ピンチをピンチに! ~ハブタエンヌは眠らない~ その2
* * *
はじき飛ばされたシロネは、散歩中の別の大型犬の背中にぶつかり転がった。人間体から白い子猫の姿になっている。
「ギャン!」吠える大型犬。
その飼い主が驚いて叫ぶ。「な、何?」
頭を振りながらつぶやくシロネ。「いってぇ……」
大型犬は唸り声を上げ、シロネに噛みつこうとするが、飼い主が止めに入る。
「こら、ダメ!」
シロネが応戦し、飛びかかろうと構えた。
「シャーッ!」
その時、コブタエがシロネをすくい取り、猛ダッシュで逃げ出す。
「おじゃましました!」
大型犬と、その飼い主は、シロネを抱えて走り去るコブタエの姿をポカンとしながら見つめた。
* * *
シロネを抱えながら、歩を緩めるコブタエ。
「ふう。もう安心ですね」
「どこがだよ!」ふと自分の体を眺めるシロネ。「あ、あれ。てか、何で猫に戻ってるんだ。人間に変身したら、普通は丸一日戻らないのに」
慌てるシロネを見ながら、コブタエ自慢げに言う。
「私の術の影響かと」
「勝手に戻すな!」
「助けてあげたのに…」
むくれながら、コブタエが角を曲がると、5m程先にシロネを追っていた犬の姿があった。
「やべえ!」
焦るシロネに犬が向かってくる。
猛スピードで逃げるコブタエ。
だが、道が行き止まりになるのを見て、シロネが叫ぶ。
「おい、勝手に逃げるから下ろせ!」
「うーん。金平糖は大事に使いたいですし……」
「はあ?」
犬が目の前まで迫っている。
「下ろせって!」焦るシロネ。
コブタエは犬を避け、ふわりと飛びながら、被っていたベレー帽を取り、内側のスイッチを押した。
「ブタエ姉さま。強制回収モード願います」
それに反応して声がした。
「承知……ハウス!」
コブタエとシロネは、ベレー帽の中に吸い込まれていった。
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