Toshio Yamauchi, Ph.D

サイエンティフィック・マネジメント・アドバイザリー代表、独立系投資会社のエンゲージメン…

Toshio Yamauchi, Ph.D

サイエンティフィック・マネジメント・アドバイザリー代表、独立系投資会社のエンゲージメントディレクター。科学的な意思決定手法とカウンセリングを組み合わせ、企業や公的機関の組織活性化に取り組んでいます。経営学博士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。67ヵ国・地域を旅しました

最近の記事

アクティビストファンドが入っている企業はどこか

アクティビストファンドとして知られる、オアシス・マネジメントが8日、花王に対して株主提案をするとして記者会見を開きました。アクティビストファンドが「これから提案する」と本格投資前に記者会見を開くことは珍しいことです。今後、花王株の買い増しをする可能性は低くはないでしょう。 アクティビストファンドは様々な提案を行います。中長期的な企業価値向上のために事業ポートフォリオの再編やM&Aを提案することもあれば、短期的に資産現金化や内部留保の吐き出しを提案することもあります。刺激的な

有料
200〜
割引あり
    • コンサル利用のトリセツ

      今回はコンサルタント、アドバイザーについてのお話です。私は通算20年ほどその業界に在籍していました。他業界に身を置いたことも4度あったのですが、その時に企業の方々から耳にしたのが「コンサルは嫌い」という言葉でした。異口同音に「高額な報酬の割には成果へのコミットがなく、無駄だった」と仰います。契約額は高いもので半年で数億円、中には(ソフト・ハード等の物件費を含まず)数十億円というものもありました。コンサル利用の理由を伺うと多くは「コンサルの営業に押し込まれた」か「社内事情により

      • 人と組織を伸ばせないリーダーのたった一つの共通点

        今回は人材育成と組織開発のお話です。私が経営者や組織リーダーの方々と接して感じるのは、チームメンバーの意欲を高め、育て、組織も大きくするリーダーは共通して「言葉の力」を大切にされているということです。 リーダーには、グイグイ引っ張るタイプの方もあれば、チームメンバーを後ろから押し上げるタイプの方々(最近ではservant leader、直訳すれば「召使型リーダー」と呼ばれる方々)もあります。あるいは、現状打破をタスクとして強く意識される変革志向の方(transformatio

        • 低PBR企業の「逃げTOB」

          先日、低PBR企業について書きました。東京証券取引所さんの取組みのお陰で、低PBR企業も少しは株価意識をもつようにはなったようです。株主価値向上に向けた取り組みを発表したプライム市場上場企業は全体の4割になったようです。日経さんは株価重視への転換を示すものとして評価される記事を出されています。 確かに、時価総額が低い企業(多くはスタンダード)ではまだまだです。また、各社の対応策もその熟度はまちまちで、「中計のコピペ」のようなものも少なくありません。ただ、このような施策だけでも

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          旅の話:うどん県で猫に会う

          旅行の話です。週末を使って、香川を旅しました。目的はうどんと猫です。写真ばかりですが、旅行をご検討の方のイメージ作りになれば幸いです。 岡山から瀬戸大橋を渡って坂出へ香川までは空路で入りました。あいにく土曜日の羽田発高松行きは全て満席のため、高松までのアクセスが簡単そうな岡山から入りました。岡山空港は山間にあり、岡山駅までは空港バスで30分ほどです。空港バスは複数台で一団をなすので、満員で乗れないリスクはほぼありません。 岡山駅からはJR瀬戸大橋線で移動します。おすすめは

          旅の話:うどん県で猫に会う

          プロフィール

          【略歴】 株式会社三和総合研究所、日興コーディアル証券株式会社、PwCアドバイザリー合同会社を経て、2023年9月にソラリス・マネージメント株式会社に参画。外務省、株式会社産業革新投資機構(JIC)、日本ペイントホールディングス株式会社に出向。 過去25年にわたり、政府・企業に対し、組織設立・再編、事業・投資戦略策定を支援。近時は、環境省による株式会社脱炭素化支援機構の設立、民間金融機関による企業再生ファンドおよびグリーンファンドの設立、民間製造業による中期経営計画・パーパ

          アステラス製薬報道に思う:中国事業の切り離し

          アステラス製薬の社員の方が逮捕されたという報道がありました。理由はどの関係者からも公表されず、様々な憶測が出ていますが、アステラスさんが中国事業から撤退しない限り、公になることはないでしょう。社員の方の身の安全を願うばかりです。 今後、日本企業は一様に、駐在員が突如として身柄を拘束されるリスクがより高まると考えて良いでしょう。少なくとも拘束リスクが低下することはこの先50年くらいの単位では無いだろうと私は見ています。レアアースなどの材料取引や情報技術の開示、外資政策の変動に

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          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか④:企業版セルフアサーションのすすめ

          本テーマの最終回です。第1部はPBR1倍割れとなる投資家心理、第2部・第3部はPBR1倍割れ企業の構造的問題点について書きました。今回は、①企業側でできること、②投資家側からの着目点を整理します。 IRの充実は「株価の下支え」効果には有用PBR1倍割れへの対応が注目されてから、IRの重要性も指摘されてきました。特に製造業では重要です。世界シェアトップ3に入る製品をもつ製造業は多数ありますが、英語版IR資料は日本語版に比べてスカスカで魅力が伝わりません。とはいえ、IR人材を1

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか④:企業版セルフアサーションのすすめ

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか③:PBR改善の処方箋

          PBR改善のための外科的処置と内科的処置前編で、PBR1倍割れから抜け出すためには「起業家精神を取り戻すこと」が必要ではないかと述べました。その点について少し掘り下げます。 外科的処置とその限界 コンサルや財務アドバイザーに「PBRを上げる方法」を尋ねると、だいたい資産整理の話をします。医療で喩えれば「外科的処置」です。手法でよく挙がるのは下図左側のようなものです。これらはPBRの分母である1株当たり純資産に直接的に効きます。また、これらの施策を公表すると、株式市場もポジ

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか③:PBR改善の処方箋

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか②:PBR=経営者の通信簿

          PBR1倍割れの「理論上の」デメリット前編の続きです。PBR1倍割れ企業の多さが株主に対する感度が無い企業の多さを意味するとしたら、投資家としては残念なことです。直接金融市場を活性化したい政府や取引所、証券会社も同じでしょう。 さりとて、PBRが1倍を下回るからと言って企業がつぶれ、人々の雇用が失われ、取引先が苦悩するわけではありません。株主も自身に損失が発生しなければ、PBR1倍未満であり続けても問題はありません。「PBR1倍割れで何が悪い」と言われたら、返す言葉が思い浮か

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか②:PBR=経営者の通信簿

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか①:ケインズの教え

          PBR1倍割れ企業への注目株価に関するお話です。私は投資会社で日本の上場企業をウォッチしています。最近注目しているのは「PBR1倍割れのままで放置される企業」です。 PBRとは株価指標の一つで、Price-to-Book Ratio(Price Book Value Ratioとも)の略です。純資産価値に対する株価の倍率を示します。詳細は日本証券業協会さんのご説明をご覧頂きたいですが、要約すると: ①PBR1倍:株価が純資産価値と同じであることを意味します。会社が解散すれ

          PBR1倍割れ企業はなぜ放置されるのか①:ケインズの教え

          メディア報道のアナリスト的読み方:データをもとに批判的に読み、建設的に考える

          ホタテ報道をクールに見る農水省が、中国政府による日本産海産物の禁輸でホタテ業者が苦しんでいるとして、「1人年5粒食べよう」というスローガンを掲げています。 日本の主なホタテ産地は北海道です。農水省の海面漁業生産統計調査によれば、天然・養殖ホタテ貝の80%以上が北海道産です。朝日新聞さん記事には中国・香港へのホタテ貝輸出は2022年度実績で約607億円とあり、これと同程度の禁輸入となれば、北海道は推定で480億円近い売上機会の喪失となります。 北海道庁および北海道経済連合会の

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