【連作 ｂ】口にしない言葉

この作品は連作になっています。
もしもお気に召したら【連作  a 】出さない手紙 もどうぞ。

あなたの笑顔が見られて良かった

電話の声が　いつもと違った　　　　　　
ちょっと教えてもらえたら　なんて

また自分でなんとかしようと
思ってたでしょ

あなたは助けを　滅多に求めない
私のことは　自分を後回しにしてでも
助けようとするのに

そんなあなたを
私が放っておく筈ないじゃない
あなたの電話を切って即　父に頼んだ

二日後
「今から出るから」
あなた随分驚いてたね

電話で話が聞けたらいいとか思ってたでしょ
私は悪戯が成功したような気分になったわ(笑)

父の話を聴いているうち
どんどん笑顔になって
ほら　やっぱり来て良かった

あなたは自分がしたことは少なめに　
してもらったことは大きく受け止める
昔からそう

そんなあなたが大好きだけど
簡単には弱音を吐かないあなたが心配で
時々　小言を言ったっけ

「あなたは全部お見通しね」と苦笑い
だけどそれはあなたの方

あなたがくれる言葉は　私には魔法
何度も助けられた　何度もね

でもあなたを尊敬していること
あなたをお手本にしたことは内緒(笑)

私たちはあまり似ていなかったけど
似ていないから良かったのかも

あなたのように　素直に気持ちを伝えられたら
そう思うことも　あるけれど
私は照れくさくて　ちょっと無理
でもそれも私だと
あなたは解ってくれているから大丈夫

帰り際　やっぱり来た
御車代だなんて　もう！

父にも念を押していた
断固拒否と(笑)

”これくらいのこと　なんでもないわよ”
”遠慮なんてしないで”　
”役に立てて嬉しい”　
こんな場面の言葉はいろいろあるけど

「友達でしょ」
ひと言で片付けても　あなたにはきっと通じてる

ほら　あなたの方から遊びに来ると連絡くれた
この間は父ばかりが話していたからね

嬉しいと　楽しみにしてると
素直に言葉にする代わりに

「あなたの好きなもの　たくさん用意して待ってるね」