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もう9月に何も期待しないでくれ

世間ではにわかに欧米と同じ9月入学・始業を導入しようと言われ始めています。しかし、これはオンライン授業が実施できていないという課題を解決をしてくれるものではなく、問題意識を転嫁された解決策という気がしています。つまり、新型コロナウイルスによる学校閉鎖に際する学びの確保のための銀の弾丸としては機能しない可能性があります。導入の手段や順序に際しては慎重に。

現在入学済みの生徒を9月始業にすることについては、卒業の遅れについて配慮をする必要があります。20年入学時点で6歳の生徒のうち4月-8月末生まれに7歳になる生徒は、欧米に対して丸1年遅れて小学校に入学するということになります。卒業も丸1年遅れることになります。初学年ではない生徒も半年卒業が遅れるってことになります。かつての連邦であるイギリスやオーストラリアなど、比べる国によっては2年入学が遅くなります。全学年が9月始業にずるっとシフトするのではなく、ゆとり教育のように入学するタイミングだけを調整したほうが良いでしょう。大人の1年なんて大したことではありませんが、学生の一年は人生のいろいろな選択肢に関わってくるので尊重したほうが良いと思われます。

9月に満6歳の生徒が小学校入学
- アメリカ
- ドイツ

9月に満5歳の生徒が小学校入学
- イギリス
- オーストラリア

そんな事情があるからか、どこの記事を探しても政府が検討しているのは9月入学であり9月始業ではないようです。以前、9月始業について小池都知事、吉村府知事が賛成を表明したり、萩生田文部科学大臣が選択肢の一つとして検討していることを表明したり、自民党女性議員グループが首相に要望したことはありましたが、現在政府内で検討されているのは今のところ9月入学のようです。

そういう経緯もあって、世間では全学年が9月にシフトすると思われている雰囲気がまだまだあります。また、政府内の議論では今のところ導入時期が21年秋が現実的として検討されているようです。つまりフタを開けたら21年に小学校に入学する子どもたちが9月始業になっていというだけということになっているだけかもしれません。

そんなわけで、今学校に行けていない子供の学びの場を確保するために9月始業を求めても解決手段として機能しないでしょう。家庭内学習の質をいかに高めていくか、オンライン授業を望めば誰でも参加できるようにしていくという目の前の問題の解決に正面から取り組むほうが現実的ではないかと思います(私はヨーロッパ在住ですが、こちらでは直ぐにオンラインレッスンが開始されたので、すでにオンライン授業を含めた家庭学習の質をいかに高めるかという議論にシフトした感があります)。私個人としては国際標準化して内外の人材交流を計る観点から9月入学に長年賛成です。しかし、それを問題意識としたときの解決策としては、新規の入学生だけ時期をずらすのが現実的な導入手段だと思っています。これで諸外国が4月入学にずれたらウケますね。

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