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GTP in San Diegoの備忘録 3日目(後半)振り返って日本にもHTHはいるのか?

2/23。GTP in San Diego 最終日・3日目。
3日間のハイテックハイ(以下HTH)でのツアーを時系列に沿ってみていく。
(一部写真は他の参加者の方が撮影されたものを含んでいる。)

ミウラエリ
<自己紹介>
東京出身。2020年3月から、鳥取在住。
教員(今のところ、英語)。29歳女性。

前回の記事はこちら。

John先生とQ&Aタイム:何から始めるべきか

怒涛の午前中の最後の時間は、John先生との最後のQ&Aセッション。

壁にも作品が描かれているJohn先生の教室(壁に作品できがちHTH)

どう学校として文化を保つのか

まず、クオリティを維持するには、小さな学校、小さなクラスというシステムが重要だということ。
大きくなりすぎてはフレキシブルに動けないということで、今ではHTH全体での会議などは少ないらしい。学校毎に動くことが多く、何より教員毎のカラーが強く出ている。
HTHに特徴的なシステムとして、「小さなクラス」「小さな学校」「水平的な組織」「成人学習のための学校(大学院)」「ブロックでの授業(人文・科学・数学にのみ分かれた授業)」を挙げていた。それらによって、PBLの手法を取り入れたHTHのあり方が成立しているそうだ。

John先生の教室も、最初は何もなかった。今は壁に独創的な絵が描かれていて、教室というよりデザイナーの工房のようだ。最初からそのような場所だったのではなく、少しずつ道具を揃えて、今のような環境になった。
そこに至るまでにまずは小さなことから始めていく。
全てを変えようとするのではなく、まずできることから。
"Change is happening if you try one thing."
渡された原則はシンプルなものだった。

どんな教師が採用されているのか

HTHではどのような教師が入っているのかという問いは、3日間を通じて何度か問われていた。
John先生は、Growth Mindset(成長マインドセット)があるかどうかではないかと話していた。(確かにそんな人なら、小さくでも変化を起こそうと行動するかもしれない。)

加えて、初日には「どんな先生がHTHでは尊敬されているか」という話にもなった。
そこでは、

  • 深く生徒のことを考えている

  • 自分たちの教え方を常に批判的に見ることができる=変化にオープンである

  • 他の人と意見を共有できる=協同的(Collaborative)

という要素を挙げていた。
3日間を通して、その要素を感じる場面は様々にあった。そして、自分はどうだったか、振り返ることも多くあった。

どう生徒と関わるか

生徒との関わり方として、John先生はまた4つの象限になったものを示してくれた。

私による雑な書き起こし

John先生は影響(impact)と労力(effort)のことを考え、労力もかかるが影響も大きいPBLだけでなく、影響が大きく、簡単にできるものを意識的に取り組むようにしているそうだ。(ちなみに、このフレームワークは、主催者のShinyaさんによれば、大学院でも教育改革を振り返る際などに使われているらしい。)
例えば、授業の様子を観察したり、授業中生徒に声をかけて一対一でチェックインをする。保護者面談のような場も、HTHでは生徒主導で話すカンファレンス(会議)の形をとる。
生徒との関わりをここまで密にできるのも、先に挙げたようなシステムがあるHTHだからだろうが、授業中のチェックインなど短くても取り入れられそうだ。

Advisoryの時間

午後は、Advisoryの時間。
いわゆるホームルームで動く時間はないので、そのような部分を補うものかもしれない。担任の先生のもとに集まって戯れるようなイメージで、9年生で高校に入った時から組むことになる小さなグループだ。最初の年には家庭訪問も行う。John先生は「小さな家族」のようなものだといっていて、大学進学について話したり、一緒にゲームをしたりしながら、お互いのことを知っていく場所だ。

大人も登る

この日は、近くの公園まで行って木登り。参加者である私たちも一緒に木に登った。
確かに目的があるようなないような、家族で過ごす時間のようだ。

最後の授業見学

中に仕切りを入れようとしている生徒。作業が細かい。

最後にもう一度見学の時間。12年生が作業している様子を見るのもこれが最後かと思うと寂しい。
(天気がいいSan Diegoだからこそ、オープンエアな作業場が置ける。山陰の私からすると、羨ましすぎる。)

9年生の授業。自分たちの人生を絵にまとめたもの。

9年生の授業も見学させてもらった。ハイスクールの一年目だ。
その授業では、中間発表のプレゼンを行なっていた。
12年生と比べると、こちらが質問しても「ん?何がEssential Questionだっけ?」となる生徒も多く、ここから成長していくんだなとも感じられた。
映像作品や絵、ポスターセッションのような研究をまとめたものなど、成果物は多岐に渡っていた。

最後の振り返り

たくさんあって疲れてしまった1日だったが、サンディエゴの暖かな気候のおかげで、希望をすごく感じていた。
PBLはあくまでも手段。メキシコとの国境沿い、様々な状況の生徒がいるサンディエゴでは、equity(公正)を求めた結果、PBLに辿り着いた。

翻って日本でもPBLは有効なのか?
私は日本でもプロジェクトをやることに意味はあると思う。
何か一つをやり切った体験、それを互いに評価したり、高め合ったりする経験、自分のことを作品を通して見てもらう経験。それらを積み重ねることで、子どもたちの自信にもつながるのではないだろうか?
加えて、今まではペーパーテストだけが得意な子を評価してきたが、そうではない側面を見つめる一つの「手法」になりうるのではないか?テストが苦手な生徒も、仲間と関わり合うことでより良いプロジェクトを仕事(Work)をしうるのではないか?
その一方で、日本(広く言えば東アジアの文化圏)では、知識を持っていることは強く賞賛される方向にある。PISAの調査で上位に入っているということは、やはりそれなりにテスト慣れしているし、テストで点数を取ることが重要と(なんだかんだ)強く思っているように思う。
果たしてそこを「どこまで」変える必要があるのか?いや変えられない文化だとしたら、どうやってプロジェクトの要素も入れていくのか?

もう一つ、自分のことを強烈に振り返ったのは、自分の学びを仲間に還元できていたか?ということだ。
同僚のALTからは、「わざわざわ有給使って海外行って学校視察って、どんだけ仕事が好きなの?」などと言われている私。
だが、学んできたことを仲間とどこまで共有できていただろうかと思う。
もちろん学校外の仲間との共有も大事だが、まずは同僚から。一緒に学んだことを共有できれば、お互いの教育観もわかって仕事がしやすくなるのではないかと思う。まさにCollaborative=協同的な教員でありたい。
(今でもしやすいはしやすい。ありがたい職場なのですが)

おまけ

食事会での振り返り

夜はJohn先生やPat先生と食事会があった。
John先生とは、今の自分が勤める学校の現状を話した。そこで、高校生でそれぞれがテーマを決めて論文にすると伝えると。
「生徒それぞれが決めてそれを学べるのはとてもいい環境だね」と言われた。
確かにその中にいると、できていないところにばかり目がいってしまう。
一方で満足してもいけない。常に新しいことを、少しでも新しいことを。
挑戦したり、目の前の生徒のためにアレンジしたり。

そうやって前進したいと改めて思った3日間だった。

3/18(月)報告会は受付終了/3/23(土)発表会開催!

オンラインでの個人での報告会を実施する予定です!
参加希望の方はフォームにご回答ください。
(3/10追記:受付終了しました。)

また、GTP in San Diegoの発表会(オンライン)は3/23(土)10:00〜11:30で行います!
私以外の参加者の方(教育企業、大学生などなど)から話を聞いてみたいという方はぜひそちらにご参加ください。
(3/10追記:参加フォーム更新しました)


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