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トイレへ行く時間

私は父の仕事の転勤で
小学校3年生〜中学3年生までアメリカはニューヨーク州に住んでいました。

中学校2年生まではアメリカの現地校へ通っていたのですが、
アメリカの小学校では昼休み以外に
「休み時間」っというものがありません。

「体育の時間」「コンピューターの時間」
「数学の時間」などざっくりとした時間割もあるのですが、
日本で学校で当たり前にある
「休み時間」
っという休憩の時間がありません。

そのため、トイレへ行きたいときは先生に直接
この呪文を言わなければいけません。

「Can I go to the bathroom?」

私アメリカで最初に覚えたフレーズ。

私が小学校3年生のときの先生は
Mrs.Papalado(パパラド)というPがなんとも多い
強面のおばあちゃんでした。

登校初日は緊張のあまり先生へ
「トイレへ行きたい」
っと言うことができず、
昼休みのときはトイレへ行けたものの
それ以外はずっと我慢してました。

母にそのことを伝えたら
トイレへ行く時の呪文を改めて教えてもらい、
次の日に再挑戦。

緊張しながら先生のところへ歩みより、
「Can I go to the bathroom?」
っと言ってみる。

先生はニコッと笑い
親指を立てながら
「行きなさい」
のポーズをしてくれた。

クラスルームを出ると
そこには静まり返った薄暗くて長い廊下が広がって、
トイレに行くだけなのに、
自分だけのステージが広がっているようだった。

とても開放的で、
とても自由な
「自分だけの世界」

それからというもの、
トイレへ行く時は
自分だけのステージを
クルクルと回ったり、
飛んだり跳ねたりして、
小躍りをしたりしていたっけな。

たくさんの孤独を感じたアメリカでの生活だったけれども、
そのときの羽の生えたような感覚は
なんだか今でも覚えている。

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