【投機の流儀 セレクション】世界新秩序の確立か乱雲乱流突入か
第二次世界大戦後3分の2世紀を経てきた「戦後秩序」が大きく変わろうとしている。
世界新秩序(The New World Order)の確立なのか乱流が乱雲の中に突入したのか。
いずれにしても戦後の世界秩序が大きく変わろうとしている。
この秩序を変えているのはトランプ大統領のように見えるが、それならば大統領が代われば秩序はもとに収まることになる。
しかし、トランプを大統領に選んだアメリカ合衆国そのものが変わったのかもしれない。
筆者は一昨年の選挙中から新大統領はヒラリー・クリントンではなくてトランプである旨を語ったり書いたりしてきたが、それは彼の政策が良いからとか見識があるからというのではなく、その選挙のやり方にあった。
多数派を占める中流階級・下流階級・低学歴階級を取り込んだのだ。
この方が人口比は圧倒的に多い。
そういう連中がトランプを選び今もってトランプを支持しているとすれば、アメリカ合衆国そのものが変質し世界を変えているのかもしれない。
トランプ一人が起こしている騒ぎならば、大統領が代われば元の鞘に収まることになる。
この2年間は「アメリカの変質」「理念の合衆国と言われたアメリカが経済と軍事の二つのハードパワーだけに頼る合衆国」に変質したように見える。
そうすれば「もう一つの中国」が北米大陸に誕生したことになる。
トランプ登場以来、アメリカの変質とそれに引きずられた世界の変化はトランプという男の一時的な衝撃なのか、それとも「理念の合衆国」が「ハードパワーだけの合衆国」として中国と同じ存在に成り下がったのか。
これは秋の中間選挙を見ればおよその見当はつくし、それによっては2年後のトランプの再選ということも考えられてくる。
トランプは実に明快である。
アメリカにとって有利にならないことはどんな約束事でも否定し強引にそれに従わせていく。
最初に手を付けたのはアメリカ自身が主導してきた自由貿易協定、TPPからの脱退だ。
今後は多国間協定を結ばずあいたい相対で二国間の交渉で決めると宣言し、ハードパワーの勝れるアメリカが有利になるように事を運ぶつもりである。
これに対して80年代の対日貿易摩擦が熾烈を極めたときに日本はおとなしかったが、その日本に追い打ちをかけるように85年にプラザ合意という「史上最大の悪だくみ」を演じて日本を追い詰めた。
アメリカはまた中国だけではなく日本やEUにも対立するような姿勢をとりつつある。
アメリカの日本に対する貿易赤字は約7兆円強に達しているが、日米二国間の交渉だけでそれを突破しようという狙いがある。
この他にアメリカは世界の環境ルールを定めたパリ協定からも脱退した。
また、原発廃炉を進めシェールガスでエネルギーの主導権を確保しようとしている。
アメリカはまた安全保障でもEUとの亀裂を深めている。
EUのロシアからの天然ガス輸入を批判したり、ドイツの国防費の低さを持ち出してEUの代表ドイツを「ロシアの捕虜」という蔑称で呼んだ。
終戦直後アメリカは、民主主義・人権・自由経済などの理念を重視し、自由主義国家のリーダーとしてハードパワーとともに「理念の共和国」として世界をリードしてきた。
この秩序を一挙に壊したのはアメリカ第一主義である。
トランプの登場とそのやり方で戦後秩序の大転換が行われようとしている。
【今週号の目次】
●当面の市況:小型株市場の連続安と大型株の空売り比率の高止まり
●市場は日銀の真意を測りかねている
●GDP成長率と中長期の株式相場
●景気は緩やかに減速へ
●老舗企業の実力
●所謂「トルコショック」
●「『大統領選挙の前年はNYダウの年足は必ず陽線だった』というアノマリーがトランプ当選の前年に120年ぶりに崩れた」これは何を暗示しているのだろうか?(3年前、当時本稿で述べたものだが……)
●世界新秩序の確立か乱雲乱流突入か
●米国の保護貿易主義よりも大きな混乱を招く米国財政運営上の混乱:極論すれば米国国債がデフォルトする恐れ
●中国の諜報戦と我が国の諜報組織:日本の諜報組織
●「中国叩きが票につながる」という旨味を覚えたトランプと不見識な習近平という組み合わせ
●中国経済に暗雲たれこめる 習近平に対する知識層の不満と怒り
【お知らせ】
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【プロフィール】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年、同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院教授、同大学名誉教授。大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴57年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書『投機学入門』『投資詐欺』(講談社)など多数。
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