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#2 〇〇でも解る金融市場


そもそも金融市場ってどうなっているのだろう?まず基礎知識を学びます。

IR活動は投資家に株式市場を通して自社の株式に投資をしてもらうための「質の高い情報提供活動」です。その株式市場、マクロな金融市場、金融経済とは、そもそもどのようなプレイアーにより、どのような仕組みで、どれくらいの規模で成り立っているのでしょうか?マーケティングにおいて市場分析・基礎情報は必須ですので、本題に入る前にその根本的な基礎知識をまず理解しましょう。

世界の金融市場 

マクロ的観点から金融市場を捉えると、世界の金融資産(ストック)は2020年で280兆$あり、90兆$の実体経済(GDP)の実に3倍強にもなります。90年代以降グローバル新自由主義台頭と金融イノベーション、IT革命との相乗効果により、モノ・カネ至上主義の世界的世相を反映して金融市場は飛躍的に膨張してきました。

その金融資産の基である債券を発行する主体、即ち発行体は、国債であれば国であり、社債であれば事業法人(企業)ですが、最大は財政赤字を補てんする国債です。その債券をスポンサーである富裕層や年金基金、生命・損害保険が市場で購入します。

スポンサーの内訳で圧倒的なシェアを誇るのは金融資産1億円以上の個人富裕層と1億円未満のリテール投資家です。両者で65%を占めています。次いで年金基金と生命・損害保険会社が両者で約3割を占めております。

スポンサーの金融資産の約30~40%を預かり運用するのが運用機関で機関投資家といいます。直接投資する個人投資家、委託され間接投資する機関投資家、いずれも投資家は証券会社を経て債券を購買します。運用資産の地域別内訳は欧米が圧倒的で8~9割を占めています。

投資家の内訳、地域別内訳、いずれも高齢化と格差拡大による社会環境を反映した傾向がうかがえます。その傾向は日本の金融市場も同様です。金融資産は約16兆$で、実体経済のGDP約5兆$に対して約3倍あり、その運用資産はそのうち約30%です。

なお今後の金融市場はこれまでの成長の傾向に加え、属性としては政府系ファンド(SWF)の増加、また地域では、アジア太平洋地域、特に中国の増加が予測されています。


株式マーケットとプレイアーの役割

プロ投資家である機関投資家のファンド・マネジャーの投資方法は、固有スポンサー指定のポートフォリオをカスタムメイドする年金信託と不特定多数のスポンサー(主として個人)向けにポートフォリオをテーラーメイドする投資信託とがあります。

投資家の投資スタイルとしては、日経平均等の市場全体の値動きに連動して機械的に運用するパッシブ運用と株価の上昇が期待される銘柄を厳選して個別に投資するアクティブ運用があります。運用資産の8割以上はアクティブ投資で、IR活動はアクティブ運用投資家を対象にします。

なお、誰が企業の株式を買っているか、それは直接投資の投資家は株式担当部署(一般には総務部)に届く株主名簿で把握できますが、複数の運用機関の年金資産投資を一元管理しているマスタートラスト扱いの機関投資家はその実態が見えません。従って実態把握のために株主判明調査を適宜行い、株主構成と属性の健全化を常に意識しなければなりません。

ファンド・マネジャーは運用機関のアナリスト(バイサイド・アナリスト)、並びに、証券会社のアナリスト(セルサイド・アナリスト)から様々な情報を得て分析します。財務状況はもとより、株主還元、配当政策だけでなく、ビジョンや経営戦略、市場へのコミットメントなど経営トップの資質も注目します。いずれも企業側都合による情報開示でなく、投資家視点重視の定量データを用いた具体的な情報提供を期待しています。


株式市場を取り巻く環境、 株主構成と株価

日本株全体の株主構成といえば、20世紀中は個人と事業法人、そして政策保有の都銀・地銀、生保・損保が安定株主として常識でした。それが現在は国内機関投資家、海外機関投資家、個人投資家がほぼ同率構成となっています。

この原因は90年代から始まった日本の金融再編成の一環により、「ソルベンシー規制」「BIS規制(バーゼル2、3)」といった保険会社・銀行自身の財務体質の健全化が進み、さらに事業法人の国際会計基準導入もあって、従来の政策保有株、所謂持ち合い株解消による株式流動化が進んだからです。いずれもその狙いは日本の会計基準に時価会計を導入し、さらに変動リスクを明確化してリスクのある株式は解消、或いは、成長性が見込まれる優良株式への移行を促進するものでした

それらによる安定株主の相次ぐ売却を吸収したのが国内機関投資家と海外機関投資でした。この株主構成の変化は、株主構成適正化の効果を結果的にもたらしました。


株価とは

株主構成は株価に大きな影響を及ぼしますが、株価形成のそもそも要因も当然あります。従って株価形成要因を知り、自社の株価がどのような状態なのか質的量的に自己分析する必要があります。

質的とは財務バリエーション評価、量的とは株価が売買需給要因に左右されていないかを判断します。これらの分析から、自社の株価が適正か否かの判断が、ある程度はつきます。その結果、適正と思われる株価と実際株価にギャップがある場合、適正株価を形成するために、IR活動がまさしく必要となるわけです。

#1では「企業は株価は市場で決まるという受身の姿勢でなく、積極的に株価上昇に努めなければならない」と述べました。

IR戦略構築はここから始まります。

次回はIR活動の基本方針と戦略についてお話しします。


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