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うさぎごと 第7回 「何かしなくちゃ」と思いながら「今日も何もできなかった」という方へ

 障害者は日々多くの人に助けられています。医療、障害年金、障害者手帳によるサービス、支援施設やSNSで交流したり、家族、友人がいたり……。

 そんな時、ふと、「支援されて、助けてもらった自分には何ができるだろう?」と思う瞬間がありませんか。私はあります。

 この状態になると結構厄介で、時間を持て余したりしていて、生活はギリギリこなしていて、でも、自分という存在の意義を考えてしまいます。

 「もう生きていけない、死のう。」という自分のことだけで精一杯の絶望の時とは違い、「助けられている」という客観的な実感があります。その上で「自分にも何かできるんじゃないか?」という微かな希望が見えるところが厄介です。そうすると「何かしなくちゃ」と思い始めます。

 「何かしなくちゃ」という気持ちは焦りと空回りを生みます。そんなことはわかっているのに、「今日も何もできなかった」という日を積み重ねていくことは生き地獄でした。

 この記事は、そんな地獄の真っ只中にいる人(過去の自分)に向けて書いています。

 私が健常者と一緒に働けるくらい回復してわかったことがあります。

 ”「何かしなくちゃ」の「何か」はこの世には存在しないもの”

 ということです。

 「どういうこと?」と思うかもしれないので説明します。

 この思考になっている時の「何か」というのは、ぼんやりとした「成功」のことです。「成功」というものはイメージはあるけれど、実際には概念としてしか存在しません。「事業に成功した」という表現などはありますが、成功の定義は人や時代、価値観によって様々です。短期的に見れば成功でも長期的に見れば失敗だったりと、見る側面で変わります。これを私は「存在しないもの」という表現をしました。  

 私は「ではこの『何かしなくちゃ』という思考から抜け出すにはどうすればいいか?」を考えて、次のことをしてみました。

 「何かしなくちゃ」から抜け出した方法
   ① 物事を「モノ(物理)」で考える
   ② 最小単位まで小さく考える
   ③ できたらカレンダーにシールを貼る

 一つずつ説明していきます。

 ① 物事を「モノ(物理)」で考える
  思い詰めてしまうと、「何か」という整理できないイメージに縛られます。
  これを具体的に変えていくために「モノ」にします。
  例えば「掃除しなくちゃ」と思っていても進まない時は「掃除」というイメージをモノに変えます。「落ちているゴミをゴミ箱に入れよう」「散らかっているペットボトルをビニール袋に入れる作業をしよう」という風にしていきます。こうすることで「何か」「家事」「掃除」「ゴミ」「ペットボトル」などイメージが具体的になります。

 ② 最小単位まで小さく考える
  さきほど「モノ」にした作業を更に単位にしていきます。「落ちているゴミを3つゴミ箱に入れよう」「散らかっているペットボトルをビニール袋に入れる作業を5分間やろう」という感じです。ポイントは「〜個」「〜分」など単位をつけてあげることです。もし「3つを目標にしたのにできなかった」という場合は「1つ」とか「1分」「1秒」でもOKです。

 ③ できたらカレンダーにシールを貼る
  ①、②の作業ができたらカレンダーにシールを貼ります。ポイントは「②までできたらシールを貼っていい」ことにします。実際にゴミ捨てができなかったとしても、②の最小単位まで小さく考えることができたらシールを貼ります。大げさなくらいのシールがいいです。めちゃくちゃデカいハートのシールとか、きんきら金色の○シールとかがおすすめです。シールが無ければ赤いペンとかで花丸でも、ニコちゃんマークでもOKです。カレンダーがなければチラシの裏に日付を書いて、とにかく目に見えるようにしましょう。

 この作業を繰り返していくと、「最初は思っていただけだけど身体が動かせた」「5分間じゃ物足りないな」とか、「気がついたら10個ゴミを拾っていた」という日が出てきます。逆にできない日も出てきます。できなくてもいいのです。なぜなら、一番大切なのは「何かしなくちゃ」という幻影から抜け出すことなので、「何もできなかった」から「ゴミを3つゴミ箱に入れなかった」に変化することがまず大きな一歩なんです。

 「いやでも毎日そんなの無理」って人もいると思います。私も実はこの作業、一週間しか続きませんでした。でも、その一週間でとりあえず布団から起き上がれるようになりました。起き上がった後は好きなことをしたので、特にカレンダーにシールとか貼らなくても生活できています。

 もし布団の中とか辛い中でこの記事を読んでくれた方がいたら、うまくいかないかもしれないけど、うまくいくかもしれないので、試してみてください。きっと起き上がれます。一緒に「何かしなくちゃ」の幻影から抜け出しましょう。ゆっくりでいいので、ひとつずつできることを増やしていけたら、素敵だなと思います。こんな長文を読んでくださったあなたなら、大丈夫です。

  



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