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日本語であそぼう。文豪・谷崎潤一郎氏にまなぶ。

みなさん、こんにちわ。

今年は年越しを奥さんと二人、北九州は若松のお義姉(ねえ)さんの実家で過ごしているのですが、こちらのおうちに、

谷崎潤一郎「文章読本」

の古い文庫本が置いてあって、この名高い文章術の本、今まで名著とは聞いておりましたが実際に手を取る機会がなかったもので、さてぱらぱらとめくってみますと、これが実におもしろい。

谷崎と言えば、ねっとりとからみつくような日本的情緒を、これでもかというほどに畳みかけてくるような、そんななんとも濃厚な印象が強くありましたので、日本語の素性をさらりと語り、世界にも稀なる我らが奇態なる言語を、いかに読み、どのように書けばよいか、その心構えを懇切丁寧に、しかも極めて理知的に書きしるしたこの本を多くの方に読んでもらいたいという想いがむらむらと湧いてきまして、この一文をものすことに致しました。

物書きの端くれを自認するわたくしめですが、むろん商業的な媒体などには縁遠く、しかしながら我流での文章研鑽はずいぶんと続けてまいりました。

一時期など漢字を使わずにどれだけ書けるだろうかといった実験をしたこともあって、つまり、ひらがなだけつかってもあんがいにほんごはかけるものでありまして、わかちがきをしないとはじめはちょっととまどいもしますが、これはけっきょくなれのもんだいでありまして、ひらがなばかりつづくとさすがにばかっぽいな、などというかんそうもわいてはまいりますけれども、それもじつはせんにゅうかんにすぎないのであります。

というような話を、わざわざ実例まで交えて書いたのは、谷崎氏が文章の分かりやすさを重視し、わざわざ難しい漢語やカタカナ言葉を使うよりは、できるだけこなれた和語を使いなさい、という大変もっともな主張をなさっているからでありまして、このことの他にも、

・西洋の言葉のように説明をたくさんするよりは、敢えて書かないことの深みを大切にすべし

とか、

・そもそも言葉では表しがたいことがいくらでもあるのだから、その限界をわきまえて初めてよい文章が書ける

といった深みのある主張を、簡潔明瞭な言葉で、具体的な例も上げながら手取り足取り教えてくれるのですから、日本語を読み、また書くことに人並み以上の感心を持つ皆さまには、昭和9年に出版されたのに決して古びていない、文庫本で200ページちょっとのこの小さな読本を是非ともご一読していただき、その沁み渡る味わいがお気に召しましたならば、何度でも繰り返し味読することで、谷崎氏の読書術と文章術を盗み取って皆さまの糧(かて)として、人生の滋味を深めていただけるだろうと思うのです。

以上、現代的な読みやすい文章からは程遠い文体になりましたが、これにより谷崎氏の魅力が少しでも伝わることがありましたら、誠に幸いと思うのでありました。

てなことで皆さん、よいお年をー♫

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※おまけ
いつも言葉についておもしろい記事を書いている星野廉さんが、次の記事で谷崎の文章を取り上げてらっしゃいますので、こちらもよろしければどうぞ。


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