幼稚園の頃好きだった男の子の話#1 私は、ゼリー飲料を飲むとき、上唇を吸わせるクセがある

幼稚園の時に好きだった男の子がいる。幼稚園に入る前から友達だったから、もしかしたら3歳くらいから一緒だったのかも知れない。同じ幼稚園で、同じ英会話教室で、同じスイミングスクールに通っていた。彼は、私が人生で初めて好きになった男の子で、本当に素敵な男の子だったと振り返って今でも思う。最近友達に彼の話をすると必ず笑ってくれるので、いい子と一緒にいたなと思い出す。私は彼との思い出を書こうと思う。

野菜生活ゼリー、宙に浮く

私が彼と初めて近所のセブンイレブンで飲んだ
記念すべきゼリー飲料　「野菜生活」

「そんな！いつも飲んでいる野菜生活がゼリーに！？これって大人が飲むものじゃないの！？！？」

と、思った。普段の私であれば、これは大人用だし、見慣れないし、自分とは無関係だと思っていた商品だ。近所のコンビニで「これ美味しいんだよ」と彼が言うから、近所のセブンイレブンで買ってもらった。ゼリー記念日。多分5歳くらい。

セブンイレブンの前の駐車場で私と彼は並んでゼリー飲料を吸う。その時彼が言った。

「これ、ちぅーと吸って唇にずらすと、ひっつくんだよ！」

彼は、口先を使って、ちぅ、と、容器の口の白いノズルの部分を吸い、上唇につけた。野菜生活ゼリーは、彼の口元に吸い付き、宙に浮いた。

なるほど、空気が圧縮され、上唇の肉を少し巻き込む。唇の肉が栓になり、手を離してもゼリーの容器が上唇にひっついたまま宙に浮くのだった。

幸い、私ママは彼のママとの会話に夢中になっている。こちらを見ていない。私も「こんなふうに食べ物で遊んでいいのかしら」と思いながら、白いノズルを吸って、上唇につけた。子どもの薄い唇の肉が巻き込まれて、つねられたような感覚になる。ずっしりとしたゼリーの重みが伝わる。(大丈夫…かな…)、勇気を持って手を離すと、野菜生活は宙に浮いた。(わたしもできた！)

私と彼はセブンイレブンの駐車場で、2人並んで俯きながら口に野菜生活ゼリーをぶら下げて、ゆらゆらと揺らしていた。その時間はとても長く感じられた。(意外と怒られない！)と思っていると、私と彼のママたちがこちらを向いて「やめなさい！そんな変な食べ方しないで！」と言われた。

それで2人は、野菜生活ゼリーぶら下げをやめた。私は今でも、ゼリー飲料を飲むときに少しだけノズルを吸って、上唇を巻きこんで遊ぶクセがある。その度に真夏のセブンイレブンの前を思い出すのだった。