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アクティビストファンド:ポートフォリオ情報アップデート

アクティビストの投資と株主提案が活発になってきました。以前作成しましたアクティビストのポートフォリオ情報を更新しました。本記事の下に置いています。対象となるアクティビストは旧版と同様、8社です。ファンド名、対象企業名と証券コード、直近持株比率、直近報告日、持株傾向(減少=撤退モードのみ)をまとめました。大量保有報告書からも作成可能です。

直近のアクティビストの動向の特徴として、公開買付や株式交換による経営統合のプロセス実施中に介入する事例が散見されます。主張は概ねバリュエーションに焦点を当てています。買付価格が不当に安い、株式交換比率が妥当ではない、などです。

日本におけるアクティビズムは2000年代に萌芽が見られました。The Children's Investment Fundによる電源開発への投資は、当時、センセーショナルに報じられました。その時代を「アクティビズム1.0」とするならば、今は「アクティビズム2.0」と言える状況です。趣旨は「アクティビズムの性格が多様化しつつある」ということです。

いまなお、数の力で短期的な株主還元を求めるショートアクティビストもいますが、2~3年ほど所有し、「機会を窺ってモノをいう」ロングアクティビストもいます。ロングアクティビストは「所有し、議決権は行使したが、新規の提案は何もせずに」投資を終えることもあります。アクティビストは絶対リターンを出すことが最終目標で、5年以上の保有は稀です。投資先の株価が自助努力なり環境要因なりで上昇し、リターン目標を達成できればそれで足り、敢えてコストをかけて提案する必要もないわけです。

一方、スチュワードシップコードの導入以降、伝統的な機関投資家も提案行動、いわゆる「エンゲージメント」を標榜するようになりました。エンゲージメント専任組織を設けた資産運用会社もあります。実のところ、「エンゲージメント」の定義は明確ではなく、活動内容は千差万別です(PEやVCの活動もエンゲージメントの要素を含んでいます)。ただ、「企業価値向上につながる助言をしたい」という気持ち(aspiration)は同じでしょう。これらの会社は、IR活動の範疇で提案行動を行い、マスメディアを使いながら耳目を集める刺激的なアプローチはとりません。その意味においては「ソフトアクティビズム」とでも言えるかも知れません。

2000年~2011年のアクティビスト投資の、その後(2018年まで)を統計的に分析された東京大学の田中亘教授・後藤元教授の研究(2020年発表)によれば、アクティビストの介入が対象企業の業績ないし価値に、好影響を及ぼすことはあり得るが、悪影響を及ぼすとは言えなかったとしています。両先生の研究手法を、2011年以降のアクティビスト投資に当てはめると、また異なるメッセージが出そうです。

個人投資家の方々の反応も見過ごせません。近時では、アクティビスト・機関投資家の提案に、個人投資家が陰に陽に賛同を示し、(私は「経営陣の通信簿」と考えている)PBRが1倍を割る企業の「逃げTOB」が流れるケースも見られます。「アクティビズム2.0」は、「個人投資家も機関投資家も、総出で、企業(の経営陣)をポジティブに動かす」ものになるのでは―それがゆくゆく日本の産業と家計の成長につながる―と期待しています。

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