料理の楽しみ方
デンマークの三つ星レストラン「ノーマ」、24年に閉店(AFP=時事) - Yahoo!ニュース
「その分野では超有名で、第一線で大活躍していた」のに、突然その仕事を辞めてしまったり、異業種に移ってしまう人がいる。やはり思考回路が一般ピープルとは違うのだろう。最近だとTBSの国山ハセン氏、僕の世代だとSMAPの森且行氏なんかが思い浮かぶ。
少し前、家族で隠れ家風のフレンチレストランに行った。実家から車でわずか30分ほどのところにあるのに、その存在は全く知らなかった(隠れ家だからか…)。
母の友人は何度か行ったことがあるそうだし、予約もなかなか取りにくいようだった。
お店はごくごく普通の住宅街の中にあって、看板も出ていない。一見するとただの住宅であるが、住宅らしからぬオシャレな街灯が家(というか店)の前に2本あって、なるほどこれが唯一の目印なのであった。
この日は、僕らと、もう1組の客だけ。最大でも3組までしか対応できないであろう広さであった。シェフはご主人、奥様がサービスを担当している。
コース料理であるが、量といい味といい、実にほどよい。ワインやシャンパンも有名なワイナリーのものであっても他のレストランに比べると良心的な価格で驚いた。
わたくし、ワインが好きなのでこういう時は本当にワインの知識が役に立ち、かつ、格好もつくのです。
ここで僭越ながら、フランス料理店などにおけるワインの選び方、格好の付け方をお教えしましょう。決して決してワインの事前勉強などする必要は無い。その店にお目当てのワインが置いてあるとは限らないし、料理だって仕入れ状況によっては急遽変更になることもあるから「提供されるであろう料理にあわせてワインを選んでおく」ことも無意味だ。
ではどうするか。
ソムリエに一任して下さい。これである。
そのためのソムリエだ。ソムリエに「予算5000円くらいで、白よりも赤が好きなので赤ワインを選んでください」と言えばよい。予算を連れの前で伝えるのが恥ずかしければ、予約時や来店時前に電話で伝えておけばよい。
金に糸目をつけないのであれば金額のことは口に出さず、単に「重くない、軽めの味のものを。赤で」とか「料理の味を堪能したいので、軽い白ワインを選んでもらえますか」などと、ざっくりとした表現でいい。
あぁそうそう、ワインを注文すると、テイスティングとして、ほんの少しだけグラスに注いでくれる。まぁ大抵の場合は問題は無いのだけれど、ワインは湿度や温度などによって劣化しやすい飲み物なので、その確認である。
香りや味に異常が無ければ、「これで結構です。お願いします」と言えば、全員に注いでくれるわけだ。
テイスティングの為に注がれた少量のワインを見て「えぇっ!?これだけ!?」と慌ててはいけない。
なお、これはあくまでも味に異常は無いかという確認であるからして、「好みの味じゃなかったから」と言ってこのワインをキャンセルするのはマナー違反である。開けちゃったんだし。
ところで、「肉料理は赤ワインで、魚料理は白ワインで」というのは一昔前の常識だ。間違ってはいないし、一理あるけれど、結局重要なのは「自分自身の好みであるかどうか」である。魚料理で赤ワインを飲んではいけないなんて決まりは無い。飲みたいものを飲めばいいのだ。
もしあなたが肉料理に白ワインを注文しているところを笑う輩がいたら、そいつは平成バブル期の生き残りです。絶滅危惧種なので保護してあげましょう。
最近は「料理の色に合わせてワインを選ぶ」流れがある。つまり、牛肉であってもクリームソースならば白ワイン、魚であってもトマトソースならば赤ワインというふうに。また、肉は肉でも鶏肉ならば白、赤身肉なら赤というように食材の色に合わせる場合もある。
しかし、本当にワインと料理のマリアージュを楽しみたいのならば、フランス料理の場合はソースが使われているから、料理名からソースが一体何であるかまで把握しなければならなくなる。だからワインはソムリエに任せるとして、料理にこそ詳しい方がカッコイイかもしれない。
「うーん、舌平目はブールノワゼットのソースか…じゃあ、シャルドネなんかが合いますかね、ソムリエ?」などと言えたらお連れ様も一目置くと思う(笑)
ともかくですね、フランス料理だからと言って緊張する必要は無い。食べたいものを食べ、飲みたいものを飲む。そして食事を楽しむ。これだけです。
さて、件の隠れ家風フレンチレストランから数日後、ふと気になってネットのレビューを見ると、8割は高評価なのだが、「サービス担当の奥様が無口で云々」という書き込みがあった。
「それはアンタ、コロナ禍だから飛沫が飛ばないように必要最低限の会話だけにして、余計な会話を控えているだけだろうが!」と書き込んでやろうかと思ってしまった。奥様が会話を控えていることは雰囲気から見て取れた。
店内の調度品について尋ねたら、きちんと説明してくれたし、マスクの上からでもにこやかな雰囲気は伝わってきた。的外れな評価は気の毒である。
肉なら赤ワイン、魚なら白ワインといったワインの常識も、ネットの情報も、受動的に受け入れるだけではダメなんだなぁ…。