エクスペリメンタム クルーシス
彼に出会ったのは つい先日のことだ
そして 私は今日大きな喪失感とそれが恋であったと知った
昼下がり 暦上では真冬だって言うのに 私は背中の蒸れる様な感覚で目を覚ました
乾燥はして喉はカラカラそれでもベッドは少し湿気っていた それはまた私の分泌したもので 寝汗とはまた違ていた そして 目に映る ガラスを突き抜ける低い太陽といつもの部屋には存在しないはずの 彼 の姿
寝起き1杯目の水分にジャスミンティを差し出してくる辺り 私は彼がまったくもって読めなかった 彼曰く好きなようにしてと昨晩私はいていたらしい とは言え私の喫茶グッツを漁りまた随分と渋いところをチョイスしたものだ
掛け布団をどけ ぐっと体を起こす 足を外に放り腰を掛けた状態で
氷で冷えた ジャスミンティを受け取る アイスにしてもしっかりと香りは出ていた
3回分の嚥下をし 窓際の縁にコップを置く
彼はそれをみて 私に目を移し 腕を広げ 私を抱いた
優しいフルーツ ジャスミンティ 深いところからはウッディ アクセントのスパイス どうにも私を虜にした匂いらしい 離れることが出来ない
どうして かがわからない 拒絶することが出来ない ただただ心地の良いリフレインが私を支配している きっとこの抱擁が終われば 彼ともう会うことは無い
だから 離せない いかないでと この二分半にも満たない時間で何回願ったんだろうか それでも 彼は終わりを知っていた 私の事も知っていた 一方的に
ただ 一方的に 私たちは求めあい すれ違った そんな表現もまた違う
この一晩と十分で私達は理解しあい そして
もう一度目が覚めても残っていた
愛された感覚 そして許された感覚 そして手放した感覚
彼の匂い どこまで行ったって 私は私で染まることがあっても
私はキャンパスに過ぎない でも まっさらでは無いと思える今があるから
生きていける気がした
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