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インフレ時代の到来に向けた投資戦略(実践編)

以前に書いたインフレ時代の投資戦略について
・iDeCoやNISAなどの制度を活用してなるべく早く多くのお金を投資する
・不動産、ゴールドなどインフレによって価値が上がるものに投資する
とポイントを最後に紹介しましたが、今回は実践編としてもう少し具体的に書いていきます。

インフレ時代の投資戦略のポイントは「現金」の扱い方です。

デフレ時代:現金が王様だったので一定額保持(貯金)することも有効だった
インフレ時代:現金の価値がより下がっていくため、貯金による利息<インフレ率の場合持てば持つほど損をしてしまう

こういった違いが出てきます。

そもそもデフレ真っ只中の時代であっても投資が推奨されていたのは資本主義経済である限りインフレは回避できない仕組みのものであるため、政策等の理由で特別な環境となっている日本であっても他の国と同様に投資をしないと資産が目減りしてしまうのが理由です。

<現金の役割>

現金は交換・決済手段として機能します。債券や株や不動産を持っていても自動販売機やコンビニで買い物ができないですが、現金であればすぐに交換可能です。

債券や株式を別のものに替えたい場合、一旦売却し「現金化」する必要があるのは価値交換の材料として現金が非常に優れているためです。ゴールドやシルバーは一応交換・決済の機能があることになっていますが、日常の買い物などをゴールドやシルバーでは行えないことから流動性において現金の方が優位であることが分かります。

また緊急事態、不測の事態が発生した際にも現金は有効です。いざという時のお金というものです。

通常の経済活動の範囲内において交換・決済の機能を十二分に発揮するのは現金であることから、生活防衛資金やいざという時の備えと称して「現金をストックする」ことが投資を行う際の前提となっています。
(ここでは、戦争や銀行預金封鎖など「通常と異なる事態」は考慮に含めないものとします)

<現金の考え方を整理する>
投資を行うにあたり頭を悩ませるものの1つが「現金の扱い」です。
・いざという時にお金がなくなってしまうと困るので現金は幾らか持っておきたい
・投資額が少ないと資産がなかなか増えないからなるべく多く投資したい
この2つの葛藤に悩んだ方も多いと思います。

インフレ時代が到来すると現金をそのまま持っておくだけで価値がより下がってしまいます。

例えばいざという時の備えとして300万円貯金していた場合、投資を開始した時点の300万円と10年後の300万円では買えるものの総額が変わっている可能性が高く、恐らく10年後の300万円のほうが価値が下がっているものと思われます。しかし、明日急に300万円必要になった場合、この300万はとても価値があるものとして光り輝いて見えると思います。

決済資金含めての現金ゼロは日常生活に支障をきたすことは明白なので「決済手段としての現金」はいくらか確保しないといけないことが分かります。一定額生活費や日常を平穏に過ごすための資金として確保した上で「いざという時の備え」をどうするかを考えることがインフレ時代の投資戦略のコアとなります。

<新NISAのルールを活用した備え方>
新NISAは
①生涯投資枠が大幅に拡大
②投資したら生涯非課税(非課税期間の制限解除)
③売却した場合、翌年投資可能額が復活する(年間投資上限に注意)
という新しいルールが加わりました。

1番の特徴は③です。これまでは一度売却するとその枠は復活しないので売却判断には慎重を期さないといけなかったのですが、新NISAでは翌年復活するため一定額の範囲内であれば「NISA投資分を売却して現金化することで備える」戦略が成立します(損失が出ている場合、損失繰越が認められない点には注意)。

これにより年間360万まではNISAで購入できる商品に現金を預けるイメージで投資しておき、「いざという時の備え」と見なすことができるようになります。

いざという時の備え(生活防衛資金)はその事態に陥らないのが1番ですが、単にストックする(あるいは定期預金など元本保証商品に移す)よりは時間をかけることで資産の拡大を図るようにした方がインフレに対抗できる措置としては有効です。

整理すると
・リスク許容度の範囲上限で投資をしつつ
・生活費、決済手段としての現金のみ確保する

ということです。

<「損失」が気になる場合どうする?>
とはいえ投資は投資なので、時間をかけても利益が得られない可能性はあります。本質的には投資において足元の損失は気にしてはいけないのですが、とはいえ心理的にはマイナスとなるため現金を投資商品に振り分ける比率を増やすことに抵抗感がある場合は
・個人向け国債
・外貨建てMMF

など、元本が保証されていていつでも引き出し可能な商品への投資も考えておくと良いと思います。

インフレ環境下では債券は価値がマイナスとなるため、債券への投資は慎重に判断するべきですが、現金をそのまま持っているよりはマシなので慎重に進めたい方は一考の余地ありです。

<現金を4つの箱に分類する>
最後に投資戦略を決める際に、
・自分が保持している現金

・これから手にする現金
を以下の4つの箱に分類するイメージをつけておきましょう。

①決済の箱
②資産拡大の箱
③資産保全の箱
④大化けする可能性がある箱(びっくり箱)

①決済の箱の中の現金は
・生活費
・足元使うことがわかっている資金

の支払いに使用します。生活習慣の見直しや節約によってこの箱に入れる現金を減らすようにするのも良いでしょう。

②資産拡大の箱の中の現金は
・株式
に投資します。iDeCo・企業DC・NISA制度はこの箱にある現金を適用します。この箱に現金を入れれば入れるほど資産が拡大していきます。②の箱は配当を出しますが、配当(現金)はもう一度②の箱に戻します(再投資先は③・④でも良い)

③資産保全の箱の中の現金は
・不動産(REIT)
・ゴールド、シルバー
・コモディティ

に投資します。インフレで価値が上昇するものに投資しておくことで「現金の価値が下がる動きに対抗する」ことが可能です。あちこちに散らばるのが不安な場合は「ゴールド」を優先するとシンプルなポートフォリオが完成します。

④のびっくり箱の中の現金は
・暗号資産
・大化けする可能性がある投資商品、銘柄
・トレンド、トレードに該当するもの

に投資します。びっくり箱はアグレッシブに投資したい方向けで、使わなくても問題ありません。

この箱は「無価値になるリスクを承知の上で、上手くいったら多くの現金をもたらすもの」にあえて投資することで①〜③の投資で無理をしないようにする、着実で手堅い投資を自分の欲望で壊してしまう危険性を回避するための安全弁の役割です。

①〜④の配分比率の目安は
①:7%
②:80%
③:10%
④:最大3%
とします。④については自分はそこまで冒険しなくても大丈夫と思う場合は、国債やMMFに置き換えても問題ありません。また①の箱の中の現金を最小化して①の現金を国債やMMFに投資するのも良いと思います。

ポイントはシンプルなポートフォリオを構築し、勇気を持って投資比率を上げてインフレ率の上昇に対応できるようにすることです。比率の上昇は今後はマストになると思って差し支えないと思います。

ちなみに債券の扱いはどうするかというと、インフレ時代においては「金利下落局面で利益を得る手段」とみなして長期投資のポートフォリオからは外したほうが良いと思います。元本保持を主目的にする場合、国債やMMFがその役目を果たしてくれるものと考えて資産拡大の役目は株式・ゴールド・不動産が担うと整理すると資産拡大局面であちこちお金が散らばらずに済みます。
(資産が目標に達したら、一部資金の債券への移行を考える)

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