【プログレ】カザフ/アルメニア/アルバニア/北マケドニア
普段このブログでは東欧文学を紹介している私だが、実はワールドミュージックも大好きである。ワールドミュージックでよく聴くのは、1960~70年代にかけてのラテンアメリカの音楽、とりわけトロピカリア(1960年代後半のブラジルで興った芸術運動)全盛期のサイケなブラジル音楽とか、アルゼンチンのプログレ(とくにAlmendraが好きすぎる)などだが、最近「そういえば東欧の音楽ってどんな曲があるんだろう?」とふとした疑問を持ったことから調べ始めた。
東欧の音楽、ロック・・・東欧のプログレってあるんだろうか。東欧のプログレを聴いてみたい!といろいろ渉猟していたら好きな曲を見つけることができた。カザフスタン、アルメニア、アルバニア、北マケドニアの4か国からそれぞれバンドを一つずつ選び、私のお気に入りの曲を載せたので、是非ご一聴あれ。
1. カザフスタン
Дос-Мукасан ドス・ムカサン
1967年にカザフスタンの工科大学の学生たちによって結成された、カザフで初めてロックとカザフ・フォークを融合させたバンド。カザフにおけるロックのパイオニア的存在である。
彼らの曲のうちでも Бетпак Дала「ベトパク・ダラ」は傑作だと思う。私はベースの音が好きで、音楽を聴く時はメロディラインよりベースラインを追うのに注力するくらいなのだが、この曲は特にベースが格好いいのでベース好きの人には強くお薦めしたい。
冒頭で少しの間かすかにポコポコポコと聞こえてくる響き、宇宙空間にまで浮遊するかと思われる奇怪なエレキの下で、訥々とリズムを刻むベースの音を聴いていると、心は遥か彼方カザフの砂漠地帯、ベトパク・ダラへとワープしてしまう。
2. アルメニア
Օկսենհեմ オクセンヘム
オクセンヘムはエレバン音楽院の卒業生を中心に2001年に結成。プログレやクラシック、アコースティック、アルメニアの伝統音楽など様々な要素が巧みに融合した、アルメニアで最もよく知られるプログレのバンドだ。
熱狂的に迎え入れられたアルバム、“Conquest of the Pacific” の "The Way Back Home" は、前半のキレのあるギターリフにフルート、バイオリン、ピアノが次々に入り、思わぬ古雅な響きを聴かせてくれる。9分半という長い曲で、その壮大に展開していく様は圧巻である。
3. アルバニア
Qelbanix チェルバニズ
珍しすぎる、アルバニアのプログレ。1と2で紹介したカザフとアルメニアのバンドは、ディスクユニオンやカケレコなどで取り扱いされており、日本でも少しは知名度がある。がQelbanixに関しては日本で全く知られていないどころか、ウィキペディアの英語版はおろかアルバニア語版ページさえ作られていない。ではどうやって知ったか。ウィキペディアの Rock music in Albaniaというページで目ざとく見つけたのです。
さて私が選んだのは、アルバム "Infinit Relativ" に収録されている "Nga ne, tek TY". 重厚だが疾走感ある華やかなエレキ、目まぐるしい変拍子、終盤で唐突に訪れる凪のようなアルバニア語のボーカル(この記事で紹介する曲のうちで唯一、ボーカルが入っている)と、かなり聴きごたえがあり、1分半で終わってしまうのが惜しいくらいだ。
4. 北マケドニア
Ден За Ден デン・ザ・デン
バンド名は「来る日も来る日も」という意味。1978年旧ユーゴスラヴィア、現北マケドニアのスコピエで結成された、旧ユーゴにおけるジャズ界隈ではその代表だと見なされている重要なバンドである。
エキゾチックなバルカン音楽にのせて、激しく力強いエレキと電子ピアノが、これでもかとメタリックな輝きを振り撒いている。気づけば頭の中で鳴り響いている、そんな強烈な存在感がある。
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