平成東京大学物語 第17話 〜35歳無職元東大生、受験のあとで友達と話したことを語る〜
試験の結果がでるのは三月の半ばだった。卒業式は三月の頭にあったが、合格発表までぼくは毎日高校に通った。前期の試験に落ちた場合のために後期の試験の対策をしていたのである。国公立大学の試験には前期と後期の2つのものがあり、前期が普通のテストで、後期は小論文が課される。ぼくは後期は九州大学に出願していた。
前期の試験を終えて田舎に帰ってきて、学校にでてきたその日、ぼくは友人と以下のような会話を交わした。
「どうやった?」
「すごかとこやったよ、東京は!」
友人は狐につままれたような顔でぼくを見返した。試験の手応えを聞きたかったようだった。先生に提出した小論文が帰ってきたが、まったく添削されておらず、ただ一言「小論文の体をなしていない。大丈夫か?」と荒く赤字で書かれていた。
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