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【参加レポート】とやま帰農塾2022 「南砺塾」(2022/7/9~7/10)

とやま移住note管理者スタッフの「S」と申します。
富山県主催、NPO法人グリーンツーリズムとやま企画の田舎暮らし体験プログラム「とやま帰農塾」をご存じでしょうか?

今年度は9つの塾が開催予定。そのうちの一つ、田舎暮らしと農業体験ができる「南砺塾」に管理者「S」が1泊2日で参加してきました。

★南砺塾の主な体験メニュー★
・無農薬栽培水田草取り
・麻布を紡ぐ・織り体験と麻のお話
・地域交流会
・棚田体験
・梅の収穫
・里芋の芋茎取り

一日目【開講式】

福光温泉の麻布ギャラリーにて塾長の杉森さん、サポートの西井さん、県職員の皆様よりご挨拶。
塾生5名より、一言ずつ自己紹介を行いました。

【無農薬栽培水田草取り】

福光温泉から歩いて約30分の小院瀬見(こいんぜみ)地区の水田へ。
こちらの地域では農薬や化学肥料を使用しない「自然栽培米」の生産に取り組んでいます。

田んぼを管理している堀さんから自然栽培のお米作りについてお話を伺い、順番に「ころがし」という昔ながらの田んぼの草取りを体験させてもらいました。

田んぼに入り、思っている以上に足が泥から抜けにくく歩きにくい感触にドキドキしながらの草取り体験。皆さん真剣な表情で作業を進めます。

続いて、電気柵を設置します。山や木々に囲まれたこの地域にはイノシシやカモシカなど野生動物がたくさん住んでいます。せっかく育った作物を動物たちに荒らされないよう、電気柵を設置するのは大切な作業の一つ。

等間隔で支柱を立てます。
皆さんで「この間隔でいいかな?」と、話し合いながら設置していきます。

小院瀬見地区は小矢部川の上流地域にあり、今では4戸となった限界集落。
地域のこと、昔は小学校があった跡地、唯一残っている神社の鳥居は昔この地域が採石を産業としていた時の名残。この鳥居は全て人の手で積み上げられたものなのだそう。

つい数年前まで人が住んでいて今は空き家のお家の前を通り、人が住まなくなると途端に畑は雑草だらけになり、家も荒れるということを知りました。
家主がいなくなり、寂しそうに佇む空家を見て何とも寂しい気持ちになりました。
地域のこと、道端に咲いている植物の名前や春には山菜が採れること、日々の小院瀬見地区の生活について西井さんが丁寧に教えてくださいました。

【麻布を紡ぐ・織り体験と麻のお話】

「越中福光麻布ギャラリー」にて麻布の機織り体験と麻の歴史や文化を学びました。
かつて、地域の主産業であった福光麻布を復活させようと、南砺市内で修復するプロジェクトが進められています。福光麻布の歴史は古く、江戸時代には加賀藩の御用達となり、大正時代までは城端の絹とともに福光の麻布が地域を支えていました。しかし、福光麻布は昭和天皇の大喪の礼での供給を最後として廃絶してしまったそうです。

機織り機は、昔使っていたものは何一つ残っておらず、唯一残っていたわずかな映像と写真、地域の方の記憶などを頼りに、「いざり機」を復刻し、当時の道具を保存・展示して麻布の再活用と次世代へ繋げる活動をしています。

機織りの仕事の多くは糸を紡ぐことから始まります。
苧麻(ちょま ※イラクサ科の多年草)、大麻を使い、小指の爪を使って繊維を一本一本割き、それを繋ぎ合わせて糸ができます。その糸を機織り機にセットができたらようやく織ることができます。
織る作業は作業全体の約一割なのだそう。一つの織物を作るのにこんなにも手間がかかるとは思ってもいませんでした。

一つ一つ丁寧に織り上げます。

塾生の皆さんは慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、コツをつかめば織る作業が楽しくなってくる様子。一時間ほどの体験を終え、「集中して無になる時間がすごくいい」「頭で覚えるというより体が覚えてしまえば楽しい作業でした!」などそれぞれの感想を聞くことができました。

【地域交流会】

夜は先輩移住者や地元の人々との食事会を兼ねた交流会。

ごはんを食べながら皆さんざっくばらんにお話をしていました。

お互いに自己紹介をしながら、富山へ移住を考えている塾生からの質問に対し、先輩移住者が自身の体験談を失敗談も含めながら楽しそうに話され、皆さん真剣にお話を聞かれていました。農業についての質問に対しては、南砺市吉見にて自然栽培でお米を作っている「なべちゃん農場」の渡辺さんや塾長の杉森さんが農業を行う上での大変なことや苦労話を話してくださるなど、自然豊かな地での暮らしや住まいについて様々な話題が交わり、終始和やかなムードで有意義な交流会となりました。

二日目【体験ハウスにて朝食づくり】

塾長自ら大根菜で「よごし」(※1)を作ってくださいました。
一日目に作業をした田んぼで出来たお米、地元で獲れたイノシシ肉で作ったベーコン、ローストイノシシ、新鮮な野菜、手作りの梅干し、春に採れたフキノトウで作ったフキ味噌、産みたて玉子の目玉焼き、塾長が育てた里芋のつる「ずいき」(※2)がたっぷり入った具沢山お味噌汁。全ての食材が地元で育て、作られたもの。自然栽培で作った米や野菜は、甘くて旨味がギュっと詰まっていました。イノシシも柔らかくて臭みもが全くない絶品。皆さん「美味しい!」と声を揃え、もりもりと食べていました。

盛りだくさんの食卓

※1「よごし」は、ゆでた野菜を細かく刻み味噌と和えて炒めた一品、砺波平野を中心とした地域で日常的に食されている郷土食。
※2「ずいき」は里芋の茎。皮をむき、天日で干し、保存食として用いられています。

【棚田体験】

志観寺集落へ移動し、棚田が広がるこの土地では水田ビオトープ(※3)作りを体験しました。
稲を植えていない田んぼには雑草がたくさん生えています。先ずは一人一本、鎌を持って雑草刈り。慣れない作業に苦戦しながらも皆さん黙々と草を刈り、約一時間の作業を終え、達成感に満ち溢れていました。

蒸し暑い中、皆さん真剣に草刈りをしています。

※3「水田ビオトープ」とは、休耕水田に常時湛水し、そこで様々な生き物が生息できる場所のこと。

「このあたりに菖蒲を植えようか?」と、話し合いながら植物を植えました。

草刈りの後は、いよいよビオトープに菖蒲と蓮を植えます。粘土質の土は重たく、スコップで掘るのも一苦労でしたが、何とか無事に植えることができました。
今回植えた菖蒲と蓮は根を張り、来年の5月に菖蒲、7月頃には蓮が見事に花を咲かせてくれることでしょう。
「来年の今頃ぜひ見に来られ!」と塾長。

作業を終え、ビオトープ作りを教えてくださった志観寺集落の高倉さんが「棚田の上部に行くと、棚田と散居村の風景が綺麗だから見ていって」と案内してくださいました。

眼下に広がる風景に「長閑な風景ですね」「この景色を見ているだけで落ち着きます」など皆さん感動されていました。

【梅の実の収穫】

この風景の背後には梅の木があり、そこにはたわわに梅が実っていました。
高倉さんから、「この梅は収穫予定がないので、皆さんお土産にどうぞ採っていってください」と嬉しいお声が。急遽、梅の実を収穫することになり、皆さん収穫する喜びで笑顔がこぼれていました。
ほんのわずかな時間の収穫体験でしたが、袋いっぱいになった梅の実を見ながら、「何を作ろうかな?」とそれぞれ思いを巡らせていました。

【里芋の芋茎取り】

塾長が手掛けている里芋畑に行き、株のまわりに出たわき芽をかき取る作業を行いました。わき芽を早いうちにかき取らないと、芽がどんどん伸び、細長く質の悪い芋になってしまうのだそう。
一人一本の鎌を持ち、広い畑を手分けしてかき取り作業を行いました。

【屋敷林について学ぶ】

お昼ごはんを食べながら、塾長が住む古民家を紹介された映像を鑑賞。屋敷林について、古民家の維持について、暮らしのことなど映像を通じて学びました。

お昼ごはんは、ご近所の農家のお母さんが作ったお弁当。
南砺市名物の里芋コロッケを始め、地元で採れた野菜が使用されています。

【閉講式】

そして最後に一人ずつ挨拶、感想を述べ、二日間を振り返りました。移住について一歩踏み出せたと感じた人、たった二日間では物足りないと感じた人、「早くこの地に住みたい」とより移住への思いが高じた人。様々な感想を述べました。
最後に皆さんそれぞれ帰路につくとき、「帰りたくない!」と涙を流す場面も。その様子を見て塾長は「またいつでも来られ。待っとっちゃ。」と優しいお声をかけていらっしゃいました。

【感想・まとめ】

過疎化が進む地域や暮らし、農作業のこと、地元の方たちの目線で語られるお話はなるほどと思うこと、現実を知り、寂しく感じることなど、様々な思いが募った2日間でした。
車がないと移動するのが大変だという地域でもあります。不便だと感じることもあるそうですが、何より地域の皆さんがお互いに声をかけながら助け合い、一体となって暮らしていることに温かさを感じました。
知れば知るほど奥深い田舎暮らし。農業体験をしたい方、田舎暮らしに興味のある方、ぜひ南砺市小院瀬見地区、太美山地区、志観寺地区を訪れてみてはいかがでしょうか。

「とやま帰農塾」の情報や、その他の移住関連イベントなどの情報は以下のサイトやSNSをご確認ください。

NPO法人グリーンツーリズムとやま「帰農塾」

富山県移住・定住促進サイト「くらしたい国、富山」

富山県就農ポータルサイト「とやま就農ナビ」

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