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屋台からはじめるまちのつくりかた。とよなか地域創生塾第7期「DAY4 モノをつくってみよう!」開催レポート

「最初から完成させなくていい。 アップデートを基本にやっていくことが大事」

何か新しいことをはじめようとした時に、「失敗したらどうしよう」というような不安から、結局一歩踏み出せなかった経験がある人は少なくないのではないでしょうか。

そんな中、「実験してみる感覚でどんどんアウトプットしていったほうがいい」と語る講師の今村さん。

その言葉が、今村さん自身のどのような経験から生まれているのか気になるところです…!

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早いもので、とよなか地域創生塾は第4回目を迎えました。

「地域」を「創」り「生」かしていくための考え方と仲間が得られる、豊中市主催の連続講座「とよなか地域創生塾」。全10回の約半年間をかけて、具体的にプロジェクトを実行できる「知」と「仲間」を創っていき、最終的にはマイプロジェクトを発表します。

コースは2つ。イベントの企画運営やメディア制作・活用をテーマにした「イベント・メディアコース」、公園やお店、拠点などをどうつくり、どう活かすかについて考える「空間活用コース」です。この2つのコースから、それぞれの塾生が希望のコースを選んで学んでいきます。

空間活用コースDAY4のテーマは「モノをつくってみよう!」。

前半は屋台を活用し、まちなかでの出店や公共空間で使いこなす実験をされてきた今村さんにお話しいただきました。後半は、実際にミニ屋台を作るワークショップを実施。

終わってみると、屋台というモノの使い方だけではなく、屋台を媒介にして実験してみる「屋台マインド(精神・魂)」が大事というメッセージが今村さんのお話には込められていたように思います。

「屋台マインド」って?と思った方にも伝わるように、細かい内容も交えながら当日の様子をお伝えするので、ぜひ読んでみてくださいね。

文:中田龍弥(なかた・たつや)

新卒直後のクビが人生の転機に

講義の前は恒例となりつつある近況報告チェックインからスタート!

「こないだのイベント参加されてどうでした?」などの会話が生まれているのをみると、まちと関わる参加者の方々が徐々に増えたように感じます…!

そして、今回も進行を務めるのは、とよなか地域創生塾第7期の企画運営を担う株式会社ここにある代表の藤本遼(ふじもと・りょう)です。

何があってそんなに笑っているのかは謎です笑

屋台を使って多様な社会実験をしている今村さん。
そもそも屋台をテーマに活動するきっかけはなんだったのでしょうか。

<今村 謙人(いまむら けんと)カモメ・ラボ 代表 1985年静岡生まれ。新卒で入社した設計事務所を1年でクビになり、その後内装や工務店、飲食店やホテルの住み込みの仕事をし、韓国人の妻と結婚。1年かけて世界一周新婚旅行に行くなどした後に、カモメ・ラボを設立。現在は大阪を拠点に、屋台での営業や屋台づくりのほか、社会実験などのプロジェクトやイベント企画など幅広く手掛ける。新たに「屋台の学校」をスタート。編著『日本のまちで屋台が踊る』刊行。

実は今村さん、新卒で入った設計事務所で“クビ”になった経験があるのだそうです。さすがにFacebookでは「クビになった」とは言えずに、「仕事辞めました」という投稿をしたら、京都の知り合いの建築の方の「現場で汗をかけ」というお誘いが。その誘いをきっかけに、内装を自らつくるプロジェクトで半年ぐらい住み込みの活動を開始。その後は、東京の飲食物販の会社でお店づくりやマネージャーの仕事を経験されたようです。しばらくして、新婚旅行で世界一周に行き、そこで世界の姿に刺激を受けます。

ですが、世界の中には刺激が多すぎておなかいっぱいに。「インプットしたらアウトプットしないと!」という衝動に駆られ、現地でできることを考えた結果、メキシコの路上で屋台をやることにしたそうです。座卓を持って路上に座って、焼き鳥をやってるというシンプルなやり方から始まりました。

究極のスタートアップとしての屋台

「実験としてはじめた屋台が結果的によいやり方だった」と話す今村さん。

人も場所も変化する中で、失敗したら修正すればいいし、ダメならやめちゃえばいい。気軽に未来をつくれれば街もおもしろいし、その循環をどんどん広げていくことでさらにおもしろくなってくる。新卒で入社した会社をクビにはなったものの、このやり方ならメキシコで生きていける兆しが見えたのだそう。屋台はスモールスタートできる究極のスタートアップなのかもしれません。

日本で屋台をやっていると警察に注意を受けることもあるそうです。そのため、橋の上で営業していて注意されたら移動をするスタイルに。同じ場所でやり続ける必要はなくて、柔軟に移動しながら商売ができるところは屋台ならではのおもしろさですね。

また、このような屋台での活動をしていると新しい知り合いがたくさんできるのだそう。何度か屋台を見かけていた人が「この前は行けなかったけどちょっと今日は勇気を出してきました」と寄ってくれたり、近くのマンションに住む人が「窓から見たらやってたから来ました」とわざわざあそびに来てくれたりすることも。

すでにつながりのある人だけではなく、本来出会うはずのなかった人と知り合えるのが路上で屋台を出す醍醐味なのかもしれませんね。

人がまちをつくる

人とのつながりを大事にしながら活動されてきた今村さん。
そこには屋台を屋台で終わらせない、まちづくりへの想いがありました。

「町を変えるのはルールではなく、間違いなくまずは人だと思っていて、まず活動があっておもしろいからそれをよりよくやってもらうためにルールをつくる。チャレンジとか実験のない町は元気がなくなって退屈になってしまう。新しい活動が生まれる場所は、人がどんどん移ってきてどんどんおもしろくなっていく」 

屋台づくりワークショップを各地で実施している今村さんですが、単純に屋台が増えたらいいというよりも、屋台に限らずまちなかで自分のやりたいことが気軽にできたらいいなと思って活動しています。それをイベントとして続けるのではなく、日常の延長でさらっとやってみることができる。

そうして日常的に活動を続けていると、思いがけない形で次の活動に繋がっていきます。これは「誰かのため」というものだけではなく、純粋に楽しいから勝手にやっている感覚に近いのだそう。

社会課題からのスタートではなく、個人の興味関心や「やってみたい」想いから始まる活動もあるというのは、これまでの地域創生塾でも大事にしてきた考え方です。だれかが楽しく活動していたら「なんか楽しそう!?」と、なんだか関わりたくなりますよね。

屋台を日常的に活用した事例として、“意外な人”が変えたまちの姿も紹介してくださいました。

「診察は屋台から」のお医者さん

今村さんの資料スライドから引用

こちら、店頭に立っているのはお医者さん。お医者さんが屋台!?と衝撃的ですよね。でも実はこれ、ただの屋台ではないんです。 屋台でもあり、病院でもある。そこには納得できる理由がありました。

この活動の発起人は家庭医である孫大輔(そん・だいすけ)さん。病院勤務をする中で、患者さんが来るのを病院で待つことに対して限界を感じたことをきっかけに活動をはじめたそうです。

病院には基本的に体調などが悪くなった人しか来ません。わかりやすい症状が出てから、ようやく病院にやってくるという構造に違和感を感じて、街に出てみる手段として屋台を使うようになったのだとか。

お医者さんの肩書きをはずし、屋台を引いて街でコーヒーを振る舞ってみる。その場では、医者と患者という関係性ではなく、同じ街の人としていられる。こうしてフラットに関わっていく中で「最近、体の調子どうですか」という会話も生まれます。
なんだかそんな風にフラットに話せる関係の方が「実は...」と、本当に困っていることや隠れた健康面の変化が見えてきそうな気がしますね。

アップデートを前提に、まずやってみる

講義では、今村さんの事例やその他おもしろい事例をたくさん伺いました。
少しハードルが高く見えてしまうかもしれませんが、「最初から完成を目指さなくてもいい」というメッセージが随所に散りばめられていたように思います。

「アウトプットは自分のできる延長線上でやることが大切で、無理しちゃうとめんどくさくなっちゃってやりたくなくなる。いいモノをつくるのは大切ですが、やりたくなくなっちゃうっていうのは一番良くない。だから、最初から 完成させなくていい。アップデートを基本にやっていくことが大事です」

計画を綿密に立てるのも大事ですが、先に「やる」状況をつくってしまう。今回の講義でも実際に屋台をみんなでつくります。みんなでつくることで、「こんな風に使えそう」「ここを変えてみてもいいかも」とアイデアを出し合い、アップデートしていく好循環が生まれてくる。最初から完成のハードルをあげずに、ブラッシュアップしていく考え方(やり方)を身につけると、多様な人が関われる余白も広がっていくようです。

質疑応答の時間には、大学生の参加者からも質問が。

「よく見かける屋台って鉄などの金属だけど、木材を使っているのはどうしてですか?」

実はここにも今村さんなりのこだわりがあったんです。

「金属だと普通の人は加工がむずかしいでしょ。木だと切ったりしてつくりかえられる」と話す今村さん。素材の選び方にも自由にアップデートできる仕掛けがあるのは圧巻ですね。

講義はここにて終了。ランチをはさみ、午後からは実際に屋台づくりの時間です。

屋台をみんなでつくる

会場に運び込まれているのは、木材、設計図、そして工具たち。
塾生のみなさんは2チームに分かれて2台の屋台をつくっていきます。

様々な大きさに切りそろえられた木材
屋台の設計図に加えて、ビスやインパクトドライバーなどの工具たち

工具の扱いに慣れている人も、初めてドライバーを触る人もいる中での作業。「この部分やってみる?」という会話を大事にしながら作業を進めていきます。

みんなで木材を押さえたり、バランスを見たりしていると、チームの一体感が少しずつ生まれてます。
途中で職人さん(ものづくりが得意な塾生)による厳しいチェックが入ります(笑)

作業開始から2時間半以上が経過し、だんだんと屋台っぽさが出てきました。

クロージングの時には、早速屋台を使ってみました。

約3時間の作業を経て、ついに完成!今後の講義でも使えそうですね。

最後は、講義とワークショップを踏まえてグループにわかれて振り返り。

今回製作した屋台を自分が使うとしたら何にしよう?という話題に。

中には、「とよなか地域創生(そうせい)塾」にかけて「とよなかソーセージ」をつくって販売しようかと話し合うグループも。2024年2月18日には、今回の会場である庄内コラボセンターショコラでイベントがあるようなので、ここで使ってみると何か生まれるかもしれませんね!

次回はDAY5「余白の時間」

DAY3からここまで「イベント・メディアコース」と「空間活用コース」の2チームにわかれて、合わせて4名のローカルで活動する講師の方々にたっぷりレクチャーしていただきました。折り返しを迎えるDAY5は、【余白の時間①】「これまでの学びを振り返って今後のアクションを考えよう!」ということで、これまでの学びを振り返ります。

また、振り返りに加えて、残りの約3ヶ月間の中でそれぞれどのようなアクションをしていきたいか、についても深めていく予定です。

引き続き「とよなか地域創生塾第7期」の動向のチェック、お願いしますね〜!

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