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(仮)ボバースセラピストが語る、座位での抗重力活動を伴った姿勢調節と起立動作や上肢操作の効率改善のための活動的な臥位/寝返り/起き上がり動作

このタイトルにあることを達成するための工程というかプロセスは4つです。

1つ目は背臥位で下肢関節を中間位に保持して、体幹に対して下肢を真っ直ぐに置くことです。体幹部のlow toneがあると真っ直ぐに置けず、たいていは下肢全体が外旋してしまいます。軟部組織性(非神経原性?)の制限を取り除いて、体幹筋が出力せざるを得ない、姿勢筋緊張を高めなければいけないシチュエーションを作って下部体幹から股関節周囲筋の活性化を図ります。

2つ目は足底にしっかり荷重したcrook lyingを作ることです。その肢位を作るためには下肢を空間保持するための体幹の安定性が必要ですし、股関節伸展筋の出力も必要になります。

3つ目はcrook lyingからの活動的な起き上がりです。起立・立位動作にもポジティブな影響を与えるために肩甲帯-胸郭をベッド面に押し付けないようにしながら、非寝返り側股関節の伸展と脊椎の分節的回旋、体幹屈曲による起き上がりを強調していきます。

最後4つ目は端坐位での下腿前傾を伴った骨盤前傾を獲得していきます。座位を獲得したら、次は立ち上がって立位・歩行での活動を獲得していくことを目指しますが、骨盤後傾位のままだと下腿が前傾せずに立ち上がり動作の効率が悪くなります。起立や上肢操作に移行し易い座位を獲得していきます。

まず1つ目の背臥位で下肢関節を中間位に保持して、体幹に対して下肢を真っ直ぐに置くことですが、まずは股関節と大腿部から介入します。最初はその方のニュートラルポジションをみつけるとから始めます。ニュートラルポジションとは大腿にある筋の筋緊張が全て等しくなるところと定義しているのですが、なので開始肢位は緊張が高かったり、短縮している方向の肢位をとることになります。自分でセルフメンテナンスをしたときには両側ともに股関節の軽度屈曲・外転・外旋位がニュートラルポジションでしたが、多くの場合は外側というか大腿筋膜張筋-腸脛靭帯がタイトになっていると思います。股関節を中間位に誘導していくのですが、その時に筋のアライメントも修正していきます。背臥位姿勢ですので、大腿直筋が真上、ハムストリングスが床面というかベッド面の方向、真下を向いて、さらに大腿後面が機能的な支持基底面になるように誘導します。私の場合は内転筋と内側ハムストリングスが起始部方向にたるんでいるような印象もあったので、大腿筋膜張筋-腸脛靭帯を前面に引き出して内側ハムストリングと内転筋を停止部方向に伸長しました。さらに、大腿全体の皮膚と軟部組織を内旋方向に誘導しました。背臥位で大腿後面が支持基底面になるところまでリアライメントを行うと、両下腿が大腿に対して膝関節のところで外側に偏位し、また20°から25°内旋位を取っていることに気づきました。また両足部は内反位、とくに内転が強くみられました。ただし、大腿後面の重心はやや外側に寄っていて、下肢全体がやや外旋方向に倒れそうな力はかかっている印象です。

次に膝関節と下腿への介入です。これは股間節と大腿部の介入の後に行うのが基本です。下腿もニュートラルポジションを見つけることから始めますが、私がセルフメンテナンスをした時は、両下腿が大腿に対して膝関節のところで外側に偏位し、また20°から25°内旋位を取っていました。また、下腿内側が短縮して脛骨が曲がっているような印象でした。ここでは腓腹筋が背臥位姿勢で真下を向いて、腓腹筋の近位部が機能的な支持基底面になることを目指して介入します。まず腓腹筋を内側頭と外側頭を分けるように把持して、内側頭は伸長し、外側頭はやや筋腹を集めてまとめるように、そして両側とも外旋方向に誘導しました。また、下腿全体の皮膚や軟部組織を外旋させて、下腿内側を伸長するようにリアライメントを行いました。アライメントから膝窩筋の短縮を疑い、直接の触診は難しいですが、その部位の組織の身長を特に意識して行いました。実施後、下腿内側の短縮は残存しているが、腓腹筋のところが支持基底面として働いているためなのか、大腿部のリアライメント後にあった下肢全体がやや外旋方向に倒れそうな力は消失しました。さらに両側の下部胸郭-骨盤周囲までの伸張性が高まった感覚と下部体幹右側の活動性が左側と比較すると相対的に低いような感覚がありました。そして、両側の足部の内反、特に内転が強く見られることを改めて確認しました。

そして、足関節と足部への介入です。私は足部の内反が強く見られましたが、内反位になっている人は少なくないようです。目標は踵が機能的な支持基底面になって、足部と足趾の背屈角度が少なくても0°まで自動介助運動で到達するところを目指します。最初はニュートラルポジション、私の場合は内転が強い内反位から開始してさらにその動きを強調してから元の位置に戻るようにして前脛骨筋、特に停止部の柔軟性を出していきます。また、前脛骨筋の知覚を高めるため、脛骨前外側面との境界にそれらを割くように指を入れながら内反と外反の動きを繰り返します。後脛骨筋への直接の介入は難しいですが、長趾屈筋は脛骨後面との境界部位に、長母趾屈筋は腓骨後面との境界部位に前脛骨筋と脛骨前外側面へのアプローチと同様に感覚を入力していきます。足部の内転はやや残存しているものの、踵が支持基底面になり足関節・足趾の最低限の背屈角度は確保できました。そして、そこから足底外側面-横アーチの部位にも感覚入力を行って、足底面での知覚と支持性が向上するように介入します。足底外側の皮膚を外側に広げていき、足底の外側が広く床面に接地できる状態を準備します。また、中足骨間の動きを出して、足底での支持および床面からの知覚が適切に行われるようにしていきます。

以上が1つ目の背臥位で下肢関節を中間位に保持して、体幹に対して下肢を真っ直ぐに置くことの内容になります。

2つ目は足底にしっかり荷重したcrook lyingを作ることですが、寝返りや起き上がり、座位を活動的にするために必要です。1つ目ポイントで示した、背臥位で下肢関節を中間位に保持して、体幹に対して下肢を真っ直ぐに置くことが出来たら、介助下で足関節を軽度背屈・外反位、足趾軽度背屈位に保持したまま股関節内外転及び内外旋中間位での股関節屈曲を誘導します。自動介助運動で最低でも屈曲90°までは到達するところまで行います。屈曲110°まで可能なら十分です。股関節内外転及び内外旋の筋緊張が高ければ緊張の高い方に動かして開放するように元に戻ることを繰り返して筋緊張の調整を図ります。自動介助運動で股関節90-110°屈曲位に保ったまま、その肢位で可能な範囲で最大の範囲での膝関節屈曲-伸展を繰り返します。(Quadを長く-ハムストリングスを長く)膝の屈曲角度が130°-140°程度まで可能になったら踵をベッド面に降ろして荷重し、股関節の伸展を誘導します。この時、肩甲帯や胸郭をベッド面に押し付けずに股関節伸展が出来るようなら完璧です。最終的には立位・歩行を誘導したいので、肩甲帯・胸郭を支持基底面、下肢を操作部位としての運動学習を強化するのは避けたいからです。これらの介入を行ってもcrook lyingの下肢の位置が保持出来ない場合は、下肢全体をThが抱えて筋を直接介助しながらハムストリングス近位部の求心性収縮と腹斜筋群の遠心性活動を促します。

以上が2つ目の足底にしっかり荷重したcrook lyingを作ることの内容になります。

そして、3つ目のcrook lyingからの活動的な起き上がりです。下肢のレバーアームを短くして、下肢操作における体幹機能発揮の難易度を下げて、かつ、起立・立位動作にもポジティブな影響を与えるための非寝返り側股関節の伸展と脊椎の分節的回旋、体幹屈曲による起き上がりを強調していきます。まずは、寝返り側の下肢を外側に倒します。一応、寝返りをどちら側に行うかは、左右半身を比較して相対的な強側に向かって行うことを先に選びます。骨・関節疾患なら健側へ、脳血管疾患なら非麻痺側へ、その他は筋緊張や筋活動や疼痛の程度を踏まえて、相対的な強側を決めます。次に反対側の下肢も寝返り側へ倒します。この時、倒れた膝が寝返り側の膝と重ならないようにします。膝が重なる≒相対的弱側股関節の屈曲を誘導していることになるので、股関節の伸展活動を保ったまま下肢を倒していきます。そして、非寝返り側上肢を身体の前に持って来て、顔の前でon elbow位を取ります。その肢位をとることで背面の長さを準備することができますし、またその肢位で頸部・体幹・骨盤の分節的な回旋運動を誘導します。その次は顔の前でon elbow位を取った上肢の上に身体の重さを乗せます。この時に寝返り側の上肢は出来るだけ使わないようにします。寝返り側の上肢で柵を引っ張ったりベッド面に対して突っ張ったりすることで体を起き上がらせるための体幹機能の発揮を減弱させてしまうので、その要素を消すためにこのような手順を踏みます。最後に、その姿勢から体幹の屈曲を使って起き上がります。寝込み動作は今の手順を逆に辿って行います。

以上が3つ目のcrook lyingからの活動的な起き上がりの内容でした。

最後に4つ目は端坐位での下腿前傾を伴った骨盤前傾の獲得についてです。起立や上肢操作に移行し易い座位のためには欠かせない要素です。最初に坐骨の評価を行います。坐骨が前方や内側に偏位している場合は骨盤が後傾しているのとほぼ一緒です。ハムストリングスや大内転筋の近位部の長さを出して、座位でより後方へ、やや外側へ坐骨の位置を変えていきます。その後骨盤の側方傾斜で坐骨への荷重を促していきます。難易度が高ければ反対側上肢を側方についての体幹のdeweightや反対側への側方傾斜からの戻り運動での誘導を行います。そして、両側の坐骨の位置を整えたら、骨盤の前傾を促していきます。端坐位で先に骨盤の後傾を誘導するのですが、後傾は腹部の活動で肋骨が下がってから骨盤を後傾させます。その状態から骨盤を前傾をさせるのですが、前傾は多裂筋を使って下から上に向かって順番に1つずつ脊椎を伸展させていきます。多裂筋は脊椎全体に付着していますが、上後腸骨棘内側で最も触れやすいです。多裂筋に動きをいれる場合はその部位を抑えて、骨盤後傾時に下外側に誘導、骨盤前傾時に上内側へ誘導します。端座位で骨盤後傾位だと、バランスをとるために股関節では屈曲が優位になり、さらにそれに付随して下腿三頭筋の活動も増えるため下腿は後傾するので起立やリーチも含めた上肢操作が行いにくくなってしまいます。端坐位での上肢操作や起立・立位をスムーズ行うために、端坐位での骨盤前傾を誘導していきます。

以上が4つ目の端坐位での下腿前傾を伴った骨盤前傾の獲得についての内容になります。

最後にまとめます。

座位での抗重力活動を伴った姿勢調節と起立動作や上肢操作の効率改善のための活動的な臥位・寝返り・起き上がり動作のポイントは4つです。

1つ目は背臥位で下肢関節を中間位に保持して、体幹に対して下肢を真っ直ぐに置くことです。体幹部のlow toneがあると真っ直ぐに置けず、たいていは下肢全体が外旋してしまいます。軟部組織性(非神経原性?)の制限を取り除いて、体幹筋が出力せざるを得ない、姿勢筋緊張を高めなければいけないシチュエーションを作って下部体幹から股関節周囲筋の活性化を図ります。

2つ目は足底にしっかり荷重したcrook lyingを作ることです。その肢位を作るためには下肢を空間保持するための体幹の安定性が必要ですし、股関節伸展筋の出力も必要になります。

3つ目はcrook lyingからの活動的な起き上がりです。起立・立位動作にもポジティブな影響を与えるために肩甲帯-胸郭をベッド面に押し付けないようにしながら、非寝返り側股関節の伸展と脊椎の分節的回旋、体幹屈曲による起き上がりを強調していきます。

最後4つ目は端坐位での下腿前傾を伴った骨盤前傾を獲得していきます。座位を獲得したら、次は立ち上がって立位・歩行での活動を獲得していくことを目指しますが、骨盤後傾位のままだと下腿が前傾せずに立ち上がり動作の効率が悪くなります。起立や上肢操作に移行し易い座位を獲得していきます。

以上です。

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