ピンチをピンチに! ~ハブタエンヌは眠らない~ その7
* * *
猫魂国宮殿で、国民と謁見しているクロネ。
「他に困っていることはありませんか?」
「いえ…こんなに丁寧にお聞きいただいただけでも、ありがたい限りです」二つ折りになって礼を言う国民。
「大丈夫ですよ。聞くのは初めの一歩。問題が解決するまで、何度でもお越しください」
「ありがとうございます…」
にこやかに接するクロネに、何度も頭を下げる国民。
「お茶のご用意ができました」
傍らでお茶をサーブするシノブ。クロネと微笑みあう。
一方、シロネは猫魂の森で修行に励んでいた。
「てやっ!!」
瓦にこぶしを振り下ろすシロネ。激しい音と共に瓦が崩れ落ちた。
「20枚か…まあ、こんなもんだな」
汗を拭う手の先に宮殿が見えた。
“頑張ってるか、クロネ”
シロネは、ふとクロネに思いをはせ、微笑んだ。
さらにコブタエはと言うと、シロネ同様修行に励んでいた。と言っても、以前のようなポイント稼ぎのための行動ではなく、普通の生活の中で、普通に親切をする。そんな形になっていた。
望野宮神社前の道路を渡ろうとした老人が転びそうになったのを見て、飛び出すコブタエ。老人の体を支える。
「大丈夫ですか?」
「あ…ありがとうございます」
「お参りですか?」
「はい、そうです」
「それでは一緒に参りましょう」
微笑み、老人の手を引き、境内へと招きいれるコブタエ。
「ありがとうございます」
老人は、笑顔で頭を下げた。
「では、失礼いたします」
コブタエも頭を下げると、境内の一角にあるベンチに腰を下ろした。
「頑張らねば」
コブタエは受験勉強用の単語カードを開いた。
* * *
スパが慌てた様子で執務室に駆けこんだ。
「シロネさま!」
ストレッチで猫のポーズをしていたシロネがドアの方を振り向く。
「何だ」
「クロネさまの部屋にこれが!」
スパがシロネに便箋を差し出した。そこには、「クロネは預かった。ダイヤモンドツナをよこさなければ命はない」の文字が。
「何だと!」
「いかがいたしましょう」
シロネは便せんをギュッと握りしめて、スパに聞く。
「シノブはどこにいる」
「それが、姿が見えないのです。まさか彼女が?」
スパの問いかけには答えず、正装のマントを着るシロネ。
「出かけてくる。このことは誰にも言うな」
「は、はい」
シロネはマントをひるがえし、部屋を出て行った。
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