レイ へ    #1

親愛なるレイ へ


 やぁ、レイ。何とはなしに誰かに手紙を送ろうと思ったんだけど、君ならこういうことが好きだろうと思って、君に宛てて手紙を書くことにしたんだ。驚いた?
 誰かに手紙を書きたかったのはね、作品が出来上がらないからなんだ。僕は人生においてたった一つの作品しか作れない気がしてくるよ。編んでも編んでも同じ模様で、そのまま折り返し、また編み始めるんだ。終わりがないよ。報われない。
 ただずっと寂しいを書きたいんだ。だけどこれの終わりを僕は知らない。想像するにも、都合のいい安っぽいエンディングしかなかったんだ、笑えるよ。
 君はどうなの、レイ。この頃随分といい曲を作っているみたいだけれど。君は一向に僕にどんな名前で音楽を作っているのか教えてくれないから、君との会話で察することしかできないよ。ただ、楽しそうだね。よかったよ。
 ところで、最近し始めたゲームの話をしてもいい?とっても面白かったんだ!僕の選択によってお話が変わっていくタイプのゲームなんだけどさ、僕はバッドエンディングだったんだ!このエンディングになるのはちょっと珍しいらしくて。ネットの掲示板でそのこと知ったときには嬉しくなっちゃった!君はこういうのに興味がないみたいだから寂しいけれど。君もこういうゲームなら楽しめそうだからやってみなよ、こんど別の何でもいいから僕とゲームしようよ!君のために僕がいくつか選んできてあげるよ!僕の家においでよ!
 ひきこもりの僕に、僕に聴かせてくれなくてもいいからさ、歌を作ってくれないかな。「僕の曲」があるって最高に素敵なことだと思うんだ。それだけで、生きていけるような気がするよ。それだけでもいいような気もする。何もない生活も、幸せに向かえそうな気がする。
 レイ、君の作品の事ずうっと探してるからね!絶対に見つけてやるんだから!

レイ。君のことを恨むよ。
 

                                                                                        蛍石 より

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