見出し画像

映画『大河への道』 | 感動、ときどき「大河はいいの?」

次の日ゆっくり寝られる土曜日の夜、子供を寝かしつけた後の至福の時間に配信で映画を観るのが好きです。
最近、途中で挫折(寝落ち)しがちな夫にどの映画がいいか聞いた結果、プライムビデオの一覧から「うーん、これかな〜」と出してきたのが、中井貴一主演の映画『大河への道』(2022)です。

千葉県香取市。市役所の総務課に勤める池本保治(中井貴⼀)は、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められ、苦し紛れに⼤河ドラマ制作を提案。思いがけずそれが通り、郷土の偉人、伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの企画が立ち上がってしまう。ところが企画を進めるうちに、⽇本地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかった!?彼は地図完成の3年前に亡くなっていた!
という驚きの事実が明らかに……。江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく⽇本初の全国地図誕生秘話。
そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだとんでもない隠密作戦があった――。

ということで、映画は現代の香取市、観光振興のため伊能忠敬を大河ドラマにしてもらおう!と中井貴一が提案するところからスタート。
ところが企画を進めるうちに、実は地図完成前に伊能忠敬は亡くなっていた、という事実が発覚。場面は江戸時代、伊能忠敬が亡くなったシーンへと移り、伊能忠敬の弟子たちがどのように地図を完成させたのか、という話が展開されます。

いえね、それは知ってたんですよ。予告でもそんな感じだったんでね。
驚いたのは、場面が江戸時代になったらラストまで行きっぱなしだったことです。
なんというか勝手に、現代と過去(江戸時代)の話が入り混じって進んでいくと思ってたんで、途中で「……あれ、もしかしてこのままずっと江戸時代でいく感じ?」と内心焦りました。

ど真ん中時代劇の映画で勝負するって、今はなかなか厳しいと思うんですよ。特に伊能忠敬は「日本地図を完成させた」ということで、戦国時代のような派手さもないですし、真正面から「伊能忠敬の映画」を作っても興行収入は厳しそう……というより企画の時点でボツになりそうな気がします。


そんな中でこちらの『大河への道』は、伊能忠敬を大河ドラマにしてもらって観光振興の目玉にする!と市役所に勤める池本(中井貴一)が尽力するところから始まるから面白い。
しかも、現代も江戸時代もキャストは一緒で、立場や関係性が若干リンクしているところも楽しめます。
普段、時代劇は見ないなーという人たちにも見てもらえる可能性をぐっと広げていて(かくいう私も時代劇はほとんど見ません)、偉そうですけど、めちゃくちゃいい企画だなと思いました。


……ただ!
せっかく面白い現代パートが、導入とラストだけなのは残念。
伊能忠敬が死んでから地図完成までの3年と、市長の任期が終わるまでに大河ドラマを実現させたいという3年をリンクさせて、それぞれ色々乗り越えながら地図完成と大河ドラマ実現までの日々を描いたりする感じになるのかな、と予想していましたが、全然違いました。
一度江戸時代に話が飛んでからは現代パートはラストまで出てこないので、途中からごくごく普通の時代劇を見ている感じに。

もちろん、弟子たちの話も面白いんです!
高橋景保(中井貴一、一人二役)が完成した地図を将軍に見せるシーンでは感動しました。
200年以上も昔に、ここまで正確な地図を歩いて完成させるなんてどれほどの気力と精神力だったのか(正確な距離の測り方について説明しているシーンありましたけど、正直理解できていません)、自分たちが殺される可能性もある中で、伊能忠敬の死を隠して地図を完成させた弟子たちの思いの強さに、胸が熱くなりました。
ズタボロの草履にも、その年月が表れていて涙が溢れそうになりました。

……なったんですけど、頭の片隅で「『大河への道』は?大河はどうなったの?」ともう1人の私が突っ込んでくるんです。
あれ、もしかして、大河って「大河ドラマ」意外にも意味あんのかな?何か別の意味とのダブル•ミーニングなんかな?と映画の途中で思わず「大河」の意味を調べてしまいました。

それくらい、江戸時代パートは『大河への道』というタイトルじゃない感と、結局『大河への道』はどうなるんだ感が自分の中ふつふつと湧き上がるのを止められませんでした。


伊能忠敬の弟子たちの話を映画にしたかったのはわかります。その話にとても感動して、それを多くの人に伝えたかったんですよね。
そしてその方法として、現代パートがある。この映画はあくまで江戸時代パートがメイン。
わかります、わかります!

……わかるんですけど、でもやっぱり現代パートも絡めてほしかった!個人的には!!!


ですが、私もアラフォーなんで、伊能忠敬や池本(中井貴一)が50歳くらいから新しく何かを始めたということに何だかとても希望が湧きました。
まだまだ何でもできそうな気がした、昼間子供達に「仲良くして!」と言い過ぎで疲れ果てた39歳の夜。


おしまい。

【補足】
•中井貴一も松山ケンイチも足が長すぎ。
•江戸時代パートの北川景子が美しすぎ。(「73歳で亡くなった伊能忠敬の、元妻」という設定に違和感ありまくり)


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?