もう行かなくちゃ【あらすじ、筆者紹介】
筆者より
これまでかずという名前で参加させていただいていました、数田朗というものです。
今まで拙作をお読みくださった方々、本当にありがとうございました。
少しでもこの話を気に入ってもらえれば嬉しいです。
あらすじ
俺と矢島景は、ともに秘密を分かち合った運命共同体だった。だけど、景はある日突然、自らこの世を去った。
それから十数年経った今も、俺は自分がどう生きていけばよいのかよくわからない。
そんな中、働く書店に大学院生の田邊が新しくバイトの後輩として入ってくる。
その出会いが僕にもたらす変化とは?
本文抜粋
その時景はどうしていたのだろう。首に縄をかけているところだったのだろうか? それともいくつもあったというカッターナイフのためらい傷を作っているところだったのだろうか? いくつか準備していたという自殺の手段の中から、どれにするかを悩んでいるところだったのだろうか? それとも、あの瞬間、まさに景は登った椅子を勢いよく後ろに蹴り倒し、首が縄に食い込んだのだろうか? 景の首が締まって、肺が機能を果たせなくなり、脳に酸素が届かず意識がなくなって、だらりと腕が垂れ下がって、慣性の法則にしたがって、少しだけその体が揺れている。そのどの段階で、俺のあのメッセージは景に届いたのだろう?
送ってすぐあのメッセージには既読がついた。つまりあのとき、景のiPhoneは画面がついていたということだ。だけどきっと、景はあのメッセージを読んでいない。景はごめんねと俺に送信し、iPhoneをつけたままにして命を絶ったのだ。そのとき景には、iPhoneをロックする必要もなかったのだ。だってもう死んでしまうのだから。きっと景はそう考えたんだ。
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