいて、母親の虐待の矛先が向くことを避けるためでした。
(ちなみにM君が家を出たあと、母親は弟妹に手をあげることはないようで、むしろ2人に対してM君がいかに悪い兄かを吹聴しているそうです。とても辛い話ですが。。)

そんなM君でさえ、大学進学できるかギリギリというのが現実です。

この記事を読んで、もし彼のような子どもたちを応援したいという方がいらっしゃれば、ぜひこの記事を知り合いの方に教えてあげてください。

ホームの子どもを取り巻く問題を解決するためには、「そういった環境にいる子どもたちを知ること」が重要だと思います。

私の周りでも、ホームの子どもたちについて話をすると「自分もできることがあれば協力したい」と言ってくれる人が多くいます。

そういった仲間を増やすために、まずは子どもたちのことを多くの人に知って頂きたいと思います。

M君のことも、もしかすると公的制度でカバーできることがもっとあるかもしれません。そういった情報を知っている人の目に届き、アドバイスを受けることができれば、大学進学の可能性が高まるかもしれません。

この記事を読んで、私達の活動に共感いただけたら、ぜひ知り合いの方にこの記事を教えてあげてください。

きっとそれが、ホームの子どもたちを助けることにつながります。

私達の活動が実を結ぶのは数年後だと思っています。全国のホームと繋がって、アルバイトの受け入れ先企業も増えてくれば、ホームの子どもたちが将来に不安を抱かずに日々を過ごすことができるはずです。

そのためには、まずは地道に広報活動をしていく必要があると思っています。

M君からは、進学事情以外にもホームで暮らす子どものことを色々と教えてもらいました。

今後も、ホームの子どもの状況について発信していきたいと思いますので、ぜひまたご覧いただけますと幸いです。

それではまた。

文/代筆広報S


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