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書評:「スイッチを押すとき」

ひとことテーマ

「親子愛と死の美しさ」

親が子を想う気持ちと子が親を想う気持ちの強さは、時を経ても変わることがない。
そして人が一番光輝く死の瞬間。この二つが結び付くことによる美しさが涙を誘う。

before after

before

「自殺」を取り扱う作品なので、病みそうだな~とか、怖いのかな~と思っていた。
死の描き方が上手な人だから、どんな内容になるのかは楽しみ!

after

まじめちゃくちゃ泣いた。
死を取り扱った作品だけど、気持ちが滅入るとかもない。
死生観が変わった。
こんなにも死が美しく表現できることに感動した。

感想

読み終わったときには、
わー!まじかこの展開はやばい!
といった感じで、予想外な結末。
ただ感動のストーリーというだけでなく、
驚きのラストを残してくれて読み応えがたっぷりでした。

そして、この本の印象はとにかく考えさせられること。
自殺をテーマにしているからこそ、
自分だったらどうするだろうかと、
日常では考えないことに意識を向けることになる。なので必然的に死と隣り合わせの緊張感の中で、
今の自分だったらどうするだろうかを考えることになる。
だから感情移入しすぎてボロボロ泣いてしまう。

裏テーマ的に扱われている家族愛、親子愛が何より切ない。
国VS親子の構図がとてもいい。
いつまでも、どれだけ離れようとも、
親は親であり、子は子なのである。
そこには切っても切れない愛がある。
なので、この愛を遮る国の施策に怒りを覚えるとともに、それをゲーム感覚で眺める国にも怒りを感じる。
そんなことよか、家族って大切だな。
今ある日常が突如として非日常に変わることもあるからこそ、今できることを、いつかが来るまでにやっておきたいと思いました。

また、何度も書いているように死の描写がとても美しく表現されている。
それは、この先に生きる希望がないから死ぬ。
でもそこに何の悔いもない。
だからこそスイッチを押す。
満ち足りた表情で死を受け入れるところが、
読み手の共感を誘う。
死ぬことは悲しいけれど、この最期ならよかったのかなと思ってしまう。
そう、読み手も死を受け入れるのである。
なので自分もこんな風に満足して死にたいなとか、どんなふうに逝くのが幸せなのだろうかと考える。

なぜ死が美しいのか、いつ、どのように、どこへ向かって、なにをなして、死のうか。
どう生きるかではなく、死というゴールに向かって、どう死にたいのか。
ネガティブな自分にとっては考えやすい。
これだけはしたくないとか、誰にも優しくないやつだったとか言われるのはごめんだし。
その最終地点に向けてどのように進んでいくのかを考えさせられた。

ちょうどこれからの人生どうしようか節目に立たされているように感じる。
本当にこのままでいいのだろうかと、死に際に後悔しないためには今どうすべきなのだろうか。
一歩行動しようと決意できた。

まとめ

死に対するイメージの変わる作品。
命に対して非情に扱っているともとれるが、その命1つ1つに輝きがあり無駄なものなどないということを教えてくれる。
今どう生きるかということ以上にどう死に向かって生きていくかを考えさせてくれる一冊でした。

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