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GTP in San Diegoの備忘録 1日目(前半)美術館のような校内へ

2/21。GTP in San Diego 1日目。
3日間のハイテックハイ(以下HTH)でのツアーを時系列に沿ってみていく。

ミウラエリ
<自己紹介>
東京出身。2020年3月から、鳥取在住。
教員(今のところ、英語)。29歳女性。

前回の記事はこちら。事前研修についてまとめている。


朝のディスカッション:Transformativeな学びとは?

まず一番初めに私たちが見学することになるJohn先生の教室へと向かう。
Science担当のJohn先生とHumanity担当のPat先生のクラスはHTHの12年生。つまり、高校3年生のクラスだ。
John先生は、HTHに20年近く勤めるベテランであり、今回のツアーの主催者であるShinyaさんのメンターでもある。
一番最初にJohn先生から向けられた問いは、「あなたにとって、Transformativeな学びは何?
私の頭の中は、中高時代の英語演劇部が過ぎる。誰もが煙たがる部長の役割を、演出がやりたい一心で手を挙げた。自分が考えていた舞台を形にする楽しさ。先生からの信頼。
周りとシェアしながらどんな要素があるか話していく。authenticityがあるのか、実際に手を動かしていくのか。レベルを高めるような周囲の環境だったか。
John先生によると、「Systems & Structure(システム・構造。クラスサイズや時間数など」「Learning Design(学習デザイン。HTHではPBL)」「Conditions of Deeper Learning(深い学びのための条件)」「Competencies & Skills(コンピテンシーとスキル)」が重なるところで変容的な学びが起こるという。
①学習者をエンゲージさせ②意味があるコンピテンシーを育成し③学びを民主化した上で④コミュニティーにインパクトを与えるような学び。
それを心に留めながら、ハイテックハイを見てほしいと告げられる。

1コマ目:生徒による学校案内

生徒「だけ」で案内

そして、Student Ambassadorによる校舎案内が始まった。
今回は12年生のベテランのアンバサダーと日本人生徒のアンバサダーが自分の経験を交えながら案内してくれた。

案内の間、驚いたこと。なんと、先生はついてこないのだ。
アンバサダーを担う生徒たちは小学生から高校生までいるのだが、トレーニングを受けた後、ツアーを受け持つことになる。
日本なら、どこかでまずいことを言わないか先生がついてきそうなものだが、そんな気配はない。
Exhibition(発表会)があるので、プレゼンの能力はバッチリだ。

インターナショナル、小学校、中学校の見学

今回私たちが行ったHTHは、「オリジナル」と呼ばれ、Point Lomaに一番最初にできた学校だ。その周りにも小学校、中学校、別の高校などがあり、別の拠点と合わせると16校あるという。

まず最初に「HTHインターナショナル」へ。以前は、留学生の受け入れなどをこなっていたようだが、今はそのような特色はなく、高校である。建物が比較的新しく、目を引く中央の柱には生徒による作品が大きく飾られていて、以前は回転していたらしい。(現在は停止)
教室の中だけでなく、廊下のスペースに出て学んでいる生徒の様子も見られた。

至る所に生徒の成果物がある

その次は小学校へ。今回見学したJohn先生の娘も通う。(HTHの教員になると、その子どもは、抽選の入学が優先的に案内される)
小学校でも読み書き・算数などの基本的な学びは授業もあるが、科学や歴史などはプロジェクトと掛け合わせながら行われる。ここでも教室の外には成果物が飾られている。定期的に入れ替わるものもあれば、何年も飾られる優れた成果物もあるようだ。比較的、自己表現や、「植物の表面」などの素朴なテーマが多い。

HTH Elementary Explorer 外の壁も生徒の作品

次に向かった中学校になると、より複雑な内容になっていく。

3Dモデルから作られた絶滅危惧種の作品

絶滅危惧種の動物について、3Dモデルから作品を製作したり、染物を作るプロジェクトがあったり。ガンの患者にインタビューしたものをまとめたりと、トピックも複雑になるようだ。「絶滅危惧種」というと、個人的には生徒に身近ではないので、中学校でも避けてしまうようなテーマだ。思い切って「身近でないトピックですが、つまらなくなかったですか?」と聞いてみると、サンディエゴは海も近く、コミュニティーのことを考えると身近に感じられた、との回答。確かに、HTHでは、プロジェクトを作る際、フィールドワークも大事にする。そのような中で、おそらく地元のコミュニティに出て話したり、実際に手を動かしたりする活動があったのではないだろうか?

中学校までは各学年にCommonsというスペースがあり、教室と教室を繋ぐコーナーのことだ

2コマ目:授業見学開始(9年生 数学&12年生 木工)

実体験とグラフを結びつけた数学の授業

先生による説明。写真も含めた成果物を作りながら、学ぶ。

そして、いよいよHTHでの授業見学が始まった。
最初に見たのは9年生の数学の授業。先日行ったハイキングについて、その時間の経過と感情の変化をグラフにし、式でも表すというものだった。担当の先生がハイキング好きというのもあって、生徒たちはグラフだけでなく、その周りに写真を添えながら作品を作っていた。人文系と科学系のプロジェクトとは別に、数学の授業があるとはいえ、成果物を作る要素が日常的に含まれているようだ。(演習の時間を取ることももちろんあるらしい。)
ただ、式自体は数学が苦手な私でも理解できたので、日本でいう中学1年生や2年生あたり、文字式で不等式などがわかっていたらかけるようなものだ。おそらく、日本とアメリカではそもそもの英語のカリキュラム感が異なるようには思う。

いよいよ始まる12年生の授業


その裏では、John先生やPat先生の授業が始まっていた。
今回のプロジェクトのタイトルは「On Our Tables」。食がテーマになっている。
生徒たちは、英語(つまり国語)を担当するPat先生とは記事を読みながらディスカッションをしたり、科学を担当するJohn先生からは栄養の知識を学んだりしながら、自分たちやコミュニティにとってのwellness(健康)を考えていく。Essential Questionは、How does feeding our community impact our health, values and environment?(私たちのコミュニティを養うことは、健康・価値観・環境にどのような影響を与えるか)
そして、この二人に共通するのは、木工をこよなく愛しているということ。学校外で木工制作をして、収入の足しにしているらしい。
生徒が制作するのは、まず最初は近隣の小学校に向けたプランターで、その次に個々人が箱を製作し、最終的な成果物として台所用品を製作する。これを最後の発表会で展示し販売する。

今回見学したときは雨が続いた後で、やっと晴天になったところ。教室にある大きな窓が開かれ、外とつながり、木工所のようになる。つまり晴れなければ作業がしづらい。見学した3日間は、生徒が2つ目の制作物である箱を作っているところだった。
彼らは本当にただのboxを作っている。目的としては、グループで作業したプランターからシフトして、個人作業をする最終成果物の前に、きちんとした技術・手順を学ぶことがあるそうだ。
キレイ目な格好をしている女子生徒も果敢に木工の電子ノコギリなどで作業している。中には部屋の中で、明らかに別の作業をしていたり、スマホをいじる生徒もいるのだが…。話を聞いてみると、どんな箱を作っているかそれぞれが雄弁に語ってくれるのが面白い。

3コマ目: HTH流教員研修①50 ideations

お昼の前には、John先生からHTH流の教員研修を実際に受けた。

50 ideationsというもので、4人チームになり、まずプロジェクトの種を50個出す。そこからどれが簡単で、難しいものかを分けながら、難しそうで面白そうなアイデアを一つ選ぶ。そこからカレイドスコープに沿って、そのプロジェクトを考えるという内容だ。

カレイドスコープはこちらの記事も見てほしい。

限られた時間の中で、HTH流の型を学ぶ。そして、アイデアを出すことを祝うような空気を感じる研修だった。

その後は先生たちを交えての昼食会となった。一息する間もなく、午後のプログラムが始まる。

午後のプログラムは次の記事で。

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