三園彩華

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「返事はいらない」のは、呪いがかけてあるから ー松任谷由実 デビュー50周年に寄せてー

松任谷由実が、デビュー50周年を迎えた。半世紀にわたってこの国に君臨している魔女の最初のシングルに想いを馳せる。 1972年7月5日 シングル「返事はいらない」でデビューした、荒井由実18歳。 スーパーマンのTシャツを着たあっさりとしたあどけない顔の少女は、のちに80年代の日本の景色を次々と変えていくことになる。 八王子の呉服屋の娘に生まれ、小学6年生で横田米軍基地内の店で洋楽のレコードを買い漁るような早熟な子供だった。中学の頃は真夜中に家を抜け出し、当時の文化人たちが

    • スモールレディは死ぬまで光る💫🫶

      完全な光(799円)ディスカウントショップに、スモールレディ向けのファンシーメイクセットが売っていた。 これひとつでフルメイクができるらしい。女児の頃のときめきが私に蘇ってくる。私にとっての、女の子であることのすべては、スモールレディ向けのファンシーメイクセットで説明できた。それ以外特にないんだよな。本当に、今も、そう思っている。そしてそれを選んでいる。799円のファンシーメイクセットには、私の完璧がある。誰のためでもないメイク、心踊るきらきらに、スモールレディとして、とて

      • ひょっとして、クリエイティブかもしれない

        薄々、気がついていたのだが、私はクリエイティブらしい。誰かから何かをやっていいとか、チャンスが回ってくるんじゃないかとか、そういうことを考えていた。 人の手をとっては、これではなかったと怒ったり、いかないで欲しいとすがったり、わざと自分ができないふりをして相手より下手に出たり、そういうのはもうやめようと思った。世界に対して失礼である。 大人になるというのは、自分の光を完全に信じ切ると決めることと、その光に対して最後までそれに責任を持つということだ。 私は自分のことを面白

        • 「好きなものを大切にすること。」〜INGEBORGのファッションショーを見て〜

          INGEBORG(インゲボルグ)のファッションショーを見た。26年ぶりのランウェイショーだという。 INGEBORGというのは、デザイナー金子功の妻、金子ユリの本名のドイツ名だ。PINKHOUSEを経て、ちょっと大人の服をつくってみたくなった、という金子功が生み出したブランドだ。 (https://ingeborg.jp/about/) HPに掲げられた「好きなものを大切にすること。」という言葉は、私の胸を打った。 昨年、ブランドの40周年記念の展示会で見たランウェイシ

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        「返事はいらない」のは、呪いがかけてあるから ー松任谷由実 デビュー50周年に寄せてー

          ガチの話をして、ずっと自分でいる

          久々に会った友達と、夕食を食べた。 いろんなことがあったけど、一緒に過ごした時間というのは、それから時が経っても、変わらないものなのかなと思う。外側の変化に揺らがずに人生を歩んでいく、そういうのって、美しい。 これからしたいことの話、やってみたいこと、チャレンジしてみたいこと、面白そうなことの話がたくさん出てくる。そう、私はそういう自分が好き。好きな自分でいるために、自分の好きな言葉で語るために、私は生きていくことにする。 「ガチの話がしたかったんだよ!」と、彼女が言っ

          ガチの話をして、ずっと自分でいる

          部分的に聖なら、それを引き受けながら。

          幸せになるって、覚悟の問題なんだろうなと思う。幸せになりたいなと思う。思ってもいいと思う。自分の中を満たしてくれる何かを探している。自分の中を溢れさせる喜びを、求めている。確かな輪郭はわからず、手のひらをすり抜けていく。自分が暇だからこんなことを思うんだろうか。 danchu読みながら鎌倉から茅ヶ崎か葉山か逗子で暮らしたいな。それくらいのことしかもうやりたいこともない。なんとなく楽しくない。と、思ったら、鎌倉のお土産渡した友達からLINE来た。うれしい。 昔のバイト先に来

          部分的に聖なら、それを引き受けながら。

          魂目当てしかない

          昔、Twitterで、「『私のこと体目当てなんでしょ!?』と言うが、『魂目当ての方がこわい』」というツイートを見かけたことがある。 初出、こちらのツイートで大丈夫だろうか。見返したら2019年のツイートだった。その時から思っていたが、もう5年近く、私は「魂めあてしかない」と度々思っているということになる。 孫引きになってしまうが、雨宮まみの『女子をこじらせて』についた上野千鶴子の解説について、以下のようなツイートを先ほど読んだ。 2024年の私は、その時思った。「やっぱ

          魂目当てしかない

          美しさは私とラブドールのあいだに

          美しくないものを美しいと言っているうちに、どんどん自分がダメになりそうになっていくことに気がついた。何かを切り捨てて、先に進むことが、私の中の美学とかありたい姿が、誰かを傷つけることになるのではないかと常に心配していた。 幼い頃、私が見ていたテレビや小説よりも、大人になるにつれて、現実世界の生身の人間はよっぽど生々しく、重く、仄暗いことに気がついてきた。まあ、あえて、そういうものを見に行ったところはある。 その年で、どうして、こんなことになっているんだろうという人も何人も

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          他人の物語に含まれるリスクは、アクスタ何枚、チェキ何枚分、お酒何杯分なんだろうか

          人は物語なくして生きていけるんだろうか。 美しい、面白い、魅力的だ、素敵だ、賢い、才能がある…そういった引力に引きずられたり、引力を引き付けたりたりしながら、私たちは日々生きている。外界に出たら最後、人に見られたら最後、他人の物語に含まれる可能性、危険性を、私たちは持っている。それってとてもおそろしいことだ。 持っている強さは人に見せつけたいと思うこともある。もしくは自分が強くなって人に魅力的だと思われたいと思うこともある。承認欲求だってある。あるいは、自分自身の意思とは真

          他人の物語に含まれるリスクは、アクスタ何枚、チェキ何枚分、お酒何杯分なんだろうか

          手段として見られる会話をやめて、ほんとうを話したい

          大学1年生の頃、憧れだった大手予備校のスタッフとして人生初のバイトをしていた。志望校に合格し、倍率の高い大手予備校のスタッフの採用試験にも合格した私は、絶好調であった。 働いて1ヶ月経った頃の飲み会で、1年生の女子たちが、順に先輩の男性の中から推しメンを言わされることになった。それが、死ぬほど嫌だった。なぜそんなことで辞めたいのかもわからないと思うんだけど、こんなに、気持ちが悪い!と思うことは初めてだと思った。 だって、誰も、今ここにいる私、に、興味がないから。その時私は

          手段として見られる会話をやめて、ほんとうを話したい

          without you 〜20代前半を振り返って思うこと、まとめ〜

          こんなはずではなかったと、思っていませんか?私だけ?気がつけば、27歳になっていた。20代のほとんどを、ぷらぷらと渡り歩きながら過ごしている。 新人女優や新人アイドルやモデルのオーディションは25歳までであることが多いようだし、レオナルド・ディカプリオは25歳以上とは付き合わないらしいので、それはもう、ある側面の線引きからすれば、若くない、ということだ。 私はこれまでずっと若かったので、若くないくくりに入ると言うのに、びっくりしている。相対的に見れば全然若いんだけど。レオ

          without you 〜20代前半を振り返って思うこと、まとめ〜

          バムセは"ぶたくま"なの!-私のバイブル『ロッタちゃん』 を見に行った

          癇癪持ちの子どもだったからだろうか。幼い頃に『ロッタちゃん』を見せられていた。ここ最近、濁流のように流れてくるコンテンツや情報に辟易しており、自分のルーツになっているような作品を見返した方がいいのでは?と思うようになった。もう先を追うのも辛くなってきたし、人間の好みなんて、そう変わるものではないので、自分の生育に深く影響を与えた作品に積極的に会いに行くことにした。そう、それが映画『ロッタちゃん』である。実に24年ぶりの劇場公開である。 『ロッタちゃん』はスウェーデンで199

          バムセは"ぶたくま"なの!-私のバイブル『ロッタちゃん』 を見に行った

          自分にとって大事なものとまた会えて嬉しかった

          年末、昔地元にあったイタリアンに行ってきた。昨年の6月に、平塚に新店舗を構えたという。 私たち家族はその店に、よく行っていた。「サルティンボッカ」という名前のお店で、当時はビルの1階にあった。少し階段登って入るから2階といえば2階だったかも。10段もないような階段と、階段を上がったところにあるベンチに何組ものカップルや家族や友人たちが並んでいたことを思い出す。 2年ほど前に父と行こうとしたら、閉店していた。愕然とした。子どもの頃から通っていたお店で繁盛していた場所が、二度

          自分にとって大事なものとまた会えて嬉しかった

          私的な執着と世界観を担ったまま大人になった

          痛みを感じるのは、大切だったからだ。子供の頃、祖母や従兄弟たちと大人数で泊まりがけにディズニーランドに行った日の帰り、ワールドバザールの出口を出た後、寂しくて泣いてしまった。 大人になってから親族との関係も希薄になった。だけど、そのあの瞬間は、帰りに寂しくて泣いてしまうほどあたたかくて、楽しかった。 役立たない個人的なことに、極めて強い執着をすることは、現行の資本主義とは極めて相性が悪いようだった。愛には執着という側面があり、個人的な愛は反社会的な意味を持つことがある。

          私的な執着と世界観を担ったまま大人になった

          時代の当事者性を引き受けるということ〜若松宗雄 『松田聖子の誕生』(新潮新書)感想〜

          1980年、時代の歯車が動き出した 松田聖子というアイドルが、時代の真ん中に躍り出たのは、1980年の幕が上がる、まさにその瞬間だった。 CBS・ソニーの新米プロデューサーだった若松宗雄が、福岡の久留米から連れてきたのは、後に80年代の命運を託されることになる、1人の少女だった。 彼女の名前は蒲池法子(かまち のりこ)。若松が典子の声を初めて耳にしたのは、1978年。CBS・ソニーと集英社の共同主催で開催されたミス・セブンティーンコンテストに応募された一本のカセットテー

          時代の当事者性を引き受けるということ〜若松宗雄 『松田聖子の誕生』(新潮新書)感想〜

          人を見捨てることが逮捕なら、人を見捨てないことで金をくれ

          「同情するなら金をくれ!」 というのは、ドラマ『家なき子』で、子役の安達祐実が繰り返し口にしていたセリフである。 ドラマ未視聴なのであまり確かなことは言えないが、日に日にその言葉が切実だと思う。 85歳の母親が足の骨を折って自宅で倒れてたのを放置したら、59歳の娘が逮捕されたというニュースを見た。 「あぁ、この娘の気持ちが、わかる。」と思った。 私が、その人の気持ちを代弁しているのかはわからないし、この事件を借りて私は自分の主張をしたいだけだ。 私の妄想かもしれない

          人を見捨てることが逮捕なら、人を見捨てないことで金をくれ