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#53 ページものを制するものは印刷を制する

突然ですが、世のデザイナーの皆さんへ問題です。

想像してください…。

あなたはA4サイズ16ページの冊子をデザインすることになりました。その中で見開き2ページに渡って、大きな写真を入れたいと考えています。さて16ページあるうち、どの見開きページにすれば印刷的に一番良いでしょうか?


正解は8、9ページの見開きページです。

A4サイズ16ページの冊子を印刷するときは、菊全判の紙に16ページ折で面付けします。上記はオモテ面の面付けです。天と地どちらが袋になるかは、右開きか左開きかで変わるので今は割愛して考えます。クワエを上側、ハリを左側とすると、上記のような面付けになります。

紙は上下左右ある四方のうち、2箇所を固定すればズレません。紙を印刷機に通すために引っ張るクワエ側と、紙を揃えるために当てるハリ側の2箇所を固定して印刷は行われます。印刷のオペレーターはクワエとハリで見当を合せるので、左上に行くほど見当が合いやすくなります。紙は周りの環境によって、わずかに伸びたり縮んだりするので、ズレないと言っても右下へ行くほど見当が合いにくくなるんです。

つまり、オモテ面で考えた場合は、1P(表紙)が一番見当が合い、5pが一番見当が合わないことになります。それではウラ面も見てみましょう。

ウラ面の面付けは上記のようになります。これで分かってもらえたと思います。オモテ面の8、9Pだけ隣り合って印刷されるのです。見当合わせも色合わせもやりやすいですよね!2、3Pや6、7Pで見開きにしようと思ったら、紙の両端になってしまうので、印刷が大変なのが分かります。8,9Pの次点は14、15Pですが紙上では左右逆(本になったときの背じゃなくて口同士が合わさった状態)になってしまいます。

特に2、3Pは表紙1枚めくってすぐのページなので、導入として見開き画像使いたくなるかもしれません。しかしデザインする前に一度、印刷会社、印刷部署に相談してみてはいかがでしょうか。


私は前職が印刷会社の営業をやっていたので、印刷については結構詳しいと自負しています。日頃仕事をしていると、最近のデザイナーはデジタルに慣れ過ぎてるのか、印刷現場において「こだわれる部分」を意外とおざなりにしてるんじゃないかなぁと思うことがしばしばあります。

例えばAMスクリーンとFMスクリーン。AMスクリーンは印刷の網点が規則正しく並んでおり、その網点の大きさで絵柄を表しますが、後発のFMスクリーンは網点を不規則に置けるので、モアレも起こりませんし、その分インキ代も節約できます。FMスクリーンの方が新しい技術なので、FMスクリーンで版を作る場合は、割増料金になる印刷会社もあります。それだけ言うとFMスクリーンの方が優れていると思われるかもしれません。しかしながら、こだわるデザイナーは元々あったAMを好みます。


なぜでしょうか?


それはインキを多く盛ることができるからです。こだわるデザイナーはとにかく盛りたがります。さらにさらに盛りたがるデザイナーは解像度(線数)を変えてきます。175線を150線にしたり、さらに133線にしたり…。印刷会社にはめんどくさいと思われるかもしれませんが、そこまでこだわりを見せれば、世間一般的には「このデザイナーできる…」と思われるかもしれません。内に籠もってばかりではなく、たまには現場へ顔を出すのもいいのではないでしょうか。



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