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2019年8月の記事一覧

詩 311

詩 311

  気配

よごれた雪が きしむ 音
ブラックライトで照らしても
ゲノムは 沈む 夜に住む
やっぱり 音だけ スズメバチ

空中ブランコ ゆらすのは
透明人間かもしれず
オリーブの種 ばらまいて
いつかは ここで かくれんぼ

積み木の森でつかまえて
りんごのかけらで ゆるされて
魚眼レンズに 口 羽 つけて

どこもかしこも空間で
泥がはねても 神聖で
無垢でなければ あなたは いらない

詩 310

詩 310

  幼年期の終わり

ちいさな声の一匹が
ぬれて かたまる バルコニー
ゆられた あげく ここに来て
もっと 灰色 つつみこむ

かおり 松やに 菱形に
とげのある木が 花 咲かせ
ほそい首輪の鈴の音
しずかに たちこめ 砂煙

うすいバラ色 みちていく
心 うきたつ おいしげる
両手 両足 わたしのもので

清潔すぎる 手のひらに
なにを乗せても 泡だって
遠い海へと 深い空へと

詩 309

詩 309

  広場の感覚

なにかが重くのしかかり
目覚めた朝は 真鍮線
暖炉 みがきあげ 待っている
毛糸 とどくのを 待っている

くさりを鳴らし つまさきに
傷はたえない かわいそう
櫛目 あざやか のぞきこむ
窓から 月が のぞきこむ

かなしく あわれな ガラス玉
香水 しみこむ 木綿の輪
広場の感覚 また みがきあげ

ざわめき 聞こえた 毒の星
黒いフードで 口 かくし
ほほえむときに また 

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詩 308

詩 308

  アトリエ

冬のとどかぬ 深い谷
不在の証拠に ドア あけて
おさなさ 残した 横顔に
石鹸水は つめたくて

みじかい髪にもからむ 蜜
トマトの花のひとひらに
やさしいあなたは目が悪く
靴ひも むすべず ふれられず

水銀蒸気にむせかえる
煙突そうじもお休みで
チーズに噛みつく 魔法は禁止

指先 青く 一輪車
空気に満ちた 燐 硫黄
ぐるっと まわれば ちがう風景

詩 307

詩 307

  二次性徴

泥の道 ゆく 足跡は
満月の夜 軽くなる
誰も知らない 虹となる
ホムンクルスの笑う声

不滅の旋律 こわいから
黄金幽霊 生贄に
屋根も きらきら 太平洋
どこで泣いても監視下で

空色ドレス 森のなか
なにを抱いても 怒られて
乙女は泣いた でも うれしそう

船の上までご招待
あとは自分で顔を捨て
ギプス コルセット 身長 のびずに