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メガシティ・カラチ

カラチの空港に到着したのは夜も更けたころだった。成田からバンコクを経由し15時間ほどのフライトで到着したカラチの空気は、日本のそれとは全く異なっているように感じた。それは空気感といった抽象的な話ではなく「匂い」という物理的な意味で。

カラチはパキスタン最大の都市でもあり、イスラマバードに首都が移される前はこのカラチがパキスタンの首都だった。人口は2200万人を超えると言われ、世界でも有数の巨大都市と言われている。僕が今回出会うバローチ人の多くがカラチに暮らしているという。そんな予備知識はあったものの、僕が到着したのは夜遅く。都市の雰囲気を楽しむこともなくそのままホテルへと向かった。しかしこんな夜更けだというのにもの凄い数の車とオートバイが道路を占拠している。車線変更も割り込みもなんでもあり。追い越すのではなくクラクションを鳴らして前の車を押しのける。まあなんとも賑やかな様相だ。

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ホテルにチェックインし、僕は部屋の窓からカラチの街を眺めてみることにした。さっき通ってきた道には相変わらず車とオートバイがひしめき合っている。クラクションの音はそこらじゅうで鳴り響き、とても賑やかだ。この様子ではきっと朝まで変わらないのだろう。僕はお湯の出ないシャワーを浴びてベッドに潜り込んだ。

翌朝、コーランが響き渡る音で目がさめた。街はまだ暗く、あれほど多かった車の数が随分と減っているようだ。今日はここカラチから北へ向かうことになっている。ナショナルハイウェイと言われる道を数百キロ北上し、次の街へと移動するのだ。出発の頃になると道路はまた車とオートバイで埋め尽くされていた。この人々はどこへと向かうのだろうか。オートバイには三人乗りは当たり前。トラックのような車には10人近くの人が落ちそうになりながら乗っている。相変わらず「匂い」は感じるものの、少しだけ慣れてきている自分もいて笑えてきた。

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カラチの街は世界有数のメガシティと言われるけれど、決して衛生状態は良くない。道路は舗装されているのだが乾燥しているので砂埃が常に舞っており、視界はとても悪い。この日見た朝日は、北海道が黄砂に覆われた日に見えるような真っ赤な太陽だったから、大気は相当霞んでいるのだろう。そういえばオートバイに乗っている人の多くが口元を覆っている。

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ナショナルハイウェイをひた走る。何車線なのかもわからないが車は縦横無尽に車線変更を繰り返し、クラクションは常時鳴りっぱなし。前方にトラックがいれば対向車線がきているのもお構いなしで追い越しを続けていく。まあちょっとしたジェットコースターに乗っている気分だ。眠気なんて来るはずもないから、僕はずっと写真を撮り続けることにした。

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道路脇にはプラスチックゴミが山積みで捨てられている。海洋に漂うプラスチックゴミが世界的に問題になっているのは知っていたけれど、それがどこから来るのかが疑問だった。帰国後調べてみると、インドも含めたこうした国々の道に捨てられたゴミが水路を流れて川にたどり着き、やがて海に流れ出ていくのだという。そういえば、ハイウェイの脇を流れている川の護岸には大量のゴミが積まれていた。僕はエコロジストでもネチュラリストでもないけれど、こうした現場を目の当たりにすると複雑な思いがこみ上げてくる。生活習慣や文化といってしまえばそれまでのような気もするが、僕らが知っている世界の常識とは全く異なったベクトルの世界がここにはあるという事実を受け入れざるを得なかった。

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数時間走り続け、車は昔インダス川が流れていたという場所に到着した。インダス川はその昔に大きく流れを変えているらしい。そんなことを歴史の授業で習った記憶はないけれど、川の流れが変わったことで人の暮らしも移動し繁栄の場所が変わっていったそうだ。

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(つづく)



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