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コネなし・未経験だった私が筆で身を立てられるようになるまで(後編)

(前回はこちら)

 さて、教材制作会社に登録したところで、すぐに案件があるわけではない。「最初の案件」が来るかどうかは、正直「ご縁」の問題である。

 私の場合は、半年くらい経ってから最初の依頼が来た。学習塾で使用する小学生社会科のプリント教材制作。これが、私の初めての商業ライティング案件だった。

 この「紙媒体の実績一つ」がどれだけの重みを持つか。「ライターの参入障壁」は、確かに低い。だが、「食っていけるだけのライティング案件」への障壁は、未経験者にとってあまりにも高い。

 私は、この「教材制作」の実績をもとに、編集プロダクションに売り込むことにした。もちろん、たった一つでは心もとないので、クラウドソーシングサイトに登録して実績を数行分増やした。

 クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサイトだけでも、実績をつくることはできる。もっとも、「文字単価0.2円」といった案件をいくら積んだところで、紙媒体や大手webメディアが目を向けてくれるかというと、「お察し」である。

 利用した上での実感だが、クラウドソーシングサイトは「自信がついたらそのうち卒業するべき修業の場」くらいにとらえた方がいい。もちろん、長く仕事をして、クラウドソーシングサイトで食える人も少数ながらいる。その中に入れたら儲けもの、くらいに思って利用したい。

 さて、営業の時はライターを募集している企業を検索で探し、メールを送ることになる。反応があるのは体感で半分くらい、そこから実際の仕事につながるのは全体の2~3割くらいだろうか。

 それでも、案件があれば全力で取り組み、次につなげるのは言うまでもない。

 営業の甲斐あって、ご縁のあった編プロから、初めて「紙の本」の案件をいただけた。戦国武将をテーマとした児童書の数ページである。「教材制作の仕事で、執筆経験あり」という部分が効いたのだと思う。

「紙の本に関わった」実績が履歴書に書けるようになると、俄然営業がしやすくなった。出版不況やデジタルの優位性が叫ばれつつも、紙媒体の信頼性は揺らいでいないものだな、と感じた。

 本業を続ける傍ら、休日を使って教材制作、書籍、webメディアなどの仕事を請け負った。独立してフリーライターになったのは、初めてライティングの案件を請け負った約3年後のことである。

「筆で身を立てる」という私の夢は、全く予想もしない形で叶えられたのだった。

 

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