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「海外経験」を鵜呑みにするのは危険かもしれない

当たり前だが、現代の日本社会は完全なものではなく、問題がたくさんある。それを改善するため、海外に範を求めるのももっともな話である。

そういう時、海外の事情に詳しい人の意見は役に立つ。だが、過剰にありがたがることには気を付けなければならない。

例えば、都内の高級住宅地に住む外国人が、「日本は裕福で治安がいい。私は日本でホームレスを見たことがない」と、祖国に紹介したとする。

わざと嘘をついたわけではないにせよ、それは誤りである。その人の目にする範囲に、たまたまホームレスがいなかったに過ぎない。

SNS上で海外事情を紹介する人は無数にいる。彼らが日本と比べるのはアメリカだったり、フランスだったり、北欧だったり多様である。が、上記のような誤りを犯していない保証はどこにもない。

よくあるのが、「アメリカ(例えば)の教育はこう、日本はこう。だから日本の教育はダメ!」というもの。よく見ると、その人(または子息)が受けた教育は、現地の裕福な階層のためのものだったりする。

具体的には、留学を経験した学生がこんなことを言ってしまう。

「自分が留学したとき、周りの人は誰も"How are you?" "I'm fine,thank you"なんて言わなかった! 教科書に書いてあることなんて当てにならない!」

実際には、(上記のやり取りがフォーマル過ぎる場面もあるとはいえ)普通に使える英語である。たまたま、「その人の周りだけ使わない環境だった」だけなのだが、そこに思い至らない。

海外で勉強したり働いたり、といった経験は確かに貴重だ。だが、「海外経験がある」という事実はその人に一種の万能感を与えてしまうのかもしれない。

日本でしか暮らしたことがない人は「井の中の蛙」かもしれないが、海外経験のある人も「別の井戸の中から見た景色」を知っているに過ぎない。

一つの井戸しか知らないよりは、二つ以上井戸を知っていた方がいい。海外事情に耳を傾けるときは、このくらいの心構えでいるのが良さそうだ。

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