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#4 本物のIR活動の戦略を考える

ビジネスの勝敗を決するのは戦略構築です。日本のビジネスマンは「戦略」という言葉が大好きですが、ところで皆さん、本当の戦略ってご存じでしょうか?


具体的な戦略(基本設計図)を創る


戦略とは

 前回の基本方針に沿って具体的戦略構築を行います。

  一般的に事の成否は事前の作戦で7~8割が決まり、残り2~3割が実践で差が出る、と言われています。にも関わらず、日本のビジネスにおいては「戦略」を軽々に使い,中身が伴わないケースが散見されます。

 そもそも「戦略」とは、「顧客重視を全ての原点として」「組織の役割を明確にし」「資源配分を明確にした実行可能な活動を定め」「未来を睨んだ長期的視野に立った」「短期、長期の基本設計図」といえます。

 この要素各々に重要な意味を持っています。一つでも欠ける、或いは、全体のバランスを欠くと不充分な作戦となって思うような結果に導かれません。

 例えば組織、メンバーの役割がナアナアで明確でない、資源配分が適切でなく掛け声倒れ、或いは、目先に拘り長期的視野に立っていないため、後になって”こんなハズではなかった”と嘆く・・・・等々です。

 特にバランスは肝要で、戦略段階でなんでも精緻に細かく創れば良いというものではありません。時々に応じたレベル、ステージに合ったバランス良い戦略が良い結果に繋がります、また、組織全体のベクトルを合わせることが一体感を生みます、

 この要素を満たすために。所謂PDCAの実践によりレベルアップを図ります。

 

現状を認識する

 まず、現状の評価、分析を株主構成、開示情報について定量・定性両面から行います。株主構成は市場だけでなく競合との比較も行います。また、投資家にヒアリングを行い客観的な定性評価も行います。これらを整理し課題を抽出します。前職での課題は、国内外市場における将来ビジョンが見えないこと、特に競合との差別化・分析が不足しているというものでした。

目標を設定する

 そこからあるべき姿としての目標を設定します。
 投資家がミーティングで期待するポイントを考慮し、中長期将来ビジョン、成長戦略ストーリー、それを裏づける成長ドライバー、施策の基本設計を設定します。
 前職では、開示情報は、従来、最低限の財務情報開示のみでしたので、論理的なドライバーや資源配分を提供するという投資家目線にたった情報開示に大きく変換することを目標としました。

 数値目標は、当然結果としての株価向上を狙いましたが、絶対的株価は事業(経営)そのものによりますので、IR効果としては相対株価向上、即ちTopixや競合に対するオーバー・パフォーマンス誘導を狙います。
具体的には優先ターゲットの海外投資家比率を3%からまず15%、次いで国内金融30%程度とし、半分を占めた個人投資家比率は30%程度まで下げると同時にリテラシーの高い個人株主構成へシフトする属性の改善も狙いました。これらの実現のための1日当り出来高として50百万円水準をまず目標としました。

戦略構築

以上の目標実現のための具体的施策として、
  ・開示情報の充実
  ・ターゲットを理解促進させる、場、メディア、スケジュールの策定
  ・進捗をチェックするPDCAの仕組み開発
が必要となります。

 特にターゲット毎に~誰に、何を、どうやって~というコミュニケーションのきめ細かい設計が鍵となります。
ターゲット、即ち株主と一口に言っても機関投資家から個人株主、各々属性や意識の高さなど投資に対するレベル、期待度はまちまちです。レベルにあった過不足無い情報を適したイベント・ツールを通して提供しなければ正しくターゲットには伝わりません。
 昨今話題の「SDGs」も持続的成長するための開発目標を表していますが、投資家は「最終的に必ず何らかの企業価値向上、牽いてはリターンに繫がる」の一点に関心があります。単なる社会貢献だけでは特定ステークホルダーへの重大関心毎であっても、投資家からは評価されません。

 適正な情報発信とはこれらの企業価値向上のための情報が一連の論理の基に短長期のストーリーとなって、投資家・株主が“なるほど”と合意、納得できる『質』を備えていることです。当然ながらある程度の時間軸と『量』は勿論必要です。
 しかし、大事なのは客観的に合意できる一連性のストーリーです。将来のことですから、保証、約束できることではありませんので必要以上に消極的であることもありません。逆に、過剰に積極的というのも信憑性が疑われます。この辺りのさじ加減、バランスが情報の「質」を左右します。

 以上の要件をターゲット、即ち投資家・株主の情報必要レベルに合わせて適確に提供します。詳しすぎても粗すぎても顧客満足を得られませんので情報粒度を調整します。

情報伝達の手段としては、決算説明会、投資家ミーティング、IRツール、IRサイトがあります。各々接触するターゲットに合わせ、リアル、オンラインを駆使して充実します。

 以上のようにして、ターゲット(投資家)レベルに合わせた情報と提供の場を設計します。注意すべきは、会社のディスクロージャーコードに即した情報発信に務めることです。何故ならIR担当者や担当役員が発言したことは会社の発信と受け止められますからです。そのために投資家とのコンタクト履歴を残しておきます。

 ターゲット別の施策、準備内容のタスクがある程度整理出来たら、IR活動の年間グランドスケジュールを策定します。これを基に、アクションプランを計画し、IR活動を効率的に進めていきます。同時にマネジメントのスケジューリングを調整していきます。

以上で基本戦略構築は完成です。後は実行しPDCAマネジメントを実践します。

次回からはテーマ毎の展開シナリオの詳細に入ります。


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