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【第8話】 南紀ツーリング①〜リアス海岸へ行ってはいけない〜

こんにちは、旅する自転車です。
大阪から山を越え奈良へ、それから琵琶湖一周・淡路島一周、そして岐阜から南下して四日市までと、関西から東海にかけて様々な場所を走ってきました。

今回新たに舞台に選んだのは、関西地方随一のツーリングコースともいえる紀伊半島です。志摩市から和歌山市まで350㎞を超える長い道のりを、海岸線に沿ってぐるっと周ってみたいと思います。果たして、どんな出会いが待っているのでしょうか。7月の三連休を使って、さあ出発!

はじまりの街、志摩

南紀ツーリングの起点となるのが、志摩の観光拠点である鵜方駅。大阪上本町から近鉄特急で2時間30分、あっという間だ。6時8分に出発したので着いたのは朝の8時30分。1日目ということで詰め込み過ぎず、のんびりと走ろう。志摩といえば青い海に大小60の島々が浮かぶ多島美で有名だが、まずはこの英虞湾を一望できる横山展望台へ。駅からたったの3.5㎞の距離にも関わらず、山の上にあり151mアップ。これがなかなか辛かった。全然のんびりではなかった。だが展望台からの景色は素晴らしく、こんもりとした緑が湾に迫り出し、複雑なリアス海岸の地形を確認することができた。

終点・賢島までは乗らず途中下車。展望台への最寄りは鵜方駅
輪行解除して出発。自転車に付けるバッグを装備していないため、当時はリュックを背負って走っていた
なかなか複雑な分かれ道をしている。4分の2の確率で賢島へ行ける
横山展望台までは鬱蒼とした山道を登っていく
高台に展望台が整備されていて、英虞湾を一望できる

登って降って、また登って降って…

展望台を9時30分頃出発し、西へ西へと目指す。下調べの時点にすでに知っていたことだが、リアス海岸の道は登り降りがえげつない。ノコギリの歯のように海に迫り出した小さな半島を垂直に突っ切るように道が走っている。いくつもの小さな山を越え、トンネルに次ぐトンネルを抜けながら、湾に点在する小さな集落を通過していくのだ。そして何よりも辛いのが、海岸というものの海が見えるのはごく一部でほとんど展望のない山林を走らなくてはならないのだ。単調な景色が続くため写真撮影も捗らず、ただただ体力が削られていくという恐ろしい道だ。時計の針が13時を差そうとする頃、昼食がてら沿道の店へ立ち寄ることに。名物でもなんでもないスタミナ定食をいただく。からっぽの胃袋にはこれが一番うれしかった。

山の中にあった偕楽亭というお店。今は調べても出てこない
大盛りの白米を飲むように胃袋に流し込んだ
食事を済ませて走り始めると、珍しく視界の開けた上り坂が待っていた
崖の上から太平洋を見渡す地点があった。ここが一番いい景色だった

恐怖のエンドレスアップダウン

それからというものの道のりは辛いものだった。紀勢本線と並走しながらリアス海岸の道を南西方面へ進む。鉄道はトンネルのおかげで平坦な線路を走ることができるからいいが、道路は車が走るもの。容赦ないアップダウンが自転車の行く手を阻む。昼間はあんなに青空が広がっていたのに、夕方になるにつれ白い雲に覆われ始めていた。昼食から3時間半が経とうとしていた頃、道の駅 海山に到着した。道中、休憩できる場所はなくぶっ続けで走り続けていたためヘトヘトだった。17時を過ぎていて、もうこれ以上は先へ進めないと判断し宿を探すことに。ここから一番近い街は尾鷲で、距離にして6㎞ほど。海辺に立つ小さな民宿で予約が取れた。また100mほど山を登り宿を目指した。こうして南紀ツーリング1日目は無事に終わったのであった。

道の駅から尾鷲市街へ向かう途中で越えた山。熊野古道へ続く入り口があった
尾鷲の幹線道路。18時を過ぎた頃、やっと到着
民宿 風帆さんに宿泊。木目で統一された内装は美しく、清潔で居心地がよかった
部屋からの景色。街に明かりが灯り始めた頃、眠りについた

志摩から尾鷲まで96㎞、Googleマップによると904mアップ・903mダウン。1日目からとんでもない行程だ。初日はスタートの横山展望台以外はこれといって取り上げるほどのみどころはなく、ほぼ移動だけで終了した。2日目はどうだろう。これから訪れる街に、きっと素晴らしい景色が待っているだろう。南紀ツーリング、まだまだ続く。


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