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【配信書庫#3】おすすめのノンフィクション【28冊】

親愛なる夜更かしのみなさま、こんばんは。
GAMABOOKS書店員の燈花ふゆです。

YouTube配信で紹介した本をまとめる「配信書庫」

第3回目の配信書庫は、2024年6月5日 / 6月12日 / 6月19日の配信より
「みんなに聞いたおすすめのエッセイ・ノンフィクション作品紹介」をご紹介します。

前書き|アンケートの実施とYouTube配信の紹介

◆アンケートの実施

2024年5月に「好きなノンフィクション」を募集するアンケートを実施しました。

https://twitter.com/fuyu_books/status/1750085633824190498

集まったのは合計27冊!
ノンフィクションとひとことでいっても、エッセイや旅行記、ルポルタージュなどさまざま。今回も多種多様なノンフィクション作品が集まりました。

記事を読んでいる皆さまにもささる一冊が見つかると嬉しいです。

◆YouTubeの配信アーカイブはこちら

それではさっそく集まったノンフィクション作品たちをみていきましょう!


本一覧

『ぼくの美術ノート』原田治

オサムグッズで著名な原田治さんの「ぼくの美術帖」(PARCO出版)から34年後にでたほぼ同名のエッセイ集。原田治がスペインタイルや北園克衛の装丁など美しいと思うものを一つずつ取り上げながら短い文章を書いています。装丁を担当した服部一成曰く、原田は美しいと思うものが多くある一方、よくないと思っているものも多くある人だったそうで、装丁には気を遣ったとのこと。原田はこの本の冒頭で北園克衛の言葉を自身の座右の銘として取り上げています。『「美」とは本来 無価値なものである 風景や空の雲が無価値であるというような意味において』。2016年に原田治が亡くなったあと、2017年に出版されました。表紙はオサムグッズを思わせる赤と青のストライプに明朝体とゴシックを合わせたタイトルと著者名が映えます。ソフトカバーに箱付きという部分を含めてグラフィックデザイナー服部一成の手腕が見て取れる美しい装丁です。是非お手に取ってみてください。

『未熟児を陳列した男:新生児医療の奇妙なはじまり』ドーン・ラッフェル

科学と見世物。相容れないように思えるが、先端の科学技術は見世物としても十分に観客を楽しませる。戦前のコニーアイランドなど観光地の見世物の中に、未熟児のための保育器が展示されていたという。赤ん坊も一緒に!こう書くとセンセーショナルだが、実際には、この形でしか未熟児が救われる道がなかった時代。病院には保育器を買う予算がなく、未熟児を生かす技術も未完成だった時代。興行師マーティン・クーニーは、未熟児を人種や貧富の区別なく無償で受け入れ、保育器に入れて展示し、十分なケアを施し、両親のもとに送りかえしていた。観客の払う入場料で、設備、看護師、医師の給与を賄っていたのだ。清潔に保たれ、病院よりも死亡率が低かったという状況を考えると、赤ん坊を陳列することの倫理面より救われた命の方に考えが及ぶ。時代背景は第二次世界大戦に向かい、優生保護の考え方が浸透する中で、未熟児を救うことの難しさもあっただろう。マーティン・クーニーの、なんとなくイカサマっぽい人生を追う本だが、医学の進歩における人権や倫理の問題についても考えさせられる本としておすすめです。

『山小屋の灯』小林百合子=文、野川かさね=写真

編集者小林百合子と写真家野川かさねの二人が山小屋に訪れた思い出をエッセイとしてまとめた一冊。美しい文章と美しい写真が読者を山に誘ってくれる一冊。エッセイの後半には登場した山小屋の詳細情報と登山ルートの地図も掲載。登山好き必読の一冊となっている。装丁は菊地敦己。キービジュアルとなる青っぽい山小屋の写真に対して補色となるオレンジを大きく印刷した表紙。写真の短形とタイトル文字のレイアウトの対比も菊地事務所らしいデザイン。カバーを取ったときにみえる肌色の紙に緑のイラストが一色で印刷された内側の表紙も見えないところまで気を遣ている印象で非常に美しい。写真のある本文ページとモノクロの地図ページで本文の紙を変えている部分も非常に緊張感がある。プロダクトとしても非常に考えられた一冊となっている。

『東京の古本屋』橋本倫史

『離島の本屋 22の島で「本屋」の灯りをともす人たち』朴順梨

『増補新版 東北の古本屋』折付桂子

『貸本屋、古本屋、髙野書店』髙野肇

戦後~1960年代頃までの貸本屋という存在について、結構いいインタビューが取れているのでは、と思い推薦。自分が初めて連載を書かせてもらった本屋についての本、という思い出補正とともに。

『HAB 本と流通』松井祐輔

お世話になっている版元(自分の本を出してもらっている版元)というのが推薦理由の一つ。別の理由としては、コンパクトながらも書籍流通についてしっかり追っかけている本はそんなにないのでは?というところ。一家に一冊(大げさ)は持っておくことをオススメしたい本(ただし約10年前の本なので、古い箇所もあるかもしれないです。そこは適宜皆さんで補ってください)

激走!日本アルプス大縦断

全三回分出版されてます。富山〜静岡を山越え踏破する日本一過激な山岳マラソンのドキュメント。 特番で見た出場選手のストイックぶりに惚れて買いました。 アマスポーツなので普段は仕事こなしながら、とてつもない事やってるのが自分には刺さりました。

『崩れ』幸田文

「老い」について書かれた名エッセイ。自然現象としての崩れ(土砂崩れ)などを、ままならなくなる老境の身体と重ね合わせる。一方では漢詩に吟じられそうな山河に共感しながらも、他方では自分の身体をいたわる著者。そんな著者の伸縮自在な思考のスケールに惹かれた。

『数学の大統一に挑む』エドワード・フレンケル

著者の自伝的ノンフィクション。数学に関する内容も面白いのだけど(そして難解なのだけど)、学者以外の側面も面白かった。特にすごかったのは、映画監督になってメガホンをとった著者の話。なんでも三島由紀夫『憂国』にインスパイアされた映画を撮ったんだそうな。

『街道をゆく』司馬遼太郎

各地の街道を訪ねて文化やその土地の気風などに触れているので非常に面白いです。 『街道をゆく』はシリーズが多いので、自分にとって興味がある街道を選ぶということができるのも良いところだと思います。

『トラブルクッキング』群ようこ

失敗した料理エッセイがあってもいいじゃないというのが面白い発想で、読んでみるとまたこれが面白いです。タイトルからして笑えます!

『統合失調症の一族 遺伝か、環境か 』ロバート・コルカー

12人兄弟のうち6人が統合失調症の一家!興味本位で読み始めたのだが、統合失調症の原因を探る研究者側の説明もわかりやすく書かれている。長男に最初の症状があらわれてからの50年は、この病気についての研究や治療法の歴史とも重なる。著者は、遺伝なのか環境なのかという問いについて性急に答えを出さずに、一家に起こった出来事を記載していく。発症した人だけでなく、発症しなかった6人についても、彼らが感じている恐れと、それにどう対処していたかについて、丁寧に記載している。発症しなかったのは運がよかっただけなのか。セラピストなどと出会って、自分の問題と向き合うことができたからなのか。50年前の、ただ患者を大人しくさせるだけのお粗末な薬物療法と、それによる副作用。非協力的な製薬企業。問題を直視することが困難な両親。母親にすべての責任を押し付ける考え方によって追い詰められる母親。最後は、医療の進歩を信じて、医学的な実験に協力する家族の姿が描かれて、未来への希望へと通じている。原因は一つと限らない。家族の誰かを悪人にするのではない、著者の書き方によって、一人ひとりの生涯に想いを馳せる内容になっている点もおすすめです。

『最長片道切符の旅』宮脇俊三

選んだ理由はGWに様々な理由で休め無かった方々に、旅する気分だけでも味わう事のできる作品をと思い選びました。 鉄道紀行作家として鉄ちゃんの間では知らない人は居ないと言われる著者が、国鉄時代に理論上の遊びだった鉄道路線の一筆書き乗車を実行した際の鉄道旅行記です。 淡々と鉄道を乗り続ける話なのに、著者の観察眼と軽妙な語り口が、読み手をまるで一緒に旅をしているような感覚に誘ってくれます。そして読後には何処か鉄道で旅立ちたくなる一冊です。

『遠い太鼓』村上春樹

ギリシャ文化やイタリア文化のおおらかさに触れられるので 疲れているときにおすすめです

『関口知宏のヨーロッパ鉄道大紀行』

関口さんが旅の途中に描いた絵日記と写真が多くてとても読みやすいです。移民問題が起きた直後ごろの旅なので、関口さんらしい優しい雰囲気の旅だけでなく難しい背景問題なども垣間見れ、楽しく、また考えさせられるエッセイ?

『災害と妖怪 柳田國男と歩く日本の天変地異』畑中章宏

民俗学の入門書としてとても優秀。柳田國男の文章と現代の災害を比較しながら災害と民俗学の関係性を解き明かす。一つ一つの文章が短くどこからでも読めるので非常におすすめ。装丁は寄藤文平。表紙は岩手の被災地域の写真と長いタイトルが対比されたレイアウト。花布がオレンジ色なのも特徴的。

『山岳信仰 日本文化の根底を探る』鈴木正崇

山岳信仰について調べ始めるならまずこの本を。出羽三山から始まり、大峰、英彦、富士、立山、恐山、木曽御岳、石鎚と日本各地を代表する山岳信仰をまとめた入門書。各コーナーは短い文章で端的にそれぞれの山の特徴を挙げており、それぞれの山の比較も行える良書。

『ホンモノの偽物』リディア・パイン

アート、宝石、食品、生物、考古学…、模造と真作をめぐる8つの奇妙な物語。 偽物=悪とは限らない、本物/偽物はつねに線引きできるわけではない、真正性の基準は時代によって変わりうる、ストーリーやコンテクストに大きく左右される… 色々と考えさせられます。

『わん・つう・すりーアメリカ阿呆旅行』江國滋

唯一無二の、奇術マニアによるアメリカ旅行記。レジェンド級の奇術師が続々出てきてうおおおおってなります。

『やまゆり園事件』神奈川新聞 取材班

 2016年に発生した障害者施設での大量殺人についてのルポルタージュです。  当然ながら、終始シリアスで重たい内容ですが、本当に読んで良かったと思った本でした。  犯人がどのような思想で犯行に至ったか、社会がそれをどう受け止めたか、その背景にあったのは何か。  丁寧に積み上げられていく調査の裏にある筆者の怒りに、自分の中にある無意識の差別感情や、内面化してしまっていた構造的差別を炙り出され、自身の身が焼かれるような気持ちで読み進めました。  私自身、軽度のうつで仕事がうまくできない時期があり、その時感じていた社会から取り残されてしまった絶望感が、本書で言及されている東京パラリンピックに関する炎上事件とリンクして、自分事として強く響いたのも貴重な読書体験でした。 月並みな結論になりますが、昨今至るところで叫ばれる「多様性」とどう向き合うか、考えるきっかけになる本だと思います。 読後感は不思議と悪くないです。 長々と失礼しました。

『極夜行』『極夜行前』角幡唯介

筆者の北極での壮絶な冒険が美しい筆致で描かれていて引き込まれる。思わず息を呑んでしまう描写ばかりで迫力に圧倒される。本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作。

『ある行旅死亡人の物語』武田惇志、伊藤亜衣

アパートの一室で発見された身元不明の女性の遺体。彼女が一体誰であるかを、2人の記者が探るルポルタージュです。 孤独に亡くなったとしても、物的な記録や誰かの記憶として、生きていたことの痕跡は残るのだと気づかされます。 それが一概に良いことだとは言いきれませんが、「忘れられたくない」という誰の胸にもあるであろう不安に、明かりを灯すように感じられる作品です。

『木』幸田文

木に関する随筆で、著者は幸田露伴の二女。映画「PERFECT DAYS」(かなり良い映画)で役所広司が読んでたので気になって買ってみました。木を人のように例えたり、木を形容する表現が多彩で素朴で素敵で、木を見る目が変わりそう。作中に登場した「杉形」(ピラミッド上に積んだ形)という絶滅しそうな言葉を使っていきたい。 フィクションばっかり読んでるからたまには新鮮でいい感じ。次は同じ映画に登場した「11の物語」パトリシア・ハイスミスを読んでみます(これはフィクション)。

『リバタリアンが社会実験してみた町の話』 マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング

リバタリアン、国家の役割を最小限にとどめ、個人の自由を徹底し、私有財産権や市場機構を強化すべきとする立場の人々。 そんな人々がアメリカ、ニューハンプシャー州のとある田舎町に移住し、理想の町を作ろうとした、その顛末を描いたノンフィクション作品。 リバタリアンの思想に従って税金を減らし、政府機能を縮小したところ、消防などの行政サービスが滞り、山のクマにも手が付けられなくなってしまう。 そんな大惨事が、著者マシュー・ホンゴルツ・ヘトリングの綿密な取材により生き生きと描き出されています。 人間社会はなかなか理屈通りには行かない、そんなことを思い知らされる一作です。これを読むと、税金に対する怒りが少しだけ和らぐのでお勧めします。

『聖の青春』大崎 善生

「早く名人になって将棋をやめたい」 という悲痛な覚悟 実の親子以上だった師匠との別離 そして・・・ 図書館で号泣してしまった

『釣師・釣場』井伏鱒二

読んでみて不思議と愉しい文章に惹かれました。 全国の釣り師と釣り場を訪ねた時のことを綴った文は、劇的な出来事がなくても読んでいると満たされるので感激しました。

『海賊たちは黄金を目指す』キース・トムスン

一攫千金を夢見て、血で血を洗う戦闘に明け暮れ、金銀財宝を略奪。その一方で、航海中は数か月も身体を洗えず、水と食料が徐々に減っていく恐怖と隣り合わせの生活を送る(内容紹介より)。 当時のカリブ海賊たちが遺した実際の日記から、彼らのリアルな生活・航海・そして戦闘のリアルな空気を表現した一冊。案外民主的だったり、実は完全には自由じゃなかったり、意外な海賊たちの一面が知れるワクワクの一冊です!

『失踪日記』吾妻ひでお

メンタルを病んで、アルコール依存症になってからの失踪。 ここまでは近所にある話かもしれないけれど、本人が人気漫画家で、家族のところに帰ったあとに、その間の話を漫画にしたものとなると、これはなかなかないと思います。 ホームレスがアルコールを入手する方法やら、入院して依存症から回復していく過程が、事細かに描写されます。 これ、どう考えても悲惨な話なのですが、絵のやわらかいタッチと丸っこいキャラクターに騙されて、ちょっといい話に見えてくるのが、逆にちょっと怖い。 刊行当時、あちこちで賞をとっているので、ご存じの方も多いでしょう。 そうじゃなければ、ぜひぜひ。酒のお供に。

『まちの映画館 踊るマサラシネマ』戸村 文彦(塚口サンサン劇場)

わたしの地元の映画館「塚口サンサン劇場」が映画館不況で苦労しつつも、破天荒なアイデアで全国から劇場のファンが集う映画館に様変わりするまでを綴った本です。 サブタイトルにもなっている「マサラ」はインド発祥の文化で、映画を見ながらお客さんがクラッカーを鳴らしたり紙吹雪を飛ばしたり、とにかく賑やかな上映スタイルです。作中ではマサラ上映だけでなく、映画館を盛り上げる破天荒な企画を立ち上げ、お客さんと盛り上がる様子がとても楽しげで、劇場に行ったことがなくても楽しさ伝わってくると思います! 読むと元気になる一冊、ぜひおすすめです◎

『「教授」と呼ばれた男』佐々木敦

久しぶりに音楽エッセイを読んだ。音楽を文章化するのはそもそも難しく、楽譜ではない部分を埋める作業になる。坂本龍一さんという人は、多分ほとんどの人が知っていて(その音楽諸活動を追っていなくても)、半分ヒトというより坂本龍一という現象に近くなっていると思う。彼の死後かかれたこの作品は、現象としての坂本龍一さんを、ヒトとしての坂本龍一さんに引き寄せてくれると個人的には感じた。 音楽だけでなく、沢山のものを残してくれた坂本龍一さんを、外側から見て、思い直すにはとても良い本だと思ったのでオススメさせてください。

『夜中にジャムを煮る』平松洋子(燈花ふゆ選)

平松洋子さんの『夜中にジャムを煮る』は料理に関連するお話をあつめたエッセイ集です。つくるよろこびと食べるよろこびを優しく綴った文章に癒されます。私はみんな寝ている深夜に作業をすることが好きですが、掃除、読書、執筆……夜にすることの中でも特に料理が一番好きかもしれません。夜の台所での作業ってなんとなく背徳感があるような。なので本屋でみかけたこの本のタイトルについ引き寄せられてしまいました。平松洋子さんのみずみずしいエッセイをぜひ読んでいただけると嬉しいです。

後書き|まとめと感想

アンケートにご回答くださった皆様、ありがとうございました!

今回ノンフィクション作品を集めようと思ったのは、私がただエッセイが好き、というシンプルな理由だったのですが、エッセイ以外にも面白そうなノンフィクション作品がたくさん集まって大変満足です。

意外だったのは、漫画が少なかったことでしょうか?
Webではエッセイ漫画や○○してみたレポ漫画などをたくさん見かけるのでもうすこし漫画も集まるかな~と思っていたのですが一冊だけでしたね。

普段全然ノンフィクションは読まないという方も多いと思いますので、今回の記事(配信)をきっかけに読んでみようかな、と思っていただけたら嬉しいです!
気になった本があったらぜひ本屋さんで手に取ってみてくださいね!

それではまた次の記事でお会いしましょう~!!

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